革新する老舗!?

 雑誌ATESの今月の特集は「革新する日本の老舗」。「革新」と「老舗」という一見相反する単語が"ひとつのコピー"の中に含まれていることに興味をもち、思わず、書店で手にとってしまった。うまいね、僕好みですね。

 同雑誌によると、「いつの時代においても、成功している老舗とは、日々、新しい構想や発想と向き合っている」のだという。

 事例としてあげられていたのは「熊澤酒造」「とらや」など数店。個人的にもっとも印象的だったのは、500年続く羊羹の老舗「虎屋」のお話だった。

 虎屋と言えば、いち早くオンラインショッピングを導入したり、最近だと、東京ミッドタウントラヤカフェをオープンしたりしているのは知っていた。実際、自分もよく利用することがあった。

虎屋
http://www.toraya-group.co.jp/main.html

虎屋オンラインショップ
http://www.toraya-group.co.jp/shop/

トラヤカフェ
http://www.toraya-cafe.co.jp/

 でも、虎屋は、実は、創業から常に「新しいこと」にトライし続けてきたってことご存じでしたか? 

 たとえば、下記のような感じ。

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1520年 京都にて創業
1869年 東京進出
1896年 新聞広告でアピール
1918年 バナナやレモン入りといった和菓子にチャレンジ
1924年 自動車での製品配達導入(当時は徒歩が主流) 
1955年 羽田空港に出店(旅行者をターゲットに)
1962年 デパートに初出店
1979年 パリ国際菓子見本市
1980年 パリに出店
2000年 とらやオンラインショップ
2003年 トラヤカフェオープン
2003年 和菓子の研究所:虎屋総合研究所をオープン
2007年 東京ミッドタウンに出店

(ATES JUNE 2008 p24-25より一部引用)

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「羽田空港で羊羹が買えること」とか、今ではアタリマエになっていたけど、これも「革新」の成果だったのですね。知らなかった。

 虎屋広報部の藤田さんは言います。

「よく、500年前から変わらない味はどれですか? と聞かれます。けれど、我々は、菓子屋として、常に時代時代の最良の材料をもとに、最高のおいしさを求めて日々精進しているのです。味を守るとは、変わらない、ということではないのです」
(ATES JUNE 2008 p23より引用)

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 お店が「新しい構想や発想と向き合っている」といっても、別に「屋号」が新しいものを生んでくれるわけではない。そうした組織の中に、常に、新しい構想や発想と向き合っている「人」がいる、ということである。

 古い考え方やものの見方の、ある部分を疑い、壊し、周囲の反対を受けつつも、新しい構想を実現していく人が、いるということである。
 学びつつ、壊し。壊しつつ、生み出す。そんな人がいる組織こそが、「革新的な老舗」になれるのかもしれない。

 チャールズ・ダーウィンの有名な言葉にこんなものがある。

 It is not the strongest of the species that survives, nor the most intelligent that survives. It is the one that is the most adaptable to change.

(最も強い種が生き残るのではない。まして、最も知的な種でもない。最も"変化に適応した種"だけが生き残ることができるのだ)

 世の中は、常に生成流転する。その流れにしたがって、組織も適応していかなければならない。でも、組織が「適応」といっても、そこに人格があるわけではない。結局、「適応」するのは「人」であり、「変わる」のも「人」である。