過酷なディレンママネージャ:酒井穣著「はじめての課長の教科書」を読んだ!
話題の本、酒井穣著「はじめての課長の教科書」を読んだ。
本書は、「日本の組織」に特有な「課長」というポジションで働く人が、どのように振る舞うべきかを、懇切丁寧に教えてくれる「教科書」である。
著者が言うように、世界的に見ても、「ミドル」「課長」といったポジションは、非常に希有な存在である。そして、だからこそ、それを対象にした学術研究も多くない。さらに言うならば、彼らの学習モデルもほぼない。
ミドルの学習
http://www.nakahara-lab.net/blog/2008/04/post_1216.html
本書は、ここを逆手にとって、「課長が何をなすことを期待されているか」を論じている。非常にオリジナリティの高い論点の設定だと思った。
教科書といっても「説教臭さ」はない。どうも、このタイトルからは「長年、課長を経験した人のわたしの課長論」を思い浮かべてしまうけど、著者は僕と3歳上の方である。ビジネススクールをでて、現在は、オランダのベンチャー企業で役員をなさっているそうだ。
酒井さんのブログ
http://nedwlt.exblog.jp/
本書では、課長に「課長が置かれている社会的地勢はどういうものかか」「社会的に期待されている役割は何か」を冷静に分析し、それを平易な言葉で解説している。
僕の言葉でいうならば、課長とは、もっとも過酷な「ディレンママネージャー」である。
すべての組織の矛盾は、彼のもとに集まる。それを時にはやり過ごし、時には解消しながら、様々な人々を巻き込み、つなぎ、切り離し、業務を達成する、という「高度な政治」を行使しなければならない。
酒井氏は言う。
「裏工作は卑怯だ」「社内調整は時間の無駄だ」などと社内政治の存在そのものを攻撃するようなナイーブな考え方は退けてください。人間本来の営みとはきっても切れない政治への理解を深めることで、職務をより効率的に遂行する術を身につけましょう。
(p127より引用)
公式、非公式に多くの社内横断的なプロジェクトに献身的につながっていくことが、キーマンになるための一番確実な方法です
(p134より引用)
本書のタイトルは「課長の教科書」であるが、僕はどうしても「課長の政治学」という側面から読んでしまった。
組織を実質円滑に動かしているミドルが、どのような<政治>を行使しているか。あるいは、かつて自分が行った<政治>を、どのように語るか。大変興味深い研究テーマだな、と思った。