研究計画書の4つのポイント:カスッてない
仕事柄、たくさんの研究計画書を読みます。中には、僕の専攻分野ではない分野の研究計画書もあります。
異なった分野の研究計画書ですと、そこで提案されている「研究内容」について、すべて完璧に「わかる」わけではありません。
研究のよしあしは「細部」に宿ることがあります。その領域にどっぷりつかった人でなければ、わからないことも多々あります。そうした「細部」は、僕にはわかりません。
しかし、「わかること」がないわけではありません。「研究計画書で提案されている微細な内容」や「研究内容の細部の斬新さ」については、わからないこともあるのですが、
「その研究計画書が、ちゃんとしているのか、していないのか」
については、たとえ分野が違ってもわかるものなのです。
その際には、4つのポイントをチェックしているような気がします。
1.研究で取り組みたいポイントが焦点化されているか?
2.文章の論理展開は正しいか?
3.研究方法はちゃんと記述されているか?
3.参考文献などをきちんと引用しているか?
これら4点をざっとチェックしていけば、だいたい「研究計画書の善し悪し」はわかってしまいます。非常に重要なのは「型」ですね。この段階で、「型」が完璧にマスターされていることはないとは思うのですが、少なくとも「意識」されている必要があるでしょう。
そして、この中で最も差がでるのが1の「焦点化」です。
例えば、今、仮に
「本研究では、学力向上をめざす教育手法の開発を行いたい」
という研究計画があったとします。このままでは全く「焦点化」されていない研究です。でも、実際にこのくらい「曖昧な研究計画」が提出されることは少なくありません。わたしの言葉で言えば、「カスッてない:フォーカスがあたっていない」。
この場合ですと、例えば
●学力とは何か?
・基礎的な問題の解決の早さなのか?
・問題解決の早さなのか?
・批判的思考?
●誰が対象者なのか?
・小学校?
・中学校?
・高校?
・大学版PISAをねらうのなら、大学生?
●教育手法
・どんな手法?
・ドリル?
・ITによる支援?
・教師がやるのか?
●いつ、使うの?
・授業中?
・放課後?
上記のことを明確にした上で、今までの研究・実践になかった、この研究の「ウリ=オリジナリティ」は「ひとつ」、一語でいうと、ズバリ「何」か?
のようなことを考えていく必要があるでしょう。
これらの問いに答え、ある程度、研究のスコープ(研究がカバーする範囲)をしぼることが必要になります。それが「研究の焦点化」に他なりません。
あれもこれもとよくばる必要はないのです。ひとつの研究で、解決する問題はひとつ(One paper, One conclusion!)です。
イメージ的にいうと、「焦点化された研究計画」は、「一番最初に思い描いた研究計画」の5分の1から10分の1になるのではないでしょうか。人によっては、100分の1かもしれません。
研究とは、そのくらい「焦点を絞らないと」、厳密に論理展開できなくなってしまいます。
大学院のゼミでは、このことを手をかえ、品をかえ、「壊れたテープレコーダー」のように、1年中言い続けています。
今週で、今年度の大学院ゼミは終了。
また来年。
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追伸.
先日、ある方がこんなことを言っていました。
「大学教員をやっていると、まわりの学生は年をとらず若いままなのに、自分だけ年をとっていくように感じる」
なるほどねぇ・・・。