コミュニティで人を育てる!?

 先日、ダイヤモンド社の方々、僕、坂本君@東京大学大学院M1とで、ある外資系企業(B社)にヒアリングに出かけました。

 B社の「人材育成」の特徴は下記のとおり。

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1.社内には営業、マーケティング、開発など業種ごとにプロフェッショナル制度が存在している。基本的には社員はみな、この制度に基づいて「自分」でキャリアを考え、構築しなければならない。

2.社内には30~40もの「コミュニティ」が存在している。女性技術者のコミュニティ、営業担当者のコミュニティ、技術者コミュニティなどのように、職種ごとに分かれている場合がある。また、プロフェッショナル資格の同じ等級ごとにコミュニティが設けられている場合もある。

3.コミュニティは、もともと自然発生的に形成された。会社は、これを「人材育成」の有効な手段として認め、金銭的サポート、外部との交渉のサポートなどをおこなっている。

4.コミュニティへの参加は、いちおう、会社として新入社員などにすすめることはあるが、強制力は全くない。

5.コミュニティでは、1)各種イベントの実施、2)研究会・講演会の実施、3)最新の技術動向(たとえばWeb2.0など)に関する勉強会、3)ニュースレターの発行などの活動を自主的に行っている。活動の企画は、コミュニティの有志によってボランティアで担われている。

6.人事・教育部は、コミュニティ内部でメンターを募集し、希望するメンティにマッチングを行ったり、メンタリングやコーチングの手法をメンター希望者に伝える仕事をしている。

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 要するに、この会社では「コミュニティ」と「メンタリング」によって、現場で人を育てようとしているということですね。

 でも「全員を同じように育てよう」というわけではない。
 あくまで、自分のキャリアを考えた上で、それに役に立つと思えば、「おこのみ」でコミュニティ活動に参加すればいいし、メンタリングを受ければよい。それはちょっと、と思うなら参加しなくてもよい、という感じです。

 会社は、1)基準や制度、2)学習の機会と場、3)能力に応じた処遇は提供します、あとは、自分で考えて、自分で決めてね、と。

 いわゆる研修やe-learningは、補助的な手段として位置づけられています。たとえば、メンタリングの手法などは、メンターを行うのなら必須の知識ということで、メンター希望者向けに研修やe-learningで提供されています。

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 これらの施策がどの程度うまくいっているのかは、早急には判断できません。それはヒアリングという調査手法の限界でもあります。

 ですが、ここまで「コミュニティベースの人材育成」が前面にでている企業は、今までの定性調査では経験したことがなかったので、なかなか衝撃的でした。従業員規模が「万」の単位の企業が、こんなかたちで、育成を試みるとは・・・。

 会社の中には重層的にコミュニティが存在しており、それらのコミュニティの境界を渡りながら、人は仕事をしている。そして、仕事を通した経験学習によって、スキルやキャリアを形成していく、というイメージでしょうか。

 それがもしうまくいっているのだとしたら、トマス=マローンのThe Future of Workと、エティエンヌ=ウェンガーを足して二で割ったような世界のようにも見えます。 

 そして、こうしたかたちで仕事がなされ、かつ人が育つ、という場合に、もはや企業人材育成担当者のやるべき事は、従来のそれではありません。
 もちろん、育成担当者の仕事も再編成を迎えることになります。どちらかというと、コミュニティ活動のコンシェルジュ的な役割を担うことになるのでしょうか。

 うーん、オモシロイですね。

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 ともかく、春先から続けていた定性調査は、これで終了です。本当にいろいろな会社を訪問しました。やはり現場の人から話を聞くのは、大変興味深かったです。一方、定量調査の方は、すでに分析フェイズにはいっており、ここ数ヶ月の間で、2週間に一度程度、研究会を開いています。

 最後になりますが、今回の定性調査、定量調査に関しましては、ダイヤモンド社の永田さん、石田さん、前澤さん、平林さんに大変お世話になりました。本当にありがとうございました。

 あとは、僕らが結果を出す番ですね。
 はい、重々、承知しております。