スクールリーダーシップ:学校におけるリーダーシップ
中原研究室には、「スクールリーダーシップ」の研究を志している大学院生さんがいる。先日、個別論文指導の機会があり、国内における「スクールリーダーシップ開発」の現状について、レポートしてもらった。
なるほど、昨今、この領域はブームらしい。ここ数年で多くの大学院や地方公共団体が、校長、教頭、主任クラス向けの「スクールリーダーシップ開発プログラム」を開発し、実施している。
しかし、そのプログラムの中身は千差万別。いわゆる、従来の「管理職研修」を名前替えしただけのようなプログラムも見受けられる一方で、非常に的をしぼったものも含まれる。
また「スクールリーダーシップ=学校研究の実施をマネージする人」という風に位置づけるプログラムが一方で、「スクールリーダーシップ=地域における学校の経営方針策定」と位置づけているものもある。
前者が「学校変革の契機」を、あくまで「教育の枠内」「教室の枠内」で捉えようとするのに対して、後者はより広い文脈にそれを求めようとしている。
このような千差万別の状況になっているのは、結局、「スクールリーダーシップとは何か?」という問いに対する答えが、たくさんあるからなのだろう。この原初的問いに対する思索なしで、プログラムを開発することは危険だと思った。
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先日、リーダーシップ開発を研究する神戸大学経営学研究科(金井研究室)の伊達さんからおくってもらった論文によると(伊達さんありがとう)、リーダーシップ開発を考える際には、「リーダーの開発手法」と「リーダーシップの開発手法」を分けることが重要なのだという。
要するに、「リーダーの開発手法」とは、リーダーになるべき個人のHuman Capitalを向上させることをねらうのに対して、リーダーシップの開発とは、リーダーシップが発揮されるようなSocial Capital(ある集団における社会的関係)を開発することが重要になる。
このあたりの議論が、この「スクールリーダーシップ」の議論にも入ってくれば、またオモシロクなると思った。
次回の論文指導は、いよいよ海外のスクールリーダーシップのレビューであるが、これが楽しみである。
はじまったばかりの研究領域にように思う。まだまだ、やれることも、やらなければならないこともたくさんある。