コンサルティング部門と研修部門

 学部時代に同じクラスで学んだ同期が、研究室に訪れた。ほぼ12年ぶりくらいの再会。卒業後、人事・組織系のコンサルティングファームで働き、留学をし、今は一児の母でもあるという。

 たまたま仕事で調べ物をしていたときに、僕らの書いた「企業内人材育成入門」を手にした。その内容が自分の仕事とマッチするところが多かったので、久しぶりに連絡をとってみよう、ということになったらしい。以下、仮にNさんとよぶ。

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 Nさんとは昔話を含めていろんな話をした。その中でも、「OFF-JTとOJTをうまく連動できないのは、教育を提供する商売をしている民間教育会社の側の理由もある」という話が印象的だった。

 彼女は、これまでのキャリアで、人事・組織系のコンサルティングファームにも、いわゆる研修会社にも属したことがある。その双方に属した経験から考えて、そう言えるのだという。

 曰く、

 戦略系や人事・組織系のコンサルティングファームは、制度設計には注力するが、いわゆる「手離れの悪い」インプリメンテーションはこれまで避ける傾向があった。
 昨今は、インプリメンテーションも手がけようとしているものの、どうやってよいのかはまるで手探り。社内に教育に専門性のある人はいない。

 一方、研修を主力とする会社は、OFF-JTとOJTを連動させる仕組みや制度づくりまで、なかなか手が回らない。むしろ、パッケージ化された研修をこなす、というデイリーオペレーションに忙殺されており、それを離れて業務を拡張することには躊躇しやすい。

 つまりは、ひとつの会社は、コンサルティングと研修という2つの事業のうち、どちらかに注力しているため、「OFF-JTとOJTの連動」といった案件を処理することは、構造的に難しい。

 もちろん、企業の中には、コンサルティング部門と教育部門を両方持っているところがある。しかし、組織の壁があり、両部門間が共同でひとつの案件をこなすことはそれほど多くない。同じ会社やグループ内でありながら、コンサルティング部門と教育部門の方針がバラバラであることも少なくないのだという。

 結局のところ、「OFF-JTとOJTを連動させた学習環境の整備」をサービスとして提供するためには、民間教育企業の事業のあり方や組織のあり方が、これに対応できるかたちになる必要がある。また同時にそこでつとめる人たちの専門性が、これに対応できるものにならなくてはならない、という指摘だった。

 なるほどなぁ・・・。

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 Nさんとは限られた時間ではあったけれど、昔話もした。

 実は昔話をするにあたっては、密かに僕はドキドキしていた。「ドキドキ」といっても、Nさんに「淡い恋心」をもっていた、とかそういう話じゃない。

 大学一年生、二年生の頃の僕は、ほとんど「ニート同然」。その頃の僕を知っている人に、久しぶりに逢うからである。

「当時、僕は、人からどう思われていたのだろうか」

 ・・・その頃のことを、聞いてみたくて仕方がなかった。

 振り返るに、大学一年生、二年生の頃、僕は「無駄な時間」を過ごしていた。大学には必要最低限度しか行かず、かといって、サークルに精をだすわけでもない、合コンに花を咲かすわけでもない。家でゴロゴロ、町をプラプラ。勉強をするのでもなく、遊ぶわけでもない。本当に「無駄」。この一言がもっとも似合う時間の過ごし方をした。

 帰り際、Nさんにそれとなく、当時の僕はどんな学生にうつっていたのか聞いてみた。

「そうだったかな? でも、そういう時間は誰でも必要なんじゃない? みんなそうだったと思うけど」

 うーん、あっけない。

 既述したとおり「大学一年生・二年生の頃の自分」に対する僕の自己イメージは、限りなく低い。が、他人と比較して、そうでもなかったってことかな? 
 そもそもあの頃は、みんな新しい生活への順応に苦労しており、中には無駄な時間の過ごし方をする人も多かったのだろうか。

 まぁ、いずれにしても、そうね、みんなそうだったのね。僕だけじゃなかったのね、そうなのね。ダハハ、オレだけじゃないなら、いいや。みんなで渡れば怖くねー。

 なんつー、オチだ。
 そして人生は続く。