大学教員とヘッドハンティング

「ヘッドハンティングの会社からある日突然電話がかかってきた」

 ある大学の先生が、先日、こんなことを言っていた。

 僕と同世代へのヘッドハンティングが、にわかに活況を浴びているのは知っていた。知り合いには、「2倍の給与をだしてもよい」というオファーをもらった輩もいて、何とも羨ましい、とも思っていた。

 しかし、それにしても、よもや、大学教員がハンティングの対象になる時代とは! 自分がそんな時代に生きているとは、ついぞ、知らなかった。

 もちろん、そういう可能性が全くないか、というと、そうでないことはよくわかっている。アメリカでは、認知科学や教育学関係の研究者の何人かが、副業(あるいは本務)としてコンサルタントをやっている。

 たとえば、「誰のためのデザインか」のドナルド=ノーマンは、カリフォルニア大学サンディエゴ校を辞めたあと、教育システム、学習、ヒューマンエラーのコンサルタントとして、第二の人生を歩み始めた。

 コミュニティ・オブ・プラクティス(実践共同体)理論のエティエンヌ=ウェンガーは、ビジネス、組織開発のコンサルタントである。

 会社経営に参画している人ということになると、もっと多い。ロイ・ピー、ロジャー・シャンクなど、多くの研究者が実務の世界でも活躍している。

 研究者のフロンティアを歩んでいる人たちは、今や、一般的な「大学教員」のイメージとはかけ離れた活動にも手を伸ばしている。それがいいことかどうかは、個人の判断の分かれるところではあるけれど、そういう事態になっていることは間違いない。

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 ちなみに、僕は、通常の会社からヘッドハンティングされたことがない。

 モノは試し。ネタになるので、ぜひ、一度体験したいと思っているのだが、待てど暮らせど電話はかかってこない。おそらく、相手も、僕の「能力の凡庸さ」を、見抜いているのだろう。

 「アイツはシャバでは使い物にならない」

 と思われているのかも・・・。ひえー。

 もちろん、大学を辞める気は、サラサラないけれど。