ワークプレイスラーニング (Workplace Learning)とは:定義編
ワークプレイスラーニングとは、どういう意味ですか?
最近、折に触れて、様々な質問をいただきます。
ワークプレイスラーニングに関しては、様々な定義があります。たとえばね、下記のようなものですね。
1)仕事場での、仕事と学習の同期化(蒋 2006)
2)仕事での活動と文脈において生じる人間の変化と成長(Fenwick 2001)
3)個人や組織のパフォーマンスを改善する目的で実施される学習その他の介入の統合的な方法(Rothwell & Sredl 2000)
4)次世代のeラーニング
うーん・・・本当に「人生いろいろ、ワークプレイスラーニングいろいろ」だね(笑)。いろいろあって、リンダ、困っちゃう。
まぁ、4)の「トンデモな定義」は「うっちゃておく」として(なんだ、このワケのわからない定義は!)、ワークプレイスラーニングを理解するひとつのポイントは、「informal learning(非公式学習)への着目」だと思います。
今、仮に、研修やeラーニングなどの人事・教育部からこれまで提供されてきた施策を「Formal learning(公式学習)」とおきましょう。そして、それ以外の学習を「Informal learning(非公式学習)」とおきます。
まず、ワークプレイスラーニングは、人が学ぶというとき、多くの人々は、「formal learning」だけから学んでいるわけではない、と考えます。
むしろ、
「事件は会議室で起きてるんじゃねー、現場で起きてるんだ」
の「踊る大捜査線」の名台詞風にいいますと、
「学習は研修室だけで起きてるんじゃねー、現場でも起きてるんだ」
なわけです。
これに関しては、既に先行研究もなされていますね。McCall(2000)らによると、「人間の能力開発の70%は、Informal learningによって説明がつく」そうです。要するに、Formal learningで30%、残りの大部分は、人は現場で学んでいる。
ワークプレイスラーニングは、この70%の「現場の学び」にも注目する概念なのです。そして、この「現場の学び」も支援しようとする。これまで「現場の学び」は、現場の人間まかせにされ、多くの場合は、「放置プレイ」を招いていたのですね。ここも何とかしようと。
ちなみに、ワークプレイスラーニングの定義のうち1)の定義は、ほぼInformal learningだけをさしています。2)の定義は、微妙。3)の定義になると、Informal learning と formal learningの二つが内包される概念になっていますね。
で、いったいどの定義が正しいか、ということなのですが、僕個人としては、やはり3)の定義がいいと思っています。
Formal learningのもつインパクトを過小評価するのでもなく、Informal learningのパワーを無視するのでもなく、どちらも活かしていこうというスタンスにたつ方が、教育学的にコレクトな態度かなとおもいます。
式で書くとすれば、
ワークプレイスラーニング=研修の学び×現場の学び
と考えたいですね。「×:かける」によって、いわゆる「シナジー」をめざすというやつです。「現場の学び」が「マイナス」とか、「ゼロ:0」だと、シャレになってないよね。
ワークプレイスラーニングのインパクトは、「学習」を、いわゆる「研修」とか「eラーニング」によって行われる「知識伝達」として把握しない、ということです。
むしろ、「学習」をより広いものとして捉える。
学習とは、現場において人々が、いろいろな機会や場面を通じて、「知識を共有」したり、「知識を創造」したり、「知識を概念化」したり、「知識を統合」したりすることをさす。そして、そういう「広い学習」を「支援」することを試みるわけですね。
そうなりますと、
1.学習は教室の外でも起こっている
2.学習は知識をアタマに蓄えることだけではない
2.教えることだけが学習のきっかけじゃない
という考え方になります。
じゃあ、「現場の学び」とは具体的にどのようなものなのか・・・これに関しては、また機会を改めてご説明します。