「教育研修」を支える「基礎研究」

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 先日、ある人と話していたとき、米国Center for Creative Leadership(CCL : クリエイティブリーダーシップ・センター)の話題になった。

Center for Creative Ledership
http://www.ccl.org/leadership/index.aspx

 CCLは言うまでもなく「リーダーシップ教育」の総本山。全世界の人々に対して、独自性ある教育研修プログラムを提供している。それは、非営利団体(NPO : Non Profit Organization)でありながら、その名声は、b-schoolをしのぐ勢いであるとも聞く。

 でも、僕らが思わず唸っていたのは、そのことではない。それはCCLが最大のリーダーシッププログラム提供機関であるのと同時に、その事業を裏打ちする学術基礎研究を多数生み出していることについてである。

 要するに、そこは、「人を育てる機関」であるのと同時に、「人を育てる科学」を生み出す機関でもある。

 CCLの学術研究はつとに知られているので、あまりここでは述べない。マッコールらによる、人間の成長プロセスをおった、いわゆる「一皮むける」系の研究はよく知られている(最近は熟達化研究や教師研究にも一部で応用されている)。

 また、CCLではマニアックなリサーチハンドブックをいくつも出している。特に「The Center for Creative Leadership Handbook of Leadership Development」と「The Handbook of Leadership Development Evaluation」は、その厚さからいっても、また、その内容の濃さからいっても、スゴイなと思った。

 これらのハンドブックは体系的であり、網羅的である。「リーダーのことなら何でもござれ」と言わんばかりだ。

 また、たとえば「学校」とかに関してリーダーシップを考えるならば、下記のようなハンドブックと重ね読みすることで、また新たな発見があるかもしれない。

 とにもかくにも、地道で網羅的かつ体系的な基礎研究があった上で、エビデンスに支えられた教育」、いわゆる「人を育てる科学に裏打ちされた教育」が可能になる。それが全世界の人々を引きつけてやまない魅力あるプログラムをつくる秘訣かもしれない。

 ひるがえって、我が国はどうだろうか。
 教育研修事業の裏には、基礎研究の部門や機能が存在しているだろうか。長期的な視野にたって、研究投資を行う意思決定がなされているだろうか。インハウスでリサーチャーを抱えることが難しいのであれば、せめて大学などの外部機関と連携してリゴラスな調査研究を進めているだろうか。
 もちろん、あるところにはある。きちんとやっているところはやっている。しかし、ないところにはない。また、やっていないところは、全くやっていない。そして後者の方が圧倒的マジョリティを構成する。 

 通常の事業会社の人材育成部門やラインの人々が、そのような基礎研究を行うことは難しい。それは無理だし、そうするべきでもない。
 だけれども、せめて教育研修を主事業とする企業においては、それを支えるアカデミックな調査研究が必要だと思う。そうでなければ、みずからの事業に、どんな「エビデンス」をもちうるか、そして何より、どんな「コンフィデンス」を感じうるか。

 「教育研修」を裏打ちする「基礎研究」、そしてそれを支える機運が、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、あってよい。

 個人的にはそう思う。