学校の「ウチ」と「ソト」

 以前読んだ論文にこんなものがあった。かなり前のことになるので、内容は「うろおぼえ」だけど、確か下記のようなことが書かれていたように思う。

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1.教師の社会関係資本として「学校内部の社会関係資本」と「学校外部との社会関係資本」を定義し、それに基づいて都市の88校において社会調査を実施した(アメリカの話です)。

2.「学校内部の社会関係資本」と「学校外部との社会関係資本」と「生徒の学業成績(数学テスト、読解力テスト)」との関係を調べると、重回帰分析の結果、そこにそれぞれ因果関係が認められた。

3.この因果関係のあいだには、「教師の授業クオリティ」が媒介していることが示唆された(一部は検証された)。

 要するに

・学校内部で、教師同士の人のつながりが密接であればあるほど、教師の授業クオリティがよくなる傾向があり、結果として子どもの成績はよくなりまっせー

・学校外部と学校内部との接続が密接であるほど、教師の授業クオリティはよくなり、子どもの成績はいいんだよ

 ということだろうか。

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 この論文、細かいことを言うと、「学校外部との社会関係資本の指標」、「因果関係の説明」などに問題がないわけではない。また、組織内部の社会関係資本が、その組織のパフォーマンスと相関があることは自明でもある。

 しかし、それでも「教師の社会関係資本」と「学校の組織パフォーマンス=生徒の学業成績」の関係を調べるというアイデアは、非常にオモシロイ発想だと思った。

 特に卓越しているのは、「学校外部と学校との接続性」を調査射程に入れたところだろうか。これは大変興味深い。

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 そういえば、先日、ある大学院生さんと話していて、彼が漏らした一言が、とても印象深かった。

 近年の文献では、学校が外部世界と接続して改革をなしとげる、というモデルは、もう誰でも指摘していることですよね。(教育学者の)Aさんも、Bさんも、皆、同じように「学校外との接続が重要だ」と言っていますよ。でも、誰もが指摘していないのは、「どう接続して、どういう結果をだすか」です。問題はそこなのです。

 こちらの方も、卓越した指摘である。

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 学校が、外部世界にどのようなリクエストをだし、どのようなアライアンスを取り結んでいけるのか。

 社会は、学校に矢継ぎ早に変革を求めるだけでなく、どのような貢献ができるのか?

 今、問題になっているのは、そういうことなんだろう、と思う。