ヌエヌエしてる学習 : 「戦略サファリ」ヘンリー=ミンツバーグ
故あって、と言おうか、大学院での指導の関係で、最近「戦略」についてもう一度勉強し直している。
なるほど、おおよその学問相関地図は頭の中に描けるようになってきたが、その描画に一役買った本が、ヘンリー=ミンツバーグの「戦略サファリ」である。
この本は、「戦略」という捕らえどころのない「ヌエ」のような研究領域を、10のスクール(アプローチ)から編み直し、解説した本である。
この本によれば、戦略には10のアプローチがある。
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1.デザインスクール
コンセプト構想プロセスとしての戦略形成
2.プランニングスクール
形式的策定プロセスとしての戦略形成
3.ポジショニングスクール
分析プロセスとしての戦略形成
4.アントレプレナースクール
ビジョン創造プロセスとしての戦略形成
5.コグニティブスクール
認知プロセスとしての戦略形成
6.ラーニングスクール
創発的学習プロセスとしての戦略形成
7.パワースクール
交渉プロセスとしての戦略形成
8.カルチャースクール
集合的プロセスとしての戦略形成
9.エンバイロメントスクール
環境への反応プロセスとしての戦略形成
10.コンフィギュレーションスクール
変革プロセスとしての戦略形成
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要するに「戦略」を語るときには、様々なアプローチがあり、決して「唯一絶対の立ち位置」というものは存在しない。「戦略」には「○○としての戦略」という視点が、少なくとも10以上存在するということである。
ということは、自分が依拠する立ち位置を相対的に把握することが重要になる。そして、この「相対性」を把握するためには、自分がいったんはメタの立場にたつことだ。
この様子を「戦略サファリ」の冒頭では、こんな寓話で解説している。この寓話というのが非常に印象的だ。少し長くなるけれど、ここで引用する。
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■盲目の男たちと象
(ジョン・ゴドフリー・サックス)
インドスタンに6人の男たちがいた。
学ぼうという気持ちが強く、
象を見に出かけた
全員目が見えなかったが、
じっくり観察すれば
心が満たされるだろうと、みんな考えていた
最初の男は象に近づき
うっかり転んだ表紙に
大きくてがっしりとした脇腹にぶつかり
こう叫んだ
「おやおや、象とは壁のようであるぞ」
2番目の男は牙に触れて大声をあげた
「おお!、これはなんと丸くてなめらかで
しかも尖っている
わかったぞ、この象というものは
槍のようだ!」
3番目の男は象に近づき
手につかんだのが
くねくね動く鼻だったので
大胆にこう言った
「なるほど象とは
まるでヘビのようだ!」
4番目の男は手を伸ばして
ひざのあたりを熱心に触った。
「この不思議な獣は
まったくデコボコがない
きっと象とは木のようなものであろう」
5番目の男がふれたのは耳だった。
そして、こう言った
「まったく目が見えなくても
何に一番似ているかよくわかるぞ
間違いあるまい
この象という生き物は
うちわのようであるぞ」
6番目の男は象に手を伸ばすと
すぐにゆらゆら揺れるしっぽをつかみ
こう言った
「なるほど、象とは縄のようであるぞ」
それから、このインドスタンの男たちは
長いこと大声で言い争い
それぞれが自分の意見を譲らず
言い張るだけだった
それぞれ正しいところもあるが
またどれもが間違えているのに
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戦略は「ヌエ」のようなものであるからこそ、オモシロイ。しかし、それと関わるためには、全体像の把握と自分のスタンドポイントの把握、そして異なるアプローチをする人たちとのコミュニケーションが重要になる。
ところで「ヌエ度」でいうならば、「学習」ということばも、「戦略」に負けず劣らず、「ヌエヌエ」している。「それぞれ正しく、また間違えている」のに、内部で不毛な言い争いだけはしたくない。
投稿者 jun : 2007年7月 4日 07:00
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