わずか10%の可能性でも:OJTなのか、OFF-JTなのか?

 モルガン=マッコールの「The lesson from experience」には、下記のような趣旨のことが書いてあります。

 成人の能力開発の70%以上は、経験による

 先日読んだ本(リーダーシップの旅)には、ローミンガー社というところの調査が掲載されていました。

 リーダーシップの発揮に影響を与えた要因としては、1)仕事上の経験が70%、2)誰と仕事をしたかが20%、3)研修が10%だったそうです。

 これらの知見だけ読むと、

「嗚呼、研修とか、公式な学習で獲得できるものって少ないんだな・・・やっぱりショーもないやん。だったら、辞めちゃえ、適当にやっちゃえ」

 と思われる人も多いかもしれないけど、それは間違っているのではないかと僕は思います。

 「教育のことをよくわかっている人=教育にできること、できないことをわかっている人」は、そうは考えないだろうな、と思うのです。

「へぇ、10%とか30%も影響を与えられるんだ・・・ちょっとでもあるだけ、丸儲け!」

 と考えます。少なくとも僕だったら、そう思う。で、続けて、こう思うでしょう。

「経験がパフォーマンスに70%影響を与えるといっても、外部から統御不能であることが多い。それはimplicitに学ばれる、いわゆるinformal learningである。

それなら、自分が外部から確実に影響を与えうる10%の機会で、どんな効果をもたらし、残りの70%につなげるか・・・

いやまてよ、残りの70%もそのままにしておいてはイカンな。残りの70%は、なかなか外部から統御できないといっても、できることはあるはずだ。

残りの70%の機会で、人がなるべく学べるような環境を、どう準備したらいいだろうか。

・・・やるべきことはいっぱいあるなぁ」

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「経験なのか、研修なのか?」
「OJTなのか、OFF-JTなのか?」

 という問いは、僕はナンセンスだと思います。

 そういうのは、問いの立て方自体がナンセンス。まともに取り扱わなくてもいい。「これからはOJTの時代だ!」とかいう人がいたら、「はぁ、そうですか」と答えればよい。

「どちらなのか?」と聞かれたら、「BOTHだ!、何が悪い」と自信をもって答えましょう。

 「どちらかの手法」だけ、Catch allできるほど、甘いものじゃないと思うのです、人が学ぶということは。

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 というのは、今まで、僕は、いろいろなシステム、学習コンテンツ、ワークショップを開発してきたのですね。

 でも、そうしたブツが、「パフォーマンス」に与える影響を考えると、高くて20%、平均で10%以下ではないかと感じています(データがあるものもあるし、感覚的なものもある)。

 教育研究の無力さ、いいえ、自分の無力さを正直に告白します。

 でも、この数字を高いと考えるか、低いと考えるか。僕は、これらの数字を低いと考えることは、「人が学ぶということ」をナメていると思うのです。

 たかが、短期間の、かつ人為的に促された学習で、人間のパフォーマンスがすべて向上するわけがない。奢ってはいけないな、と思うのです。

 ここは謙虚になろう、と。わずか10%台の効果でも、よりよく学んでもらえる。それなら、その機会を最大限活かそう。
 何か外部からできる機会があるなら、どんなものでも活かすべきではないかと思うのです。

 だから、先ほどの問いには「BOTH!」と自信をもって答えるべきではないかと思うのです。

 今日の話は、あんまり賛同者が得られない考え方かもしれないなぁ・・・。でも、僕はそう思います。