おまえは世界の王様か! : 原田宗典を読む

 原田宗典著「おまえは世界の王様か!」を読んだ。

 爆笑エッセイストであり小説家の原田宗典さんが、若い駆け出しの頃につづっていた読書ノートを再読しつつ、現在、再びコメントをつけたもの。

 三島由紀夫、大江健三郎、モーパッサンなど、泣く黙る文豪たちを、何の遠慮もなく、小気味よく切り倒し、時に賞揚している。その立ち位置は、あたかも「世界の王様」のような感じ。

 一方、現在の原田さんは、当時の自分を「おまえは世界の王様か」とツッコミをいれつつも、どこか昔を懐かしむようなトーンで、コメントをしている。そのアンバランスが、とても微笑ましい。

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 どこかで耳にした台詞なのだが、

 若い頃というのは「大いなる勘違い」である。

 若い頃は「無知であること」「大いなる勘違い」をしていることによって、大言壮語が生まれる。「世界の王様」だから、「批判」も容赦はない。

 しかし、時がたち身の丈を知り、世の中の実際の動き方を知るにつけて、「昔はビシッ、バシッ、ズバッと批判できたものが、できなくなっていく。

 かつて変革しようと思っていた「世の中」にどっぷりとつかり、今度は「そちら側」に取り込まれていく自分に気がつく。自分の立ち位置が、かつて自分が批判していた側にあるという皮肉に鈍感になっていく。

 やがて

「仕方ない」
「なんとかなる」

 が口癖になる。

 この2つの言葉は「無敵」だ。この言葉ですべてお茶を濁していれば、決して傷つくこともなければ、悲しむこともない。かくて「終わりなき日常」が続く。

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 おまえは世界の王様か!

 我々はともすれば、若者を見て、そう思う。そういう若者を疎ましくも思ったりする。

 しかし、若者が、たとえ様々なコンフリクトを生み出す可能性があったとしても、たとえそれが大言壮語であったとしても、世の中に無知あるが故の批判だったとしても、彼らのもつ「夢」「理想」を否定してはいけない。

 むしろ、

 「口だけじゃなくて、今やれ、すぐやれ、ただちにやれ」

 と、けしかけなければならない。それが大人の作法だ。

 確実なことが一つある。

 夢や理想しか、現実になるものはない。