使える道具をつくる:樽本徹也著「ユーザビリティエンジニアリング」
久しぶりに樽本徹也氏の「ユーザビリティエンジニアリング」を読みなおしました。
ユーザビリティとは、一般に「使いやすさ」と訳されます。しかし、樽本氏は、それを敢えて「使用可能性」という風に訳します。単に「使いやすさ」という快不快の問題ではなく、よいインタフェースをもたないツールは、そもそも「使えないこと」を強調したいからでしょう。
ということになりますと、ユーザビリティエンジニアリングとは、「ユーザの立場にたった、使える道具をいかにつくりあげるか」という方法論になります。この本には、そのための手法が紹介されている。
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興味深かったのは、ユーザテストにかかる費用に関する記述でした。本書では仮にこれを「テスト1時間、ユーザ5名」とおいて試算しています。
リクルーティングの部分、つまりは被験者集めは実際には5人だけでなく予備も集めなければならないので多めに試算。そして、だいたい調査員の一人日は5万円から10万円ですので、ここでは平均をとって7.5万円で試算しましょう。
そうすると、こんな風な見積もりになります。
1.リクルーティング:15万円
2.テスト設計:2人日:15万円
3.実査:25万円 - 35万円
4.記録作成:2人日:15万円
5.データ分析:1人日:7.5万円
6.レポート作成:1人日:7.5万円
ここまで95万円。これにだいたい管理料(ディレクション費)が10%-20%はとるよね。ここでは、あいだをとって15%と仮定すれば、だいたい110万円か。まぁ、100万円強。
ニールセンのヒューリスティクス?によると、5名でユーザビリティの問題点の85%は把握できるというらしいので、まぁ、100万円程度で、その製品の85%程度が把握できるようになる。
先日、ある製造メーカにつとめる友人と、このことについて議論していたら、値段の点では「そんなもんだろう」ということで合意した。まぁ、それくらいは取らないと経営できないだろうな、と。
製品開発の現場で100万円が高いか安いかは別として、ほんのちょっとした工夫、改善で「使用可能性」が高まる、つまりは「使えるようになる」のだったら、それくらいはやって欲しいなとは、ユーザサイドとしては思ってしまいますけれども。たとえ、それが価格に転嫁されたとしても。