ライオンとガゼルの夜が明ける

 冷戦終結後の経済構造であるグローバリゼーションが、どのような要因で、いかに進行しているか。また、それは我々にどんな影響をもたらすのか。

 グローバリゼーションの動態と影響について論じたトマス=フリードマン著の「レクサスとオリーブの木」を読み終えた。

  

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 グローバリゼーションとは、地域や国の枠をこえて、地球規模で取引が成立し、地球規模で投資が行われ、地球規模で人やモノが行き交う時代のこと。

 自由貿易、自由競争、自由市場。著者は「黄金の拘束服」と言うけれど、それをまとった国だけが、コンピュータネットワークに接続された電脳投資家たちからの投資を受け、経済規模を向上させていく。

 冷戦構造とは異なり、グローバリゼーションとは、なかなか正体が見えない、いわば「ヌエ」のような存在である。

 世の中の現象を、ダイコトミー(二項対立式)に分けることのできた冷戦時代とは趣が全く異なり、それは知らず知らずのうちに、私たちの生活にしのびよっている。

 どんな人でも、グローバリゼーションの影響を受けないで生活している人はいない、と断言してもよいくらいである。

 先日NHKで放送されていたワーキングプア(働いているのに生活水準以下の生活しか送ることのできない人々)の問題も、実は、マクロにいえば、グローバリゼーションの渦中にある問題だ。

 多くの日本人が熱狂した小泉政権は(竹中政権?)、まさに日本をグローバリゼーションの潮流の中に位置づける役割を果たしていた。我々は、既にグローバリゼーションのトラックの中に、身を乗り出している。

 いったん、グローバリゼーションのトラックの中に身をおいたら(本人が望むと望まないと・・・)、やるべきことははっきりしている。

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 ライオンは夜ごとジャングルで眠りにつく。夜があけ、朝が来て、いちばん足の遅いガゼルに追いつかなければ、うえてしまうことを知りながら。

 ガゼルは夜ごとジャングルで眠りにつく。夜があけ、朝がきて、いちばん足のはやいライオンに勝てなければ、誰かの朝食になってしまうことを知りながら。

 だが、ひとつだけ眠りに落ちるライオンとガゼルの、どちらも知っていることがある。夜があけて、朝になったら、すぐに走り出した方がいいことを。

(下巻 p115)

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 もうすぐ、日が昇る、朝がくる。
 走り出す準備はできているか?

 うん、できてる。大丈夫だよ、日が昇れば、僕は精一杯走るよ。でも、これで本当にいいんだろうか。

 そんなこと、いちいち問うな。つべこべ言わず、黙って走り抜け!

 わかったよ。精一杯走るよ。

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 あの地平線のむこうに何があるかは、誰も知らない。
 だが僕らは走り続けることになる。