人の前で話すコツ?

「人の前で話すこと」は、大学教員の仕事の中で、少なくない部分を占める。授業、学会発表でのプレゼンテーションなど、多くの場面がある。

 人の前で話すとき、僕には、いつも気をつけていることがある。「言葉を滑らせない」ということである。

「言葉を滑らせてしまう」というのは、やや比喩的な言い方かもしれない。具体的に言うと、人の前で話すときには、

1)発する言葉を最小限にする
2)ゆっくり話す
3)視線を配る

 ことに気をつける。そうでないと、発した言葉が聴衆にはなかなか届かない、言葉が滑りますよ、ということである。

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 まず第一に、使う言葉を最小限にする。
 話すことと、書くことは違う。聴衆は全体像がわからず、リアルタイムであなたの言葉をピックアップし、情報を処理しなければならない。

 必要以上に言葉を発しても、全く聴衆には伝わらない。だから、言葉を選ぶ必要がある。1枚のスライドでは、1つの結論。その結論にむけて、言葉をえらぶ必要がある。「あれも、これも」では、聴衆の情報処理容量に限界がでてくる。余計な話、言葉は差し挟まないことである。

 一般に、饒舌になればなるほど、話が散漫になり、聴衆は顔を下に向けてしまう。

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 いったん話し始めたら、いつもの7割くらいのスピードで話すのがよい。経験上、そのくらいでちょうどよい気がする。

 これは英語を話すときも言えることなのだけど、ゆっくり話すことで、かなりの部分は他者に通じる。逆に、自信などがない場合など、急いで話してしまえばしまうほど、余計に聴衆には通じなくなる。

 「えー、こんなにゆっくりでいいの」

 と思うくらい、ゆっくり話すことが重要だ。これができれば、プレゼンテーションは当社比1.5倍くらいは改善される。

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 最後の「視線を配る」とは、かなり難しいテクニックであるかもしれない。話しているあいだに視線を送る場所を3個程度決めて、そのポイントに順番に視線をおくるというワザである。

 聴衆から見れば、演者は常に「わたし」を見ている、と錯覚する。これによって、緊張感のあるプレゼンテーションをすることができる。

 また、順番に視線を送ることによって、演者自身、自然とリズムがでてきて、1)や2)も満たす可能性が高くなる。

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 ・・・・と、ここまで偉そうに言ってきたけど、かくいう僕もこれらを満たす、自分の納得のいくプレゼンテーションができているわけではない。

 これは前に話したかもしれないけれど、だいたい話し始めて1分以内、勝負はわかる。今日はうまくいった。今日は負けた・・・嗚呼、言葉が滑っている。

 ・・・反省することしきりである。

 人前で話すことは、僕にとって永遠の課題である。