教育ルネサンス 教師力

 何を隠そう(隠してないけど)、僕の大学院での研究の出発点は「教師研究」であった。「インターネット上に、先生たちが自分の実践を検討し、切磋琢磨すること」を修士論文で扱った。そのためのソフトウェアを開発し、評価を行った。

 ブロードバンドやblogが普及した今は、やろうと思えば、そういうことが手軽にできる次代だ。しかし、当時は、ピーガラガラという感じでモデムをみんなが利用していたし、まして、教師が自分の実践を語り合う場をネットワーク上に設けるなど、ほとんど例のないことであった。

 だからかどうかはわからないが、それ以来、研究の対象が「教師」ではなくなっても、教師のことはずっと気になる存在である。新聞を読んでいても、論文を読んでいても、教師に関することには、ビビビと目がいってしまう。

 今の僕の研究を通底する一本の線には、「大人だって学習するのだ、そのための環境を整備するべきなのだ」という信念がある。今は「先生」を研究対象にしたことはないけれど、いつの日か、シャケが産卵するために川登りするように、戻ってくるような気もする。

 話が長くなった。

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 読売新聞教育取材班の執筆した「教育ルネサンス 教師力」という本を読んだ。公立学校と教師に対する信頼が揺らぐ中で、「教育のルネッサンス」をかかげ、日々研鑽している教師たちの奮闘を紹介する本。非常に興味深く読めた。

 名人教師が中心になって運営する「教育の鉄人倶楽部」、導入が検討されている優秀な教師への表彰制度、民間教育団体の実施する授業力判定テスト、塾や予備校の教師に学ぶセミナー、学校研修制度の改革。

 今、教師の実践力を向上させるために、日本中でさまざまな取り組みが行われていることがわかった。中にはまったく知らない試みもあって、時間があいたら調べてみたいなと思った(もちろん中には、首をかしげたくなるものもある)。

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 それにしても、今回の本は、7人の記者が総力をかかげて1年半にわたって取材を行った結果である。一般紙がこのような問題に7人の記者をはりつけることは異例なことらしい。それだけ、教師の実践力の恢復が急務になっているということなのであろうか。

 研究領域的にいうと、この領域は「教師教育研究」という研究領域になるのだろうけど、地域で行われている各種の試みについて、誰が一番把握しているのかなぁ、とふと思った。

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 団塊世代の大量退職、小学校英語の導入など、教師の実践力量の向上に対する社会的期待は、ますます大きくなっていく。教師が今熱い。