オンラインコミュニティでの学習
今年、山内さんのゼミでは、「Designing Virtual Communities in the Service of Learning」を読んでいる。
この本は、「教育や学習のオンラインコミュニティ」に関する研究をテンコモリにしたような専門書で、とても「お買い得感」が高い。僕は2年前、アメリカで購入して以来、論文を書くときなど、折に触れ、参考にしている。
先日、ゼミでH君がAmy bruckmanの論文を報告してくれた。Moose crossingというオンラインコミュニティにおける学習(プログラミング)に関して、実証的な調査を報告した研究である。
それによると、
1.オンラインコミュニティへの参加は不均衡になる
2.オンラインコミュニティにおける学習の達成度も不均衡である
3.既有知識、経験があるかどうかが、学習の達成度に関連する
ということらしい。
この結果には、大変納得がいく。
オンラインコミュニティにおいて「放っておけば学ぶだろ」とか、「放っておけばみんなで助け合うので、みんな、ある程度の達成度をクリア出来るだろう」と思うのは大きな誤りである。
当然の事ながら、「ある程度の知識のない人が、オンラインの場に行ったからといって、急にできる人になるわけでもない」。
もちろん、これらの特徴は悲観するべきものではない。
問題は、工夫をこらして、それらを、どのようにカバーするかである。
先日、人づてに、ある仮説を聞いた。
オンラインでの学習で、ドロップアウトするかしないかは、一番最初に学習者が取り組むタスクの量、難易度に依存するのではないか、という仮説である。
もちろん、これはオフラインにもいえることかもしれないし、経験的に、何となく我々が知っていることもかもしれない。しかし、これがもし正しいとした場合、それに従って、いくつかの機能やタスクを開発することで、先ほどの「参加の不均衡」をある程度は是正することができるのかもしれない。
わずかな工夫でも、それを積み重ねることが重要だ。
塵も積もれば山となる、である。