Wiwiw

 総務省の「ユビキタスラーニング推進協議会」にでた。そこで業界最大手のネットラーニング社の岸田社長から「Wiwiw」という資生堂がやっている育児休業者向けの教育サービスについて教えて頂いた。

ネットラーニング
http://www.netlearning.co.jp/

Wiwiw
https://www.wiwiw.com/

 Wiwiwとは、育児休業者の「職場復帰に向けたスキルアップ」の両面をサポートする教育プログラムである。育児休業者が、復帰後の仕事に役立つ様々なオンライン講座を受講したり、掲示板等を通じて会社とのコミュニケーションを図ることができるのだという。

 キャラクターが定期的に上司に休業中の部下にメールを書くよう促す機能もあるようだ。育児休業者は、時に会社からの「隔絶感」を感じるほか、「復帰すること」に不安を抱えるものらしい。そういう意味では、育児休業者だけでなく、「育児休業者を抱える上司」も支援対象になっている。

 Wiwiwは資生堂の社内ベンチャーが運営している。現在、顧客は200社にものぼるそうだ。もともと育児休業のあと復帰する女性社員が多い資生堂で、育児休業者のフォローシステムとして開発されたものを、プロフィットサービスに転換したということになる。

 少子化の観点から、いかに女性が「働きやすい環境」をつくるか、ということが問題になっている。助成金や企業の各種人事制度の刷新に加え、こうしたサービスも有効だろうな、と思った。

 ---

 あと、オモシロイなぁと思ったのは、Wiwiwでは「eラーニング」という言葉が全く使われていないことだ。「オンライン講座」とは言っているけれど、「eラーニング」とは言わない。

 最近、よく思うことなのだが、いわゆる「eラーニング業界」以外の業界が - 例えばゲーム、ポッドキャスト、どこでもusenなどを含む - 「eラーニング」という言葉を使わずして、「情報技術と教育」を結びつけ事業に成功するパターンが多くなっているように思う。いわゆる「eラーニング」なるものの実態が把握出来なくなっている事態が生じている。

 おそらく、eラーニングというやや固定的なイメージのついた言葉を避けているんだろうと思う。いや、もはやWebやストリーミングで学ぶことは、「アタリマエダのクラッカー環境(意味不明)」に移行していて、今更それを、「eラーニング」と呼ばずともいいと思っているのかも知れない。数年前の前著で指摘したように、「eラーニング」という言葉が透明化する日は近い。

 それに対して、いわゆる「eラーニング業界」は、今もなお、「標準化」「ID」「LMS」の話題ばかり。その中から、早急に使い勝手のよい、魅力的なコンテンツがでてこなければならないのだが。断っておくけれど、もちろん、「標準化」も「ID」も重要ではあることは疑いない。しかし、「eラーニングの外」で起こっている事態、「eラーニングの外」でおきている「熱気」に、うまく対応できているとは言えない気がするのは、僕だけだろうか。

 中には、「あーいうのを、eラーニングとよぶかどうかは議論が必要だね、フン」とか怒っている人もいる。でも、それはサプライサイドの理屈だ。

 学習者の立場からすれば、自分が受けているサービスが、「eラーニング」かそうでないか、なんてどーでもいい。見栄えやインタフェースがよくて、アフターフォローがしっかりしているものを、彼らは選ぶ。学びやすくて、学習効果の高そうに見えるものが世の中に受け入れられる。

 「SCORMなんちゃらでは、これ以上リッチな表現はできないんですぅ」というような、「作り手の理屈」なんて、学習者にしてみれば、どーでもいいのである。

 「eラーニング業界の内と外」、そして「サプライヤ」と「学習者」の間。
 これらの間にある温度差が、なんだか痛々しく感じる今日このごろである。