プロフェッショナルの人材育成
小池和男先生編の「プロフェッショナルの人材開発」という新刊を読み終えた。
本書におけるプロフェッショナルとは「まだよくわかっていない面倒な問題を何とかしてこなす職業」のことである。
一般にプロフェッショナルというと、膨大なナレッジベースを有した「能力ある個人」を想定してしまいがちだ。弁護士、医師などがそれにあたるとされる。しかし、プロフェッショナルの人材育成は、組織において行われる、というのが本書の主張である。
新聞記者、製薬企業の研究者、ファンドマネージャなど、これまで分析が十分なされてこなかった人材育成の様子を明らかにしようとしている。
それでは、組織においてプロフェッショナルは、どのように育成されるか。それは「どのような仕事をしてきたのか=キャリア」を通じてであると、筆者らは考えている。
故に、研究方法論としては、当該人物が、どのような仕事に従事してきたのか、というヒストリカルな方法が採用される。キャリアの比較・・・つまりは、ある仕事についた人たちが、それまでどのような仕事をしてきたのかを調べ、その共通点、相違点にプロフェッショナルの存立のきっかけを見ようとする。
たとえば株価の予想を行う新聞記者の場合、最初は「企業業績データを収集する仕事」から、選抜をへて、「株価の変動要因を予想する仕事」へと移行している。
「業績を集める仕事」の中に、「株価の予想」を行う仕事に必要な知識、経験が凝縮されているのである。
もちろん、小池先生といえば、「聞き取り」という研究方法論がとても有名だ。キャリアの比較を補完するデータとして関係者の「聞き取り」などが行われている。
(ちなみに、この聞き取りの作法は本当にタメになる本である。組織を研究対象にしている人にはぜひおすすめである)
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本書を読んでいて、下記のことを考えた。
現在、一般にOJTを研究対象としようとする場合、小池先生らのように人材育成を「キャリアの蓄積」と見る労働経済学的な研究がある。
一方で、ある企業のあるシーンにおいて、先輩と後輩、後輩と後輩の間で達成される「相互行為」を学習と見なす、状況論風の微視的な研究群がある。
他にもいろいろあるけれど、大きく分ければこの2つだろう。ここでは詳しくは書かないけれど、どちらも「見えるもの」と「見えない」ものがある。
僕個人としては、その中間に位置するような、ミドルレベルの研究がオモシロイなぁと思う。しかし、それをどういう方法論で実現するか・・・。そのあたりが大変悩ましい。
そして、今日も朝がくる。