美容師さんになっていくプロセス
人はどうやって一人前になっていくのか
人は最初から熟達者であったわけではありません。誰もが最初は新参者です。
テレビ局、出版社、官庁、スーパーマーケット、コンビニ、病院、航空会社。世の中には、僕の知らない世界がたくさんあります。
その道において、新参者が「どのようにして一人前になっていくのか」、あるいは、「どのようなきっかけで、自分は一人前になったと実感するようになったのか」、そういう話を、直接、そこで働いている人から聞くのが、僕は好きです。
これは「密かな趣味」といっても過言ではないかもしれません。でも、あまり迷惑をかけてはいないと思うんですね。若い頃の苦労、一人前になるまでの困難を、リトロスペクティブに語るのは、あまりイヤという人は少ないような気がします。人によっては、懐かしそうに、遠い目をして、語ってくれる人もいます。
先日は、美容室で、どうやって美容師が一人前になっていくのかを喜々として聞いていました。
彼女曰く(副店長さんでした)、美容室によって人材育成システムには違いがありますが、だいたい、「シャンプー」「パーマ」「トリートメント」「カラーリング」という風に進んで、最後に「カット」という風になるそうです。
Lave & Wengerの仕立て屋の話ではないですが、要するに「失敗するとFatalな作業=カット」が一番最後に配置されていることが、すぐに見て取れるでしょう。
「まずはアタマのカタチが人によって全然違うことを知って欲しいのです。それから髪質の違い。そういう違いは、シャンプーを1日に数十回もやっていれば、イヤというほどわかるはずです」
とおっしゃっていました・・・なるほどね・・・。
あと面白かったのは、美容室に暗黙のうちに存在する「格」の話ね。美容室にも「格」があるのだそうです。
一口に美容室といいますが、「カットで1万5千円をとるような超高級店」から「カット1000円」の店まであります。店の「格」は、そこで働く店員さんのアイデンティティにとって、重要な影響を与えるそうです。
でも、ここがポイントなのですが、「超高級店が必ずしも、よい学習環境ではない」ということなのです。若い人は、みんな代官山や青山、表参道なんかの「オシャレスポット」で働くことにあこがれる。だから、そういうお店は、ものすごい倍率になるそうです。
でも、運良く(ルックスが結構重要らしい・・・)、超高級店に入ったからといって、必ずしもその後幸せになるわけではない。かえって、そういう超高級店では、「若手がはいってもずっとシャンプーだけをやらせる店」もあるらしい。
「名前ではなく、ちゃんと厳しく教えてくれるとこを探せばいいのにね、と思うけど。やっぱり若いうちは、そういうのはわかりませんから・・・」
とおっしゃっていました。
うん、オモロイ!
いろいろ根ほり葉ほり聞いていたら、そういうことに興味をもつ人ってなかなかいないらしく、最後には、「お客さん、もしかして同業ですか?」と尋ねられました。「そんなようなものです」と答えましたけど。
人はどうやって一人前になっていくのか?
今度は、あなたが一人前になったプロセスを聞かせて下さい。