カーネギーラーニング!?:全米教育学会報告

 AERAでは、今日も、ものすごい数の発表と熱い議論が繰り返されています。普通のコンサートホールレベルの建物を4つと、ホテルを1つ使って行われているんですね、学会が。なんか怪しい団体の集会じゃねーかってくらい人がいる。こんなにたくさんの教育学者を見るのは壮観ですね。

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 以下、今回のAERAで僕がオモシロイなぁと思った発表をご紹介。

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■Self-directed learningと
  Contextualized tutoringを統合する

 うーん、これなんて説明したらいいだろうか。
 まず、Self-directed learningは「自分の責任で、自分の学びたいものを選択し、カリキュラムをつくり、成果をだしていくような学習」でしょうか。

 で、すぐに想像がつくように、こういう放任!?的な学習っていうのはあってもいいのですが、なかなか学習として成立しない場合が多い。教育学者なら、いわゆる「はい回る経験主義」とか、社会学者なら「反知性主義」とか批判する状態になってしまうと思うんです。そんなに甘いものじゃない、学習は。

 だから、Tutoring(指導)が必要だろう・・・ってことになりますね。で、どうせ、Tutoringするんだったら、それは学習の文脈や状況なされた方がいいよね・・・というわけで、このセッションになっているわけです。

 セッションは、コロラド大学のフィッシャーさん、スタンフォード大学のロイ・ピー、ノースウェスタン大学のコリンズさん、カーネギーメロン大学のケンさん、MITのレズニックさんなどが参加していました。

 MITのレズニックさんは、都市の子どもたちがコンピュータで何かを「つくる」ことを行う放課後クラブ「コンピュータクラブハウス」の話をしたり、「Logoによるアニメーションやゲームの開発環境:Scratch」などを紹介したりして、会場を沸かせていました。

コンピュータクラブハウス
http://www.computerclubhouse.org/

Scratch
http://llk.media.mit.edu/projects/scratch/ 

 レズニックさんは、ふだん、非常に優しいしゃべり方をするのですが、発表になると熱いですね。発表をはじめて見たので、とてもびっくりしました。

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レズニックさん

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コンピュータクラブハウス

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スクラッチの画面

 あと個人的にすごいなぁと思ったのは、カーネギーメロン大学のケンさんの発表。いやぁ・・・いい意味で「執拗」ですよ。

LearnLab.org
http://www.learnlab.org/

 ピッツバーグ学派というのでしょうか・・・ピッツバーグ大学とカーネギーメロン大学は、「Intelligent Tutoring System(知的チュータリングシステム)」の開発では定評がありますよね。

 知的チュータリングシステムというのは、「学習者の回答状況をコンピュータが把握して、適切な指導を行うシステム」です。彼らは、ジョン=アンダーソンという人のACT-R理論という認知理論を下敷きにして、これを洗練しつづけているのですね。

 知的チュータリングシステムの研究というのは、1970年後半から1980年代にかけてとても盛んになったのですが、この時代からずっとそれを「シコシコ」と研究しつづけている。

 これがね、スゴイなぁと思った・・・。この「執拗さ」が。最近、僕はこういう研究者が好きなのです。
 で、そんだけ長い歴史があるわけだから、現在、このシステムはCognitive Tutorという名前で実用化されています。現在2000校が導入しているんだって。すげーな。

Cognitive Tutor
http://www.carnegielearning.com/

 上記のWebを見て下さい・・・Carnegie learningですからね。「東大式学習」ってことか。すげー。325000人も学んでいるのですね。

 ケンさんは、こうしたシステムの稼働状況に基づいて、いろいろなことを述べていました。
 なかでも、「あまり問題はこなせないけれど、学習者に自己説明を促す指導」と「たくさん問題を解かせつづける指導」では、どちらの方が転移がいいか、という実験は面白かった。

 自己説明っていうのは「学習者が自分の考えや操作について、自分で説明する学習方法」のこと。ほら、「わかっていても、説明出来ない」ってのがあるでしょう。でも、「説明できないならわかっていない」のですよね。

 自己説明研究が本格化したのは、Chiの研究からだと思うんですが(手元に資料がないので正確なことはわからん)、先行知見によると、自己説明の効果は、1)わかっている部分とわかっていない部分が明確になる、2)誤りや矛盾を発見出来る、なんてのがありますね。Chiさんの実験、自己説明の量と成績には、かなり強い正の相関があることもわかっている。

 で、ケンさんによると、

「自己説明を促す知的チュータリング」
   >「問題を解かせつづけるチュータリング」
 p<.01

 という結果がでたそうです。

 やっぱりね「自分で説明させる」というのは、よい学習リソースになるのですね。あのね、e-learningとか教材とかの作り込みでも、そういう「自己説明」のオポチュニティをなるべくつくるっていうのがいいのかもしれませんね。それにしても、自己説明をうながすチュータリングって、具体的にはどんな感じなんだろう・・・。話を聞きにいけばよかったね。

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 このあと、ハーバード教育大学院の人がやっている「Game-based learning」のセッションにいったんだけどね・・・Multi-User Virtual Environmentを学習に使うという研究でしたけど。

ハーバードのゲーム研究
http://www.gse.harvard.edu/news/features/dede03012003.html

 「River city」「Quest Atlantis」といったMUVEがあるそうです。具体的なことや、学習の効果については、述べられていませんでしたので、よくわかりません。
 セッションでも述べられていたし、あとで話したMITの研究者がいってましたけど、「ゲームは15年周期で教育業界で流行する」そうです。でも、そこをネガティヴにとらえるのではなく、「古い皮袋にどういう新しさ(新たな学習の効果)を付加できるか」が問われるんでしょうね。

rivercity.jpg
River cityのデモ画面

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