やってよかったアルバイト

 いろんなアルバイトを経験するのはよいことだと思う。

 一般的には「アルバイトは社会勉強に通じる」「お金のありがたみがわかる」と言われるけど、そういう意味において、「よい」と言っているのではない。

 僕がそう思うのは「アルバイトを通じて学んだ知識が、実際に社会にでたあとで、役立つことが多い」と、経験的に思うからである。もちろん、すべてのアルバイトが「役にたったなぁ」と思うわけではない。職業によっては、後になって「役だったなぁ」「あんまり役立っていないなぁ」と思うものがある。

 学生時代、僕はアルバイトの王道「家庭教師」「塾講師」をやる一方で、ちょっと違った種類の仕事もすすんでやるようにしていた。

 今になって考えて、一番やっていてよかったと思うのは、「出版」の仕事である。短い期間ではあったけれど、僕は、ある印刷会社でコンピュータに向かって、DTP(デスクトップパブリッシング:記事のレイアウトを組んでいく仕事)をしていたことがある。

 この仕事を通じて、僕は「書いた文章を綺麗に魅せること」を学んだ。僕の今の仕事は、「文章」とは切っても切れない職業であるが、それにこの経験がとっても役立っている。

 たとえば、今、共著論文を書いていて、他人から原稿を預かるとする。さぁ、あとは僕が加筆と編集をする番だ。
 で、原稿を目にした瞬間「どこで段落を切っているか」「フォントの大きさと種類」「改行のズレ」「全角を避けて半角にするべき場所」などが、すぐに気がつく。ドラゴンボールにでてくる「スカウター」のように、ピピピと「マズイところ」がハイライトする(ちょっと大げさかな・・・あと古いかな・・・)。
 「なんだ、そんなことは本文に関係ないじゃないか」というなかれ。それは、とってもトリヴィアルなことであるけれど、読み手にとっては、意外に重要な影響をもつことなのだ。

 ウソだと思うなら、自分のお気に入りの雑誌をひとつもってきて、タイトルと文章だけを抜き出してみるといい。それを全く同じフォントの大きさ、種類に変えて、もとの記事と比較して読んでみよう。意外に、レイアウトの力で、執筆者の「伝えたいこと」が構成されていることに気づくだろう。

 もちろん、僕が出版の仕事をやっていたのは、数年のほんの短い期間であるから、そこで学んだ知識といっても、本職のそれとは比べものにならない。でも、そういうことに意識がいくことと、いかないことでは大きな差があるのではないかと思う。

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 昨今、大学では学生たちに「自分のキャリアをどのようにデザインするか」ということを教えるべきだ、という論調が強い。実際に、いくつかの大学では、キャリアデザイン室というものを使って、キャリアを意識させる試みがはじまっている。

 そういう試みは非常に貴重だなぁと思う。だが、そこでいうキャリアとは、「ある人がフルタイムの職業についたあとの道筋」であることが多い。
 これを書いていて「アルバイトでどんな仕事を選ぶか」も含めて学生にはキャリアを教えるとオモシロイんじゃないかな、とふと思った。

 あなたがやったアルバイトで、「やっていてよかったなぁ」と思うものは何ですか?

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