大学改革のゆくえ:大学はどこに向かうのか?
大学が動いた。1960年代後半における大学の喧噪と、その後の大学の沈黙を知るものからすれば、最近の動きは驚きである。
(矢野眞和 大学改革の海図より)
矢野眞和氏著「大学改革の海図」を、週末に読んだ。
それにしても、なぜ、今、大学は動いたのか? 「理念」だけによる変革ではなかった。「理念と経済」のせめぎあう場所に、大学の変革がはじまる。
大学に変革をもたらした経済的要素として、本書では「資金の市場化」「経営の市場化」「出口の市場化」「入り口の市場化」をあげている。
資金の市場化とは、政府によって供出されている大学運営資金が年々カットされ、他の資金源を大学自らが探さなくてはならなくなったことを意味する。新保守主義の思想 - 小さな政府、市場化、自由競争が大学をおそっている。国立大学の場合、効率化係数といって年1%ずつ運営費はカットされている。東京大学の場合、10億円の削減になるはずだ。
経営の市場化とは、いわゆる「New Public Management」である。大学に民間の経営手法を導入しようというわけである。民間へのアウトソーシング、民間からの経営者受け入れを通じて、大学の経営が民間に近いものになっていく。
出口の市場化とは、大学を卒業した学生が、必ずしも就職できるわけではなく、そこに激しい競争が生じるようになったことを意味する。
入り口の市場化とは、いうまでもなく入学希望者獲得の競争が激化していることを意味する。象徴としての「大学全入時代」を前に、どこの大学でも、対策を講じるようになっている。
このような4つの市場化の潮流を背景にしつつ、本書では、変貌しつつある14大学の改革のフロントラインを紹介している。
少数精鋭で先端的な教育・研究をねらうのか、それとも、時代に左右されない不易の教育を押えるのか。各大学の存亡をかけた戦略を紹介する。
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僕が大学界(そんな界があるのか!?)に入ったのが、2001年3月。その頃、すでに大学は動いていたし、今も動き続けているように感じる。
「大学は動くのがアタリマエの雰囲気」の中でキャリアをスタートした今の若手大学教員にしてみれば、「かつて大学が沈黙していたこと」こそ驚きに思える。
大学はこれからどこに向かおうとしているのか?
少なくとも言えることは、「今、わたしたちがいる経度、緯度」に、将来の大学は留まっていることはない、ということである。
うん、そのことだけはまちがいない。
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