メーリングリスト

 とても親しい友人から相談を受けました。
 曰く、

自分が参加しているプロジェクトでは、メーリングリストで連絡をとりあっているんだけど、自分の何気ない一言で、ケンカになることがよくある。なぜなんだろうか?

 で、メーリングリストの文面をすこし見せてもらったのですが、一目見て、「そりゃ、そうだわな」と思いました。

 まず「プロジェクト推進系のメーリングリスト」では、絶対にやってはいけないことを、いくつもやっている。
(メーリングリスト一般については知りません。下記はあくまでプロジェクト遂行を目標にしたメーリングリストについての話です。「探求」を目的としたいわゆるCSCLチックなメーリングリストでは、議論するのがアタリマエです)

 それは、「メーリングリストで相手を名指しで、敢えて議論をふっかけたり」しているし、「苦情をたれたり」「相手の意見を批判したり」したりすることです。「難しい調整」などもメーリングリストでやっちゃおうとしている。

 まず、第一にメーリングリストでは、なかなか感情っぽいものが伝わらないから、ハードな議論とかになると結構厳しい。ラポールがあったとしても、通常業務の忙しい中でメールを見ているので、ケンカになりやすいのです。

 「いいじゃねーか、お互い気心のしれた仲なんだから、メーリングリスト上で激しく議論しても」という人がいるかもしれないけれど、それは違うね、申し訳ないけど。

 「違った場所でやれば?」と僕は言いたくなってしまいます。ていうか、「場」を読んだほうがいいです。

 なぜなら、当の本人は言いたいことが言えてOKかもしれないけれど、それを見ている人は、結構萎縮してしまったりしまいがちなのです。自分たち以外は、みんな「ドン引き」ということがよくある。で、たいがい、そういうのには気づかないんですよね、本人は。
 
 それに、議論の結果、「手打ち」に終わればいいけど、そうじゃない場合は修復が大変。プロジェクトマネージャの仕事は2倍にも3倍にも広がります。

 よけいなとこで波風たてて、本来、リソースをさかなければならないところに、リソースがさけなくなる。それは結果として、プロジェクトの達成度をさげることになる。

 誤解されたくないので最初に行っておきますが、僕は「議論するな」と言っているのではないですよ。大いにやったほうがいいと思います、議論は。

 様々に発生するコンフリクトは、アウトプットのクオリティにとって、大変重要だと思います。ただ、ことプロジェクトを遂行するメーリングリストでやるっていう場合には、とても注意が必要です。

 僕の考えでは、そういう場で、敢えて好きこのんで議論をふっかける必要はないと言っているのです。そういうのは、オフラインや同期コミュニケーションの手段を使って、大いにやりあえばいいと思います。

 あと、逢って話せば5分で終わることに、1時間の労力をつぎこんで文字インプットするのは、いかがなものかと思うのです。それならば、本来の業務や各自の作業にもっとリソースをさけるはずですよね。

 プロジェクトには、スケジュール、リソース、様々な制約がある。無限だったら、大いに議論すればいいと思うけど、なかなかそうはいかない。だから、場を読んだ方がいいとおもうのですね。

 あと、「苦情」とか「批判」とか「難しい調整」とかは論外ですね。こういうのは、メーリングリストには、あまり向いていません。

 メールは非同期コミュニケーションですよね。ということは、やりとりにタイムラグが発生します。あなたが、こういう「ムズカシイ」ことを書いたあとに、もし相手からメールがこなかったら、その時間、プロジェクトを前に進められないですね。で、たいがい、「苦情」とか「批判」「調整」系のメールへのレスってのは遅くなるものなのです。だから、こういうのは直接あったときにやってしまうか、あるいは、電話の方が早いのです。

 あとはね、こんなことって思うかもしれないけれど、プロジェクト系のメーリングリストでは、いつもの倍くらい丁寧に話した方がいいとアドバイスしました。

 「~してください」
 「~することになっていましたよね」

 というふつうの会話ででてくる文章は、メールで読むと、かなり強い「命令」に聞こえたりするものです。「親しき仲だからやりあう」んじゃなくて、大人だったら、「親しい仲だからこそ、お互いの仕事に配慮した方がいい」のです。

 僕の周囲の賢い人たち(プロジェクトをマネージするような人たち)は、そういうのをわかっていて、

 「~することは可能でしょうか」
 「~していただけますでしょうか」

 という言葉を使っています。

 あと、そういう人たちは、何かメンバーがやったあとの、「おつかれさまです」「ありがとうございます」「よろしくお願いします」の3つの声かけは忘れないですよね。

 繰り返して言いますが、「メーリングリスト一般」にこれらが通用するとは思いません。CSCLチックなメーングリストも、今日の話には含まれません。さらに、これらのKnackは、あくまで僕の経験の範疇を超えていません。

 だけど、どうせやるんだったら、「仲のよいプロジェクト」にしたほうがいいし、その方が高い達成度が期待できます。

 たかがメーリングリスト、されどメーリングリストだと思うんですが、いかがでしょうか。