電話喫茶
先日、ある書籍の執筆者会議で、「かつて日本に電話喫茶なるものがあっ
たのだ!」ということが話題になった。
「電話喫茶」とは、文字通り「電話のある喫茶店」で、パーティションで区切られたところに、ガーっと電話が並んでおり、恋人同士の待ち合わせなどに使われたらしい。
これがあったのは、今から30年くらい前、1970年前半~80年くらいまでとのことで、当然のことながら、僕はそれを見たことはない。渋谷や池袋などの繁華街に、存在していたのだという。
残念なことに、電話喫茶の正確な利用方法は、誰も覚えていなかった(誰か知っている方、いますか)。執筆メンバー全員で、「きっと、待ち合わせ場所に行けなくなった場合は、そこに電話をかけ、取り次いでもらう」というルールだったのではないか、と推察していた。
まぁ、ほぼ100%に近い若者が携帯電話をもつ時代から考えれば、そんなものがあって、商売として成立していたってのが、正直驚きである。
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振り返って考えるに、「携帯電話は、恋愛のあり方を変えた」。
携帯電話がない昔・・・とはいっても10年くらい前までは、「待ち合わせですれ違った場合は、<逢えない>ということを意味していた。
今、なかなか「待ち合わせで逢えなかった」という話しをあまりきかない。これは、間違いなく、携帯電話の影響だろう。
それが誰もが携帯電話をもつようになって、「待ち合わせ場所の指定も、かなりアバウトになってきた。
場合によっては、「新宿で10時ねー」という待ち合わせもアリになってきた。かつては、「新宿西口の小田急中央改札だよ、1Fだからね、地下じゃないよ、地下はJR。絶対に間違わないでね」とかなり正確に場所をつげる必要があったのに。
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また、僕らの子ども時代は、家に1台しか電話がない家庭の方が多く、家庭の電話機は多くの場合、みんなの集まる茶の間におかれていた。
だから、異性のおうちに電話をかけるというのは、大変な勇気がいるもので、それで「オヤジなんかがでた日」には「アチャパー」ってなことがよくあった。
「○○さん、いますか?」といったとたん、ムスッとして、電話をかわられる。中には、「うちの子になんの用だ?」と凄まれたヤツもいた。
たとえ電話を取り次いでもらえても、相手は茶の間で話している。そこには、オヤジや家の人がいるから、大きな声では話せない。
電話を取り次いでもらったら、まず開口一番「Yesか、Noかで答えてね」といった具合に、なるべく話しの内容を察知されないように、電話をしていたことを思い出す。
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まぁ、いいや。
あんまり昔のことばっかり話してると、「オマエもオヤジになったな」って言われるから。
でもさ、そういうドキドキ感、たとえば、「待ち合わせの場所を間違えて」、半殺しにあっちゃうとか(そんなのヤダ)、異性のうちに電話して、オヤジと気まずい雰囲気になるとか、そういう経験を、ぜひ、もって欲しいなと思うけどね、今の子どもたちにも。
そういうドキドキ感も、恋愛の醍醐味だと思うけども。