職場の新人が、朝イチで出社することの5つの意味!?

 先日、「OJT指導の効果測定」に関する共同研究でご一緒している関根さん(中原研・OB)と研究室で話していて、興味深い話題になった(本研究には自動車のN社さま、精密機械のN社さまがご参加いただいております。この場を借りて、感謝いたします。ありがとうございます)。

 僕たちが話していたのは、

「自分の指導する新人が職場に朝早く来ると、OJT指導員は喜ぶ場合が多いが、それはなぜか?」

 という話題である。
 これには、いくつかの理由があるんだろう、というのが僕たちの「真面目な雑談」の内容だった。以下、それを5つの理由にわけて、列挙してみよう。

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 ひとつの理由に「時間の融通」。
 OJT指導員は、通常、自分の仕事をしながら新人の面倒も見ている。ただでさえ時間がないのだから、新人の指導は、まだ始業前にやっておきたいし、日々のコミュニケーションも、ここでとっておきたい。
 新人も始業前に、昨日積み残した仕事を追うことや復習ができるし、今日、これから行う仕事の予習もできる。また、OJT指導のノートや日誌などを課している会社の新人は、OJT指導にかかわる様々な付帯業務も、この時間にこなすことができる。

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 ふたつめに「社会的接点」
 始業時間よりも早く新人が職場にいれば、当然出社してくる他の社員と挨拶をしたり、声をかけられる可能性が高くなる。給湯室などにいってみれば、コーヒーやお茶を飲みに来た他の社員とも雑談などにもなるかもしれない。
 要するに、始業前の時間を使って、職場の既存メンバーとの社会的接点を多数持つことができる。この結果、組織社会化のスピードは、そうでない場合と比べて、早くなる可能性がある。いざ始業時間になってしまえば、きったはったの世界がはじまるので、多くの人々は、新人のことだけにかまっていられなくなるだろうから。

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 みっつめに「仕事の習慣獲得・組織適応」。
 OJT指導員にとって、新人に教えなければならないことは「仕事の内容」だけではない。仕事の習慣を身につけさせること、また組織にはやく適応させること。こうしたことも、「教えなければならないこと」である。

 まず朝早く起きて、しっかりと体調を整え、職場の自席につくこと。これは、ぜひとも早期に獲得しなければならない習慣である。

 また、組織に周辺的に参加していて、まだ生産性をあげていない新人が、せめて朝早くきて、組織のためにせめてもの貢献を行うことは、当人に対する組織メンバーの印象をよいものにする。結果、組織適応は早くなると想像できる。

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 よっつめに「熱意やモティベーションのディスプレイ」。
「誰にも頼まれていないのに、朝早く出社する光景」は、仕事のへの熱意やモティベーションを、新人が有していることを、他者に対してディスプレイ(提示)する(本当に熱意やモティベーションをもっているかはわからない)。

 OJT指導員は、ただでさえ忙しいのにもかかわらず、他人の面倒を見ている。自分の指導している新人が、朝早く出社してくる光景を見ることは、OJT指導員が新人の成長を実感できるリソースとなる。よって、OJT指導員自身の感情浄化(カタルシス)につながるし、モティベーションにもつながる。

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 最後、いつつめに「OJT指導の効果を伝える政治的メッセージ」
「誰にも頼まれていないのに、朝早く出社する光景」は、OJT指導員のみならず、多くの組織メンバー、特にOJT指導員の「上司」に当たる人も目にする。
 そういう意味では、新人の朝早く出社する光景は、「OJT指導員による新人指導が、効果をあげていること」を上司を含む組織メンバーに政治的かつ社会的に「証明」する行為でもある。結果、OJT指導員の社会的レピュテーションは、向上することが想像できる。

 だいたい、こんなものであろうか。
 もちろん、会社・組織といっても、いろんな会社があるので、単純に新人を「しごく」「いびる」ためだけに「早朝出社」を迫っているところもあるから注意が必要だけれども。また、こういうのは、第三者や組織から強制されるものでは、ないよなとも思います。そうだとすれば、単なる長時間労働にしかならないから。
 ここは、まえむきに、かつ、合理的理由にしぼって「新人が朝早くくること」の意味を解釈するならば、上に示したいくつかの可能性、あるいは、その混成体が想像できると思う。
 もちろん、他の可能性や解釈も多々あるだろう。
 ぜひ、伺ってみたいな、と思う。

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 今年も、はやいもので8月になる。
 4月に入社してきた新人は、早いもので4ヶ月を過ごしたことになる。多くの会社では、職場配属を終え、すでに仕事に取りかかっているだろう。

 今日、職場に一番早く来たのは、誰だったろうか?

 新人?
 えっ違う? じゃあ、OJT指導員?
 いやいや、案外、「課長」だったりしてね・・・。

 そして人生は続く

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追伸.
 最近、論文を執筆しているせいでしょうか、今日の文章は、なぜか「である調」になってしまいました。今日、何にも考えずに書き出したら、こうなった(笑)。もうすこしで論文は完成します。明日か明後日には投稿したいと思います。そうすれば、いつもの「ぐだぐだ、ゆるゆる調」に戻ります(笑)。

  

投稿者 jun : 2013年7月30日 08:48