「ミーティングの前には、コーヒーを飲んで、語り合う」:スターバックスコーヒージャパンさんの組織文化、ミッションマネジメント
先日、授業で受講生の皆さんと、目黒にあるスターバックスコーヒージャパンさんの本社を訪問させていただきました。
いわゆるひとつの「ラーニングピクニック(Learning picnic)」ということで、人材開発を特に力をいれていらっしゃる企業をご訪問させていただき、皆でディスカッションをするという内容です。ピクニックとは言っていますが、内容はガチです。
今回のピクニック!?は、スターバックスコーヒージャパンさんの人事本部のみなさま、都内3店舗の店長の皆様のご協力・ご厚意で実現しました。
この場を借りて感謝いたしますとともに、心より御礼を申し上げます。ありがとうございました。
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今回のラーニングピクニックの内容は「理念経営とモティベーション」。講義では、スターバックスコーヒージャパンさんが行っているミッションマネジメントの現状と、人材育成、特にモティベーション(エンゲージメント)の関係をみなでディスカッションしました。
当日は、都内3店舗で行われている、素晴らしい力量をお持ちの店長さんたちにもご登壇いただき、店舗で行われている人材教育の一部を受講生全員で体験させていただきました。非常に面白い時間でした。
スターバックスさんから伺った話は、どれも非常に印象的なものでしたが(ここで書ける話も、書けない話も含めて)、個人的に興味深いな、と思ったのは、スターバックスさんでは、ミーティングの前には、必ずコーヒーを飲んで、それついて語り合う「Coffee tasting」をするという習慣でした。
このコーヒーの香りはなんだろう?
このコーヒーにあうfood paringとは何だろう?
というかたちで、ミーティングの前には、従業員の方々同士が、コーヒーについて語る時間をもつそうです。
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「コーヒーについて語ること」とは何か?
誰もがすぐに想起するのは、そうした活動が、「コーヒーに関する専門知識」、ないしは、「商品に関する知識」を深めることに寄与するという仮説です。
コーヒーについて従業員同士が語っていれば、コーヒーに関する知識の流通や獲得が、そのプロセスで起こっていても、何ら不思議はありません。
また、常にコーヒーについて語ることがよしとされるのであれば、個々人がコーヒーに関する専門知識を常にブラッシュアップしようという動機もわくのかもしれません。
しかし、別の角度からみて、一寸興味深いと感じるのは、おそらく、「ミーティング時に、コーヒーについて語ること」自体が、いわゆる「組織文化を強化すること」につながっているし、スターバックスコーヒージャパンさんが行っている、ミッションマネジメントの一貫としても解釈できそうなことです。あくまで仮説ですが、僕は、そんなことを考えていました。
なぜなら、世界には、広く見渡しても、「ミーティングの前に、コーヒーのことについて従業員同士が語る組織」は、そう多いわけではありません。
ということは、「コーヒーについて語る」という「特異性のある日常的実践」が、すなわち、「それを行う我が組織(ウチ)」と「それを行わない外部(ソト)」の「境界」を常に構築しつづけているとも解釈できます。
「組織の境界」、すなわち「ウチ」と「ソト」の「界面」を強化することは「ウチに作動する意味空間」を外部から峻別することにつながるでしょう。もし仮に「組織文化」を、「組織や従業員内部に存在する意味・言説空間」と考えるのであるならば、そういう地道な日常的実践の蓄積こそが、組織文化の形成に役立っているのだろうな、と感じていました。
また、常に原点に立ち戻る、という意味もあるのかもしれませんね。自分たちの強みは、「この一杯のコーヒーなのだ」と。ミッションマネジメントにとって大切なことは、モティベーションや一体感の醸成という機能もそうなのですが、日々変化していく社会・競争環境の中で、拠り所にするものを決める、ということのようにも思います。ミーティングの前の一杯のコーヒーは、それを可能にしてくれるのかもしれません。
もちろん、これは僕の想像の域を超えない、いわば「妄想」です。「コーヒーについて語ること」に関して、上記のような解釈は不適当かもしれませんし、もしかすると、まったくの「的外れ」かもしれません。
しかし、「誰もがやろうとしないが、自分たちだけはやっている実践」を、「日常的」に繰り返していくことの果てには、「自分たちとは何か?」「ひいては、自分たちが所属している組織とは何か?」ということに関する問いがあぶり出されるような気がしていました。まことに興味深いことです。
最後に繰り返しになりますが、人事本部 人材開発部の皆様、都内3店舗の店長の皆様、久保田美紀さん、吉田卓也さん、小林あゆ美さん、植木一朗さん、黒木雅奈さん、向後亜紀さん、木山康司さんには、心より感謝をいたします。本当にありがとうございました。受講生の皆様も、お疲れさまでした。
そして人生は続く
投稿者 jun : 2013年6月10日 09:45