「教えること」や「学び」を語ることの再帰性:あなたは授業を工夫せい!という そういうあなたは、どうなのだ?
今さらながらなのですが「志ある若い世代に、教えることを教えることは面白いな」と思いました。
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「近い将来、大学の教壇にたちたいと願う大学院生に"教えることを教える"プログラム」、いわゆる東京大学フューチャーファカルティプログラムが、いよいよスタートしました。
東京大学フューチャーファカルティプログラム(東大.FD COM内)
http://www.todaifd.com/ffp/
4月11日には、本郷・弥生キャンパスで、本プログラムのプレワークショップが開催され、134名の大学院生の方々が参加し、参加証を手にしました。プレワークショップは、同僚の栗田佳代子さんと藤本夕衣さんらが、中心に準備・ファシリテーションを行いました。
(どうでもいいことかもしれませんが、個人的には栗田さん・藤本さん・デザイナーさんとおつくりになった、上記のFD書類パケットのデザインが気に入っております。クールなデザインですね。ダサいFDっていやですね)
3時間のプレワークショップで扱われた内容は、おおよそ、下記のとおりです。
1.現在の高等教育が置かれている状況の理解
2.現在の博士就職市場の動向と教育力
3.若い世代に「教えることを教えること」の意味
4.研究と教育の両立
5.アクティブラーニングとMooc
プレワークショップは、いわゆる「授業のオリエンテーション」です。限られた3時間で、このプログラムが存在する意義、現在の高等教育のマクロな理解を果たしつつ、この授業の雰囲気を把握していただくことが、目的になります。ご登壇いただきました、吉見先生、山内先生、愛媛大学・小林直人先生には、この場を借りて、心より御礼申し上げます。
主に2「現在の博士就職市場の動向と教育力」については、中原も登壇させていただき、現在の採用の動向を、教育力にからめてお伝えしました。
研究と教育というと、主に大学教員の採用は前者、研究業績を見ることが過去にも現在にも「主軸」だとは思いますが、シラバス・教案の提出、模擬授業、講演実施など、教育の力量をいかに事前面接段階に推定するかも、少しずつ広がっている動きであることをお話しました。
大学教育の質保証の議論、テニュアトラック制度の試験的導入など、大学教育環境は激変する状況にありますが、今後、どういう方向に向かい、どのように対処するべきか、個人的な推測を述べさせていただきました。
お話の中では、何度か、学生同士、対話をしてもらう機会を設けました。短い時間ではありましたが、様々な研究科から集まってきた方々のあいだで、非常に興味深い対話が生まれているような気がしました。時間は限られていたので難しいのですが、個人的には、できれば会場全体で意見を共有する時間があったらよかったな、思いました。ここは強い反省のポイントです。
けだし、FDのプログラムとは、「強い再帰性」の中にあります。
あなたは、教えることを工夫せい、という
あなたは、授業にコミュニケーションを取り入れろ、という
そういう、あなたはどうなのだ?
あなたの授業は工夫されているのか?
あなたの授業にコミュニケーションはあるのか?
私たちがFDの受講者に放ったメッセージは、ブーメランのように、私たち自身にかえってくるのです。プログラムのキックオフをひかえて、関係者一同、身を引き締めているところです。
なお、会の運営に関しましては、参加者アンケートなどを拝見する限り、おおむね好評をいただいたとも思いますが、建設的な改善へのご意見もいただきました。
今後、それらのご意見をふまえ、さらによいものをつくっていきたいと考えています。わたしたちは、それらのご意見には真正面から向き合います。
(人生いろいろ、FDもいろいろ。多種多様なものがあってもよいとは思いますが、もし仮に授業のやり方を工夫せよ、というFDのプログラム自体の運営や学習内容が工夫されたものでなかったとしたら、それは自己矛盾です。いかなる理由があれ、FDの担当者のプレゼンやファシリテーションが工夫されていなかったら、その説得力は限られたものになるでしょう。わたしはFDの専門家ではないので、よく実態はわかりません。が、東大フューチャーファカルティプログラムの関係者のひとりとしては、そのクオリティ維持には強い関心をもっています)
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東京大学フューチャーファカルティプログラムは、受講希望者多数のため、セレクションを行わざるをえない結果になりました。大変心苦しいのですが、いくつかの基準をもうけさせていただき、セレクションを行い、2つのキャンパスで4月18日からスタートします。中心になるのは、栗田佳代子さんと藤本夕衣さんです。
現在、プログラムには既にウェイティングリストが発生している状況ですが、今後、プログラムを安定運用させていきながら、どのようになるべく多くの方々に受講して頂くか、智慧をしぼっていきたいと考えています。
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冒頭に述べましたが、個人的には、本プログラムに関わらせて頂いて、「志ある若い世代に、教えることを教えることは面白いな」と思いました。しかし、正確にいうと、興味深いのは「教えることを教えること」そのことにあるのではないのかもしれません。
むしろ「教えることを教えることで、志ある若い世代のキャリア形成を応援すること」に興味関心を持っているということなのかもしれませんね。志と熱意のある若い研究者の方々で、「教えること」のノウハウをもった方が増えていけば、長い時間をかけて、現場も、少しずつ変わるんじゃないだろうか、と思っています。
僕自身、人並み以上には、講演・授業・プレゼンテーション・ワークショップを行ってきた方だと思います。その中では、たくさんの失敗もしてきました。数え切れないほどの苦い経験もしてきました。
まだ若い頃の僕が学習者の方々にご迷惑をおかけしたことは、今でも悔やまれますが、そのたびごとに、僕は、「教えること」や「プレゼン」が上手くなりたい、という思いをもってきました。他人のプレゼンテーション、話し方をビデオ視聴し、マネし、何度も失敗しながら、今のスタイルに至りました。
まだまだ発展途上で恐縮なのですが、僕自身が、これまで「教える中」で学んできたことを、限られた登壇機会にはなるものの、そこで得た「実践知」を、志ある若い世代に、お伝えしたいと願っています。
東大 × 学び × 革新
これから、大学の教壇にたつ、大学院生へ
東京大学 フューチャーファカルティプログラム、始動!
東京大学フューチャーファカルティプログラム(東大.FD COM内)
http://www.todaifd.com/ffp/
そして人生はつづく
投稿者 jun : 2013年4月16日 06:10