学びの四面体モデル:「他人に教える前」に考えておきたい4つの要素
「他人に何かを教えなきゃならなくなったんだけど、どのように風に、他人を教えたらよいのか、さっぱりわからない。まず最初に考えるための、きっかけが欲しい」
こういう悩みをお持ちの方、いらっしゃるかもしれませんね。
例えば、ある日突然、上司に呼ばれてね。
ちょっと社内で新人に講師をしてくれないか?
ちょっと社外で顧客を相手にセミナーをしてくれないか?
とかね(笑)。
そういうのは突然やってくるんだ、ふってわいたように。
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もしそういう方がいらっしゃるのだとしたら、少しだけ参考になるモデルがあります(Brasnford et al 2005, Darling-Hammond et al 2009)。
いわゆる「学びの四面体モデル」と呼ばれているモデルで、「教えるときの戦略」をたてるときに、ちょっぴり使えるものです。「答え」を出してくれるわけではありません。「考えるヒント」を提供してくれるものです。
四面体・・・確か、こんなんだったな。
ごめんなさい、うまくかけません、四面体に見えますか?(泣)。
このモデルが含意することは、要するに「学びのあり方≒教えのあり方」というのは、主に、「4つの要素」で、ある程度は、決まってしまいますよ。
だから、教えることの戦略をたてるときには、この4つを考えてみて下さいねー、ということですね。
もちろん、細かいことをいえば、このほかにいろいろ原則はありますよ。でも「20面体?」とかつくっても、誰も使えないでしょ。ていうか、僕、書けないよ。というわけで、特に重要なのは4つということですね。
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ストラテジーをたてるときに考慮にいれるべきひとつめの要素は、1)Nature of Content(学ぶべき内容の性質)です。これはそのものズバリ。どんな内容を学ぶのかですね。それはどのような性質の知識なのか。難しいのか、優しいのか。構造化されているのか、そうでないのか。
テキストなのか、それとも音声なのか、それは数字なのか、図なのか - こうしたModalityの問題も、この中に入ります。
ふたつめは2)Criterial Taskです。
これは少しややこしい。
要するに、「学んだことがどのように評価されるのか?」ということです。
たとえば、「あなたが教えたあとで、学習者が、その内容を記憶できていればOKなのか(単純なテストをするのか)」、それとも、「何かの行動を生み出したり、問題解決ができなければならないのか(実際に何かを実演させるのか)」ということですね。つまり「学ぶゴール」を先に知っておく必要があるということです。
みっつめは、3)Activity of Teaching and Learning。
これはいわゆる教え方ですね。レクチャー形式なのか、シミュレーションを行うのか、ワークショップスタイルにするのかなどなど。いろんなヴァリエーションをレパートリーとして持っていた方が、やはり有利でしょう。
最後は4)Charasterics of the Learner(学習者の性質)です。学習者の性質といっても、「あいつはイケメンだ」とか「なんか、あの人、優しそう」とか、いろいろ腐るほどあると思うのですが、特に重要なのは、どんな先行知識(すでにもっている経験や知識)をもっているか、です。このことをしっかり把握することが、とても大切です。
こう言ってしまうと身も蓋もないですが、
どんな人に対しても、
どんな状況でも使える、
唯一万能な「教え方」はない!
ということですね。
このモデルが(密かに)たぶん言いたいことは、そういうことで、4つの要素を考慮にいれて、ストラテジーをつくらなきゃならないよね、ということですね。
個人的に、特に重要で見落としがちと思うのは、2)と4)だと思います。
つまり、
「教えたあとで、結局、どういう風になっていて欲しいのか」
「教えた内容は、どのように評価されるのか」
そして、
「そもそも学習者は、何を知っていて、何を知らない人なのか?」「学習者は、これまで、関連する経験をしたことがあるのか、ないのか」
ですね。これらを見落としてしまうと、意外に「痛いこと」が多いような気がします。
というわけで、「結局、自分で考えなければならない」のですが(笑)、でも、最初の思考のとっかかりには使えるモデルだなぁ、と思います。
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■2012/08/03 Twitter
- 10:11 「教えることの大半は、"聴くこと"にあるのです」(Deborah=Meier)
- 09:55 (3)学びの質向上のためには、教える側の「絶えざる資質向上の努力」が必要なことを改めて再認識。やっぱりそうだよね。学校だけじゃないと思います>http://t.co/AWWvHNgd
- 09:55 (2)貧困層・低所得者の集まる地域に、資格をもたない・トレーニングを受けてない教員が多数採用されていることが、教育格差・不平等の再生産を生み出す>http://t.co/QDY9Ix2O
- 09:55 (1)スタンフォード大・Darling-Hammond(ダーリンハモンド)さんの本が面白かった。学力低迷を続けるアメリカの教育を立て直すためには、教員の資質向上が必要なことを実証データを示して解説>http://t.co/EZWu44x9
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■2012/08/02 Twitter
- 06:19 分散するメンバーをいかにネットワークするか>「場所を越えて社員同士、社員と会社がつながる」エンジニア派遣のVSN、全社的にChatterを活用(IT PRO): http://t.co/miIHGNdC
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■2012/08/01 Twitter
- 22:21 「現場」とは何か、その5つの性質:1)現在進行形、2)予測不可能性、3)即興性、4)具体性、5)複雑性(小田 2010)
- 08:11 10年次研修、愉しんでいただけたようで嬉しいことです。お疲れ様でした!http://t.co/UyyNBp6R RT @Natsunako5: 今年度、/ 10年次研修に参加しています。先日は楽し~い演習をありがとうございました!
- 06:36 青山学院大学大学院・社会情報学研究科 HIコース、中原の集中講義を今年受講なさる皆さんは、文献の購読は進んでいらっしゃるだろうか。あと1ヶ月くらいですね。愉しみにしています。
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■2012/07/31 Twitter
- 18:23 ほほー>「人が作ったゲームで遊ぶよりも、自分で何かを作って公開するものづくりのほうが楽しい」:アプリ開発私塾に小学生(日経) http://t.co/pVvIG0E0
- 14:52 ぜひお越し下さい!RT @kabu_rie ど真ん中!行きたい! RT 「イノベーションを生み出す×40代-50代ミドルの再挑戦・働きがい」:9月21日(金)経営学習研究所イベント(中原がプロデュース)開催! http://t.co/WXQF5TuX" [in reply to kabu_rie]
- 14:41 朝から会議漬け。さっき、ようやく便所に行けたよ(泣)。
- 09:52 アブダクション=仮説的飛躍(Abductive leap):我々が直接観察したものとは違う種類の何ものか、そして、我々にとってしばしば直接に観察したものとは違う種類の何ものかを仮定する(米盛裕二「アブダクション」)
- 09:52 「帰納は観察データに基づいて一般化を行う推論であり、これに対し、アブダクションとは観察データを説明するための仮説を形成する推論」(米盛裕二「アブダクション - 仮説と発見」)
- 09:51 ブログ更新。「イノベーションを生み出す×40代-50代ミドルの再挑戦・再学習・働きがい」:9月21日(金)午後6時 経営学習研究所ラーニングイベント(中原がプロデュースします)を開催します! http://t.co/WXQF5TuX
- 08:34 暑い!保育園に送ってきただけで、汗だくですな。もうすでに、ひとっ風呂あびたいわ。
- 06:59 「日本=フジヤマ」というステレオタイプをもつ外国の方がいまだいらっしゃるのだとしたら、私たちのアラブにどんなイメージをもっているのか? メディアによって増幅されたアラブのイメージを問う。面白かったです>森美・アラブエキスプレス展 http://t.co/bHzBuxtk
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■2012/07/30 Twitter
- 08:06 ブログ更新。教員の10年次研修を終えて:サーベイフィードバック、表現、そして対話を中核にして: http://t.co/AHo1Llka
- 06:58 自己メモ>日本の大学・大学院などへの留学生は2010年に約11万人と00年比で倍増。しかし国内で就職したのは約6600人、米リーマン・ショック前の07年をピークに3割減少(日経)
投稿者 jun : 2012年8月 4日 23:11