プロフェッショナルの目は「何」を見ているのか?:「見ること」の難しさと奥深さ

 一般に、「見る」ということは、「視覚」にさえ異常がないのであれば、誰にでも出来ることであると思われがちです。「見るべき対象」が網膜に投影されていれば、それは、自ずから「見ている」ことになるんだろうと。

 しかし、最近の僕は、ひそかに、この「見る」が気になって仕方がありません。一般に、簡単だと思われる「見る」が、そうそう容易なことではないことに知的好奇心をもっています。

 特に、プロフェッショナルとよばれる人の「見る」が、いかにして可能になるのかが、興味深くて仕方がないのです。そして、この「目」をどのようにして育成すればよいのか、ヒマを見つけては、うんうんと考えています。全くのリサーチプランも、〆切もない、自分だけの研究関心です。こういうときは、幸せかもしれません。

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 たとえば、先日、ある看護師さんとお話をしました。
 その看護師さんによると、新人看護師と熟達者の看護師さんでもっとも異なるのは、「患者の様子を見る」ということなのだ、と。

 曰く、初心者の看護師が注視するのは、自分の処置のプロセスと、その結果。つまり、自分の活動の成否にしか、認知的資源を配分できない、ということですね。

 それに対して、熟達者になると、処置前の患者の様子を、何も言わず「見る」。さらには患者のベッドのまわりに、変わった様子がないかを「見る」。患者の背後に、どのような家族模様、人間関係がありそうかを「見る」。

 看護教育について僕は全くの門外漢ですが、熟達に応じて「見る」対象や、領域や、時間軸が広がってくることがわかります。

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 似たようなことを、ある熟練のファシリテータの方が言っておられました。この方は、企業内部で組織変革などのお手伝いをなさっている方です。

 曰く、

 ファシリテータをはじめた頃は、役員会での発言についていくだけで精一杯でした。つまり、最初は「耳」しか使えない。「耳」で聞いて、適切な問いをかえす。

 しかし、熟練したファシリテータは「目」が武器になるのです。経験を積み重ねてくると、「会議の風土が見えて」くるのです。会議で、誰が、どのように発言し、それに対して、誰が、どのような反応をするかで、会社の中のパワーバランスが「見えて」くるのです。

(直接はあまり関係ないですけど、ラーニングイベントを何度も学生さんと一緒にコラボしてつくっていて、いつも思うことがあります。一人前になってイベントの中核的人物になった学生さんは、そうでない学生さんと、見ているものが違います。それは「学習者(参加者)の全体の動き」です。俯瞰的な目線で、多くの学習者が、今何をしていて、どのように動くのか、を予測して、自ら動くことができます。そうでない学生さんは、今目の前にある与えられた仕事と、そこにいる学習者しか見られないものです。このことは、わりとよく実感します。僕の口癖は「学習者の流れを見なさい」「学習者の動線を予測しなさい」です。)

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「見ること」について、先日伺った鍼灸師の先生は、こうもいいます。「見る」ためには制約がいる、とも。

 鍼灸師が、患者を「見る」ためには、枠がなくてはなりません。治療方針が、まずは決まっている。それを「枠」として、ひとつ、鍼を入れる。鍼をいれるときの感覚、それがすっと入るのか、はねっかえるのか、そのとき患者さんの身体は、どんな動きをするのかを「見ます」。それによって、次の鍼を入れる場所を決める場合もあります。
(中略)
「方針」がなければ「見る」ことはできません。「方針」がしっかりあって、はじめて「見ること」ができる。見ることで「枠」をそのつど、そのつど、修正するのです。

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 かつて、野中郁次郎先生のお弟子さんである妹尾大先生から、こんなことを伺ったことがあります。野中先生の口癖にこんな言葉があったそうですね。

 「川」を見るのか?
 「流れる水」として見るのか?
 
 「太陽」を見るのか? 
 それとも「燃え続ける火」を見るのか?

 同じものを見ていても、「川」を感じる人と「流れる水」を感じる人がいます。「太陽」を見ている人もいれば、そこに「燃え続ける火」を見る人もいる。網膜にうつっているのは、同じ対象であるはずなのに、「見ることができる人」と、そうでない人がいる。

 興味深いですね。
「見ること」はマニアックな問いですが、なかなか面白いと思いませんか。僕は好きなんです、ひそかに、こういうの。

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 今日、あなたの「目」には何がうつっていますか?

 あなたは、あなたの目の前の顧客・部下・学習者の
「何」を見ていますか?

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■2012/07/18 Twitter

  • 10:37  教育改革に関する学内勉強会。学期制・サービスラーニング。
  • 10:37  全体像がオーバービューできてとても勉強になりました>RT @clione 母校筑波大大学院カウンセリング専攻発の一冊です RT 各世代にわたるキャリア支援のあり方>「生涯発達の中のカウンセリング」http://t.co/w3NHzOWz  [in reply to clione]
  • 10:14  とても勉強になりました。学生時代から、中年期・リタイア後など、各世代にわたるキャリア支援のあり方>岡田昌毅・小玉正博 (編) 生涯発達の中のカウンセリング〈3〉個人と組織が成長するカウンセリング. サイエンス社: http://t.co/w3NHzOWz
  • 09:14  中途採用を重視する企業が増加、環境変化に対応し即戦力を採用。新卒採用重視1.2%減少、中途採用重視11.8%増加。労働政策研究・研修機構調べ(日本人材ニュース): http://t.co/CSz2ldlY
  • 09:12  蛇の健寿司さんより「新子が入荷しました」との便りが届く。もうそんな季節か。そろそろ行かねば。 http://t.co/rHsq204Y
  • 07:58  最近、飲み過ぎである。 http://t.co/C9inLzHJ
  • 07:56  経営学習研究所・アドミニストレーションスタッフには合計8名の方々にご応募いただきました。ありがとうございました。これより書類選考、面接を行わせて頂く予定です: http://t.co/sGS5I6qc
  • 06:55  3つのプロジェクトのプレゼンが同じ時期に重なるとは。負荷を読み間違った(とほほ)。地獄、ひたすらつくる。
  • 05:12  TAKUZO、二日連続で、深夜にノボせて鼻血。クーラー消すと、確かに暑いですね。
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■2012/07/17 Twitter

  • 11:47  ブログ更新。街に出よう、メディアを創ろう : 東京大学教養学部後期授業「メディア創造ワークショップ」を今年も開講します! :自分の足で取材し、自分の手で編集をして、電子書籍をつくる授業です。受講をお待ちしています: http://t.co/ehVHtJk0
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■2012/07/16 Twitter

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■2012/07/15 Twitter

  • 18:32  お魚を買いにいく。今日買ったのは、ブルーレインボー、ハーフオレンジレインボー、プラチナエンゼル。 http://t.co/iBJ597zG
  • 15:37  興味深い仕事スタイル>RT @mitate1123: 朝日放送「ヒットの泉」スノーピーク紹介。テントのシェアは国内トップのアウトドアメーカー。本社は新潟の山の中。商品開発用キャンプ場を併設し、社員はキャンプをしながら働いている。http://t.co/2FzrJZA4
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  • 08:48  【速報】9/21「現場にくりだしイノベーションを生み出せ!:ミドルの活性化・イノベーションの創造」(仮題)と題して、皆さんで対話する会を開きます。もしよろしければ、スケジュール帳にメモいただけますと幸いです!共催:経営学習研究所SELラボ、コクヨWORKSIGHT
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■2012/07/14 Twitter

  • 21:49  「アド街」いいですなぁ。富良野、十勝岳、空知川。
  • 13:48  実験開始。何とか無事スタート。見舘先生、望月先生、大学院生の皆さん、ありがとうございました。
  • 07:35  思わず買ってしまった。BRUTUS、キャンプ特集。こんなオシャレキャンプが、したい。 http://t.co/Uz4HWmqP
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投稿者 jun : 2012年7月19日 08:51