「視覚優位社会」に改めて気づく : 伝えるために、何を残し、何を落とすか? : 松田高加子さんのワークショップに参加した!

 ワークショップを実践する人には、2種類の人がいます。

 自らワークショップは実践するが、他人のワークショップに参加するのは嫌いな人
 自らワークショップを実践し、しかも、他人のワークショップに参加することが好きな人

 です。

 僕に関していえば、明らかに「後者」です。僕自身に考える機会を与えてほしい、というか、ついつい安易にステレオタイプでモノを見てしまう僕を「揺さぶって」欲しい。そして願わくば、何らかの実践のヒントも欲しい。
 今日も、知り合いのRさん(ラーニングイノベーション論の卒業生、感謝!)が、あるワークショップを企画してくれたので、参加させて頂きました。

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 僕が今日参加させていただいたのは、映画に、視覚障碍者向けの映像ガイド(映画の音声解説)をつけるプロジェクトを推進なさっている、松田高加子さんのワークショップです。

松田高加子さん
http://www.facebook.com/takoisblu

 松田さんは、視覚障碍者の方々が「映画」を見られるように、映画のシーンでの俳優の動きや情景を「音声」で吹き込む活動をなさっている一方で、その活動の社会的意義を広めるべく、健常者を対象にワークショップを実践なさっています。

 映画の1シーン、何気ない映像を、いかに選ばれた言葉で、限られた時間のなか、視覚障碍者の方々がわかりやすいように音声で伝えるか。
 実際に映画を見ながら音声ガイドをつける作業をやってみると、これがどうして、奥が深く、なかなか面白かったです。
 近年では、テレビ局のW社など、松田さんのワークショップを新人研修に導入しているところもあるそうで、まことに興味深いことですね。ちなみに、実際の映像ガイドをつくるためには、100分の映画で100時間かかるそうです。

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 松田さんのワークショップに参加した感想として、僕は2つの感想をもちました。

 ひとつは「福祉のコンテキスト」からの感想です。

 あらためて感じたのは、いかに現代という社会が、「視覚優位社会」かということです。
 テレビのバラエティのテロップ、コンピュータのマウスとポインタ・・・健常者にとってわかりやすく表現されたものは、必ずしも視覚障碍者の方にとってわかりやすいものではないのです。世に言う「見える化」・・・それは必ずしも、健常者にとってはわかりやすいけれど、視覚障碍者の方々にとって必ずしも優しいものではない。

 ある人にとって「わかりやすいこと」が、別の人にとっては、通常の生活を営むための「バウンダリー」を構成していることに、あらためて気づかされました。恥ずかしながら、それは僕にとって考えたこともないことでした。

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 ふたつめの感想は「コミュニケーション」の観点です。

 限られた時間で、映画の情景を、限られた言葉で伝える。すなわち、映像ガイドをつける作業を実践してみて思ったことは、コミュニケーションにおいて「何を残し、何を残すか」が決定的に重要である、という、まぎれもない事実です。

 いかにミニマムに、しかし、それでいて必要なことを選び取るか?

 たとえ、映像には存在していたとしても、ストーリーに関係のないと思われるもの、あるいは既に俳優がセリフとして発話しているもの、またストーリーの構成上、この段階では言わないほうが映画を楽しめるものに関しては、敢えて、情報を落とす。松田さんによれば、そうしなければ、視覚障害者の方々には、なかなか情景がつたわらないのだといいます。

 畢竟、「伝える」ということは、そういうことなんだと僕は思います。 
 勇気をもって何を残し、後ろ髪引かれる思いで何を落とすか。
 そして、そこには潔さと勇気が必要です。
 くどいようですが、「伝える」とは、そういうことだ、と僕は感じます。

 松田さんのワークショップは、「福祉のコンテキスト」「コミュニケーションのコンテキスト」・・・さらにはこれ以上詳細を述べませんが「記憶のコンテキスト」「制作のコンテキスト」などなど、多種多様に解釈が可能で、非常に興味深いものでした。

 最後になりますが、僕をガンガンと揺さぶってくれた松田さん、そして会を企画してくださったRさんに心より感謝いたします。

 それにしても、僕は幸せなことですね。卒業生だった方々が、次々と面白いワークショップの企画をすすめてくださる。学びの場をデザインしてくださる。最近、ちょっとふさぎこんでいましたが、ここに働きがいや、やりがいを感じます。

 ありがとうございました!
 そして人生は続く。


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■2012/06/16 Twitter

  • 16:38  お疲れ様です!RT @tkanai1954 こちらは、組織学会に RT @nakaharajun 学会シンポジウム準備のため、東京工業大学へ。  [in reply to tkanai1954]
  • 12:20  美馬のゆり先生にお会いする。「デザインしているもの」のスケールが違う。とても刺激になった。教えてもらった本を早速注文。
  • 08:18  学会シンポジウム準備のため、東京工業大学へ。
  • 06:35  応募締め切らせていただきました。ありがとうございました>RT @makimuramaho たくさんのお申し込みをいただき、締め切りました!ありがとうございました! RT 7実践記録、物語、コミュニティ】に関する研究会を実施  [in reply to makimuramaho]
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■2012/06/15 Twitter

  • 23:39  東京学芸大 高尾研の学部生さんらと、一献。楽しかった。まことにユニーク、近い将来が愉しみですね。
  • 15:03  ブログ更新。学習空間って大事なの? : 「フツーの教室」でも智慧をしぼって「学びの空間」に仕立て上げる工夫!? : http://t.co/Uw5gSioW
  • 07:19  今回の研究会の空間プロデュースは牧村真帆さん(@makimuramaho)にご担当いただきます。さて、どんな空間がプロデュースされるでしょうか。こちらも、ぜひ、おたのしみに> Academic Hack公開研究会 7/6(金) http://t.co/Go7Xx2ak
  • 07:11  ブログ更新。7/6 (金)小西貴士さんをお招きして、【実践記録、物語、コミュニティ】に関する研究会を実施します。素敵な実践記録写真を見ながら、対話しませんか? 好評につき、残り20名まで追加募集させていただきます。 http://t.co/M2kGcKUh
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■2012/06/14 Twitter

  • 08:20  撮影する主体と非撮影者の関係や相互作用によって、どういう絵がとれるか、きっと変わりますね>RT @infoguild 撮る主体が変わることで、伝わる内容にバラエティが生まれそう RT 「情熱大陸」面白い企画>芸能人が撮る芸能人」: http://t.co/VnOTEf7R"  [in reply to infoguild]
  • 08:18  「明晰」がなぜ知者の敵であるか、もはや、我々にはあきらかである。/「明晰」とはひとつの「盲信」である。それは自分の現在もっている特定の説明体系の普遍性への「盲信」である。(真木悠介「気流のなる音」)
  • 07:19  「情熱大陸」面白い企画>芸能人が撮る芸能人 TBS系「情熱大陸」: http://t.co/VnOTEf7R
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■2012/06/13 Twitter

  • 22:03  S社人事のKさんが、東アジア某国に赴任なさるとのことで、送別会。Kさん、いってらっしゃいませ!企画なさったSさん、ありがとうございました。後ろ髪引かれる思いで、やむなく中座。
  • 17:36  NPO法人 Educe Technologies 総会に出席
  • 15:28  大学院授業「経営学習論」。「職場で仕事経験を通じて学ぶこと」は「パワフルな学習機会」ですが、たくさんの脆弱性も持ち合わせています。それを議論してみましょう。
  • 15:13  大学院授業「経営学習論」。Billet, S.著「Workplace participatory practice」。Workplace Learningの三類型、職場における「参加」の構造。
  • 10:46  興味深い概念>Revoicing(再声化介入)「再声化介入が概念理解の達成を促進する効果」 http://t.co/EWlG8Jjx
  • 10:16  大学院・中原ゼミ(@nakaharalab)。夏合宿のコンセプトが決まった。今年の夏合宿は「源流合宿」。ゼミメンバーが、自分の研究の中心的概念をひとつ選び、その「歴史的源流」をさぐります。「学び」「支援」「組織」など。#nakaharalab
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■2012/06/12 Twitter

  • 18:26  我妻さん、Web開設おめでとう!RT @YumiWagatsuma: Webつくった* yumiscope *といいます。http://t.co/SQWcg20J
  • 08:57  ブログ更新。これまで「日本人の海外勤務」を支えてきた3つの要因:学習・適応能力、強力な人事権、配偶者の理解。海外勤務に対する「仕組み化」について http://t.co/faDZXjUI
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■2012/06/11 Twitter

  • 21:56  共感>RT @hiroki_komazaki 更に、歴史上一度として、「親だけで子どもを育てた」時代など存在しません。近代化以前はムラや地縁共同体の中に病児保育機能が埋め込まれたいた。戦後も近くに住む近親者によって病児保育。それが都市化と核家族化で失われたのです  [in reply to Hiroki_Komazaki]
  • 21:54  全く共感ですね> RT @hiroki_komazaki 子どもが熱を出したら、親は看病してあげたいので、休める職場が良い。それはその通りでしょう。けれど、同時に親が看病できない時も、信頼できる保育のプロが側にいて、子どもと家族を支えるセーフティーネットは、あるべきなのです。  [in reply to Hiroki_Komazaki]
  • 21:52  夕方に行った「海外勤務」に関する連投ツイートですが、今、Facebookで議論が盛り上がっています。
  • 21:03  RT @shigejam: MITの心理学者シェリー・タークル曰く、Facebookは子供たちには「重すぎる」 http://t.co/1wP8fFVY
  • 18:06  (6)でも、海外勤務者のヒアリングをしていると、皆さん、会社からの支援もあまりなく、ものすごく苦労なさっていることに気がつきます。「必要なのは海外で活躍する人材」と声高に叫ぶのなら、やるべきことが多々あるような気もします。というわけで、海外勤務に関する連続ツイートでした。
  • 18:05  (5)日本企業の場合、海外勤務に関しては、「日本人の高度で優秀な適応・学習能力」と、「会社が発動する強力な人事権への諦め」に、これまで「甘えてきた側面」もないわけではないような気がします。
  • 18:05  (4)だからこそ、海外勤務時における様々な人事施策が、米国企業の場合、発達しています。1990年代以降、急速に米国企業の「海外勤務時の人事施策」は発達しました。それによって、状態がかなり改善されており、むしろ、日本企業も安穏としてはいられない状況です。
  • 18:05  (3)米国の多国籍企業のうち、海外勤務の失敗率(適応失敗・成果未達成)が30%を下回る企業は、全体の7%しかないとする研究もあります。場合によっては、業績を残せない海外勤務者が70%を上回る企業もあるといいます。
  • 18:05  (2)米国マネジャーというと、一見、インターナショナルな感じがするが、イメージは異なりますね。むしろ、米国は、努力して、ノンネィティブが「(米国に)適応してくれる国」なんですよね。米国人が、努力して、他の国に適応する、ということの方が珍しいのかも。
  • 18:05  (1)海外赴任に関する先行研究を読み込んでみると、興味深いことがわかります。海外赴任する日本人マネジャーと米国人マネジャー、どちらが「適応失敗・成果未達成」する確率が高いか、というと「後者の米国人」だとする研究が圧倒的に多いです。
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投稿者 jun : 2012年6月16日 23:02