金井壽宏・楠見孝(編著)「実践知 - エキスパートの知性」を読んだ:エキスパートの熟達に関する総合研究書
金井壽宏先生、楠見孝先生らが編集なさった「実践知 - エキスパートの知性」を読みました。
本書は熟達理論を下敷きにしながら、「組織の中で働くエキスパート」たる「営業職」「管理職」「IT技術者」、そして対人専門職である「教師」「看護師」、さらにはデザイナー、アーティストらの熟達の問題を論じている研究書です。
本書のテーマである「実践知(Practical intelligence)」とは、熟達者が持つような実践に関する知性であり、それは学校知(Academic intelligence)と対照づけられて考えられる、といいます。
「学校知」が、学業にかかわる知性であり、単一の標準化テストで測定されうる知性だとするならば、「実践知」は、ハワード・ガードナーが述べるところの「多重知能」であり、個人が経験や状況に即して、さらには、省察(reflection)を通して獲得されるものである、と考えられます。
本書は、それぞれの職域・領域における熟達・実践知の獲得のプロセスや仕組みを論じています。熟達や実践知に関する研究手法も第一部において論じられておりますので、これからこの領域に関して研究を進めたいと願う方にとっても、よい書籍となるのではないでしょうか。
本書は、経営学・教育学・心理学等の、多様なディシプリンの研究者がコラボレーションしてつくられた書籍であり、また参加なさっている世代が非常に多様なことにも特徴があります。
今後、多種多様なアカデミックバックグラウンドをお持ちの方々で、様々な世代の方々が、この領域に新規参入して、言説のアリーナを構成していくことができたら、素晴らしい事のように思います。
だってさ「新規参入がない領域」ってのは、いつか枯れちゃうんだよ。
世の中には、大変たくさんの職業があります。今後、それぞれの領域に関する熟達プロセスが明らかになっていくことが、とても楽しみですね。
最後になりますが、本書をご献本いただきました金井壽宏先生、楠見孝先生、松尾睦先生、秋田喜代美先生、岡田猛先生、この場を借りて献本御礼いたします。ありがとうございました。
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「実践知 - エキスパートの知性」もくじ
第I部 実践知--獲得と継承のしくみ
第1章 実践知と熟達者とは
第2章 実践知の獲得――熟達化のメカニズム
第3章 実践知の組織的継承とリーダーシップ
第II部 エキスパートの仕事場から
第4章 組織の中で働くエキスパート
Expert4-1 営業職
Expert4-2 管理職
Expert4-3 IT技術者
第5章 人を相手とする専門職
Expert5-1 教 師
Expert5-2 看護師
第6章 アートに関わるエキスパート
Expert6-1 デザイナー
Expert6-2 芸舞妓
Expert6-3 芸術家
終 章 熟達化領域の実践知を見つけ活かすために
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■2012/04/11 Twitter
- 17:22 面白そうな本、みっけ。チェック>開本浩矢・和多田理恵著「クリエイティビティ・マネジメント―創造性研究とその系譜」: http://t.co/db75OcrO
- 09:04 ブログ更新。「自分のメディア」を持ち、「自分の場」をもつことの意味: http://t.co/1027CpfR
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投稿者 jun : 2012年4月11日 07:08