"人材"を専門にする大学院を、学生さんが大学に提案する!?

 先日、ある学部生さんたち数名が、研究室を訪れました。

 曰く、

「わたしたちは、"人材"に関して教育・研究を行う、全く新しい大学院が必要だと思っています。その主張をまとめて、大学に提案をしたいと思います。その資料を充実させるために、ヒアリングに協力してください」

 ということでした。
 この話は、本学(東京大学)の話ではなく、某私立大学(有名私大)の話でありました。しかし、本学であろうとなかろうと、学生さんが「志」をもって動かれるのはよいことだな、と思いましたし、また、学生さんたちの提案の詳細をお聞きしたかったこともあり、インタビューをお引き受けすることにしました。学生さんたちは、はじめてお会いする方たちでしたが、非常に熱心な方々でした。

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 インタビューは、様々なことがらに話が及びました。

 教育学の中でも、「人材」に関する研究は、存在しないわけではないこと。たとえば、教師の職能発達をとらえる教師教育学はメジャーな研究領域な存在領域であること。成人教育学、教育社会学の一部でも、決してメジャーではないけれど、その種の研究は存在すること。
 経営学の中でも、組織行動学や、人的資源開発論、人的資源経営論で、その種の研究が存在すること・・・などをお話ししました。

 そして、「新しい大学院」をつくるのだとしたら、それがどのような「オリジナリティ」をもつのか、どんな「カリキュラム」をもって、どのような「専門家」を輩出しようとしているのか、などを、1時間という限られた間でしたが、議論しました。

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 議論を終えて、そのプロセスの中ででてきた、「人材科学研究科」とか「人材発達研究科」という言葉が、妙に自分の頭に残っています。

 企業・組織・学校の卓越性を確保する、という意味では、「人」という経営資源を、どのように活用し、価値を向上させるのか、という「経営の観点」、別の言葉でいいあらわすならば「資源管理」の視点がどうしても必要になります。ここには、経営学な研究が必要でしょう。

 一方で、「人」は、それ自体、「主体性」をもち、「発達」する存在です。人は、どのように働き、学び、そして発達していくのか、という視点が、どうしても欠かせません。ここには、人のもつ学習、発達、知識創造、クリエィティビティに関する研究が必要でしょう。

「人材としての人」と「発達する存在としての人」に対するサイエンスと、それに裏打ちされた大学院教育は、確かに、必要なのかもしれません。
 あまたある講義科目の中の、ほんのひとつの科目として、「人材についての講義」がある大学院というのではなく、「真正面から人材」をとらえ、人材に関する研究の知見を体系的に学ぶことのできる大学院です。学問領域としては、経営学、社会学、人類学、経済学、心理学、教育学・・・sまざまあってよいのだと思います。「人材」というワンワードをはずさなければ。
 海外には、学科レベルで、そのような大学院が存在しており、独自の修士号をだしているようです。

 よくよく考えてみると、「新しいタイプの大学院が必要だ」という学生さんたちの主張は、「なるほど、一理あるな」と思いました。
 しかし、僕自身には、それまで、全くそのような「発想」がありませんでした。「そんなもんだよな」と思っていました。そのことを、僕はどこかで「残念」に思いました。

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 学生さんたちが自ら、時代のニーズにあった「大学院」を、大学に提案する。いやはや、すごい時代になったものです。
 実現までの道のりには、数々の試練が存在するとは思いますが、しかし、「夢」や「志」をもつことは大変重要なことだと思います。
 たかが「夢」、たかが「志」かもしれません。
 しかし、「夢」や「志」しか現実になるものはありません。

 学生さんたちの、今回のプレゼンテーションが、社会的意義が高く、かつ、面白いものになることを願っています。

 Have fun!

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■2010年6月17日 中原のTwitterタイムライン

  • 22:29  退屈かぁ RT @hatebu: 僕がiPadを返品した理由:Why I Returned My iPad - HBR (94 users) http://bit.ly/caxyUB
  • 22:27  大学の予算カット対してビジネスリーダーらが懸念 RT Business leaders have urged the government to be "cautious" over university funding cuts. http://bit.ly/9MevUW
  • 21:40  そうも言えるかと。これに関連し、「フラットな学び」と「エッジな学び」という雑文を書いたことがあります(http://ow.ly/1ZIhR )。僕の興味は後者です。FYI! RT @eagles414: つまり、実験の場でもありますね。 RT 教育現場は、時代の最先端を走る!?
  • 21:19  月並みですが、人によります。僕自身は、教育や学習の現場は、時代の最先端を走るべきだと思います。だから、僕は疾走します。一方リスクを勘案し、僕を一時停止をしてくれる人がいて、また、組織だと思います。RT @koichi_n: その先生のお言葉は今でも変わらないか?
  • 21:09  RT @kpirai: まだまだ企業の人材育成現場には残存していますよね。意識を変えていただくのが我らの使命です。RT 中略。"教育現場は、世の中の一番最後をついていくものだ。新しいものはいらない"。
  • 21:09  RT @keihirai: 大学で教育的に新しいことを始めるのがいかに大変かを痛感してます。RT 僕がまだ学生の頃、新しい企画を、学校に提案したことがあった。その時、ある先生が残した言葉が忘れられない。"中原、教育現場は、世の中の一番最後をついていくものだ。新しいものはいらない"
  • 21:09  RT @kurabe_s: 新たな挑戦が不要な世界なんてない。RT ある先生が残した言葉が忘れられない。"中原、教育現場は、世の中の一番最後をついていくものだ。新しいものはいらない"。僕が今、教育現場にいる理由の奥深い所には、この言葉に対する挑戦がある。先生には深く感謝している。
  • 21:08  RT @masakidotcom: 教育ほど,古きを重んじ新しきを追及する世界はありませんよね。手間暇はかかりますが,魅力的な世界です。RT @kurabe_s: 新たな挑戦が不要な世界なんてない。RT @nakaharajun: ある先生が残した言葉が忘れられない。
  • 19:32  RT @cinematoday 上映中止相次ぐ『ザ・コーヴ』、ニコニコ動画で全編無料放送決定!大討論会も開催! http://ctdy.jp/r1/N0025048
  • 19:25  僕がまだ学生の頃、新しい企画を、学校に提案したことがあった。その時、ある先生が残した言葉が忘れられない。"中原、教育現場は、世の中の一番最後をついていくものだ。新しいものはいらない"。僕が今、教育現場にいる理由の奥深い所には、この言葉に対する挑戦がある。先生には深く感謝している。
  • 19:15  ほほー、お知らせ感謝です。RT @TokoWada: 中原先生、こんにちは。HRDジャーナリストの和田です。今「ブラックジャックによろしく」の佐藤秀峰さんが、ペン入れ実況中です。みんな盛り上がってます。http://bit.ly/aHMIVR
  • 16:44  RT @tatthiy [書評] コミュニティを科学する! - コミュニティのグループ・ダイナミックス(杉万俊夫) http://bit.ly/aotjvj
  • 16:43  ビデオ編集もクラウドの時代 RT @Midogonpapa: YouTubeがブラウザ上のビデオエディタを提供-さっそく開発者にインタビュー: YouTubeがブラウザ上のビデオエディタを提供-http://bit.ly/9VNpkF
  • 13:42  「ディベート」と「ダイアログ」の違い RT @Coach_Tsunochan: 今朝の朝日新聞で哲学者の鷲田清一先生が「ディベート」と「ダイアログ」の違いを語っている。ディベートでは、自分の考えが変わったら負け。ダイアログでは、自分の考えが変わっていかなければそこに意味がない。
  • 09:58  谷口先生、ありがとうございます。どんなブツができるかは、わからないのですが(笑)、楽しんでみようと思います。RT @tomotaniguchi: 新しいことに身をもって挑戦できる場で学生が経験することは一生の宝になると思います。http://ow.ly/1Zvzx
  • 09:22  すいません、、あまりに心惹かれたので、つい(笑)。RT @yukatan: わ、わたしの絵が!(恥) ありがとうございますRT 電子雑誌「AiR」の書評です。面白く読むことができました。(略)#AirRogue http://ow.ly/1Zvzx
  • 08:53  RT @wamusu: こちらの言葉にも共感しました。「なにかを否定するためではなく新しい可能性を肯定するために何かをやりたい」 RT ブログ更新。電子雑誌「AiR」の書評です「時代の扉を自分たちで開けたい」という言葉に共感。http://ow.ly/1Zvzx
  • 07:59  RT @ofune: 電子雑誌「Air」のブログ(http://bit.ly/bLVy3w
  • 07:30  ブログ更新。電子雑誌「AiR」の書評です。個性的な著者らが、それぞれ、思い思いのことを書いており、それぞれ面白く読むことができました。「時代の扉を自分たちで開けたい」という言葉に共感。@AiRlogue @yukatan #AirRogue http://ow.ly/1Zvzx
  • 06:35  「もはや出版社でなくても本が出せる。書き手が集まり、面白いことができれば」作家や漫画家など個人が集まって企画・執筆・編集したiPhone/iPad向けオリジナル電子書籍「AiR」(エア)の先行配信スタート: http://ow.ly/1Zup7
  • 06:33  「机上のコンテンツ」から、「チームでの挑戦」へ:「リーダーシップ開発」のよりよいあり方 http://ow.ly/1Zum3
  • 06:27  NHK放送文化研究所の調査によると、「テレビは録画して、早送りなどをしながら、見たいところだけみる」見方がさらに浸透。デジタル録画機器の普及により。毎日テレビを見る人の割合に変化はなし。毎日、新聞を読む層は7ポイントダウン。一方、ネットを利用する人は10ポイントアップ(NHK)
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投稿者 jun : 2010年6月18日 06:32