組織の中で学ぶことは「みんなの問題」&中原ゼミの革新
大学院授業「組織学習システム論」が3回目の授業を終えました。ここまで扱っていたのは、「組織社会化(Organizational Socialization)」です。組織社会化には、「星」の数ほどの定義がありますが、一般には
「組織の目標を達成するために、組織で必要とされる知識・技術を身につけること、さらには、組織の価値観などを内面化し、そこに順応していくこと」
と考えられるでしょう。この授業の第一クォーターでは、下記に示すように、組織社会化の「古典的な論文」を読んで、その研究の広がりを「浅く広く」勉強しています。
組織学習システム論シラバス
http://www.nakahara-lab.net/blog/2010/04/2010_6.html
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この授業をしていて、僕自身が面白いと感じるのは、組織社会化を含めて「組織と学習」の問題、というのは、「みんなの問題」だということです。だって、何らかの組織や集団に属し、そこで様々な知識や技能を高めたり、そこで様々な人とかかわりあいながら、何かを成し遂げ「ない」人は「いない」でしょう。大学生や大学院生でも、サークルに所属したり、アルバイトという職場をもっていたり、研究室という集団に属しています。
程度の差こそはあれ、みんな、この「組織と学習の問題」に、何らかのかたちで関与したり、取り組んだりしているのです。
ですので、僕は授業の中で「組織学習システム論で扱う問題は、みなさん自身の問題なのですよ」とよくいいます。「皆さんが、もしサークルや研究室のリーダーだったとして、新人が入ってきたら、このときにはどうするか」という具合に問いかけるのです。
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授業では、例のごとく、僕は、最初の10分のレクチャーと、最後の15分のファシリテーション&解説しかしません。そのほかの時間は、大学院生によるプレゼンテーションが35分、その後のディスカッションが30分くらいです。
いわゆるレクチャーをしないので、相変わらず、「税金ドロボー」と揶揄されているのかもしれませんが(笑)、僕は、このスタイルの授業で教育効果を高めることには、それなりの自信をもっています、悪いけど。
くどいようですが、組織と学習の問題は「みんなの問題」です。僕が「答え」をもっているわけではありません。その「答え」は、みんなの「中」にあるのです。後期には、教育学部でこの授業をやります。こちらでは、今のところ、少しケーススタディなどを取り入れながら、やっていこうかな、と考えています。
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大学院中原ゼミの活動も本格化してきました。今年は、前ゼミ長の館野君が中心になって、さらにゼミのやり方を変えました。これについては、詳しくは、企画者である館野君が報告してくれると思いますが、
1)大学院生が研究発表をするたびに、それを聞いている全員が「コメントシート」というのをWebで入力する(全員が見ることができます)
2)発表した本人は、発表終了後「内省シート」というものに入力し、次回までのマイルストーン(スケジューリング)をWebで入力する(全員が見ることができます)
というスタイルを採用することにしました。ここで入力された情報は、定期的に、ゼミ内のメーリングリストに自動送信され、全員が共有できる、という仕組みです。これまでは、下記のようにアナログでやっていたのですが、これをデジタル化したということです。
館野君のWebページ(きっとここに近いうちにアップされるでしょう・・)
http://www.tate-lab.net/mt/
さらには、研究室のTwitterアカウントをつくって、コメントシートや内省シートに書かれている教訓(その日、学んだことを各人がまとめたもの)を(将来的にはbotで?)発信することになっています。
中原研究室 on Twitter
http://twitter.com/nakaharalab
このように研究室やゼミのあり方を見直すことには、一応、理由があります。中原研究室は、「大人の学びを科学する」がキーワードであり、扱っている研究テーマが職場学習、組織学習などです。
「おまえは、"組織の中の大人の学習"を研究しているけれど、おまえのやってる組織自身が、一番学べないやんけ!」
と言われるのがイヤなので(笑)、自分自身も、なるべく気をつけるようにしています。
「中原研究室の文化は、"変わる"ことです」
とゼミの大学院生には言っています(笑)。
ありがたいことに、ゼミの大学院生がイニシアチブをとって、いろいろ、研究室の革新に取り組んでくれています。福山君の提案している本購入システムも、そのひとつでしょう。そういう「提案」を非常にありがたく思っています。
「とりあえず、やってみる!」
「やってみて、動かしてみて、考える」
「失敗だと思ったら、改善する」
「それでもダメなら、すぐやめる(笑)」
を重視して、これからもゼミの革新に取り組んでいきたいです。心地よく、愉快なゼミをつくるのは「教員の努力」だけではできません。それは、他ならない、ゼミにかかわるすべての人の問題、「自分たち」の問題です。
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嗚呼・・・今日は教育活動の話をしました。
このほかにも、センターの仕事、東大の教育の情報化に関するプロジェクトマネジメントや将来構想計画の策定、論文や本の執筆、講演の準備やら、何やらかんやら、あります。
仕事は、望むと望まないとにかかわらず「ふってくる」ものなのですが、これが不思議なことに、スケジュール的にかなりリスキーでも、「本当に間に合わず、落としてしまうこと」は「ない」のですね。「人生、綱渡りだな」と最近、よく思います。
というわけで、忙しい毎日を過ごしています。
でも、もう仕事はいらん(笑)。
そして、人生は続く。
投稿者 jun : 2010年4月28日 09:42