プレゼンやファシリテーションをどうやって学んだのか?

「プレゼンやパネラーとして必要なファシリテーションの力量を、中原さんは、どこで学んだのですか?」

 先日、ある学生さんから、こんな質問を受けました。
 うーん、、、いい質問ですね・・・言われてみれば、どこかなぁ。今まで、あまり、考えたことがありませんでした。

 確かに最近は、研究者といえど、人前でお話しする機会がどんどんと増えています。分析能力、文章能力などのいわゆる研究能力に加えて、研究をいかにアカウントするのか、伝えるのかということが、社会から求めはじめられているように感じます。

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 さて、小生自身のプレゼン能力ですが、まだまだ修行中でありますし、改善の余地はたくさんあります。また僕のプロセスが他の人にあてはまるかどうかはわかりません。
 しかし、あくまで僕の場合、上記の問いに対する答えは、「ロールモデルとなるような先輩研究者から学んだ」になるのかな、と思います。

 僕の今のプレゼンに強い影響を与えたのは、同僚の山内先生(東京大学)、堀田先生(玉川大学)、そして上田先生(同志社女子大学)のお名前をあげることができると思います。

 堀田先生からは、1)写真を用いてビジュアルと短い言葉で喋ることの重要性、2)オーディエンスにあわせて表現形式を変えることを学ばさせていただきました。堀田先生から学んだことは、一言でいうと、「ビジュアル」かもしれません。
 山内先生からは、1)場の進行にあわせて、アドホックにプレゼンをつくりかえて、最もオーディエンスにあった言葉を選ぶこと、2)パネルなどでのファシリテーションを場の進行にあわせて行うことの重要性を学びました。山内先生から学んだことは一言でいうと、「インプロヴィゼーション(即興)」と言えるかもしれません。
 上田先生は、1)動画をつかったプレゼン、また、2)LEGOなどを人工物を使ったオンゴーイングのワークショップのやり方などを学ばさせていただきました。一言でいうと、「ツールの活用」かもしれません。

 とにかく、大学院生の頃は、ロールモデルである彼らの登壇する場面 - 学会や基調講演での発表の様子を見ていたような気がします。
 この頃の僕は、一刻も早く、うまく、人前で喋ることがうまくなりたかったです。なかなかうまくしゃべれずに、悔しい思いをしたことも一度や二度ではありません。学会などでも、たくさんの失敗をしてきました。

 ロールモデルになる先生方から、様々なものを「まねび」、それを、次回の自分のプレゼンに活かすようにしてきました。プレゼンを終えたときには、どこをどのように話せばよかったのかを、ふりかえって考えました。

 自分のプレゼンの様子を、何度かビデオで撮影してもらったこともあります。やったことのある方は、わかるかと思いますが、自分のプレゼンの様子ほど後からふりかえって、「ばつの悪い」ものはありません。はっきり言って、それは鑑賞に堪えません。

「実は、自分はプレゼンの間中、身体がニョロニョロのように揺れていたのだ」

 と、ふだんは絶対に気づかない意外なことにも気づくこともあります。もしやられたことのない方は、ぜひ、やってみると新たな発見があります。

 かくして、少しずつ少しずつ場を重ね、内省し、熟達していくうちに、「マンガ」や「書道」や「イラスト」など、現在の自分のプレゼンの持ち味、表現を新しくつくりはじめるようになっていったような気がします。

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 大学院を終え、就職することになると、彼らから、様々な発表・司会の機会を与えられるようになりました。僕も、実際に登壇する機会を得ることができるようになってきたのです。

 特に、山内先生からは、寄付講座、企業との共同研究成果の発表、iii onlineなどの記者発表、公開研究会での司会、パネリストの機会 - つまりは「舞台」を与えられました。
 中には、目も当てられないような失敗をしたこともありますが、山内先生は、フォローをしてくださいました。
 今日の話とはあまり関係はないですが、企業の方との会話のやり方、交渉の仕方などを学んだのも、この頃であるような気がします。企業の方が話す言葉と、アカデミクスで話す言葉には、若干の違いがあります。それらの意味をさぐり、時には「翻訳」する技術を学んだのは、この頃です。海外企業や法務部門をカウンターパートにしていた時期もありましたので、大方の経験はしました。大変貴重な機会だったと思います。ありがたいことですね。
 ともかく、この頃の経験は、今の自分の力量を形作る上で非常に大きかったような気がします。

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 プレゼンやパネリストとしての力量・・・。いまだ修行中の身であることは重ね重ね強調しておきますが、あくまで僕の場合は、それらは脱文脈化したプレゼンやファシリテーションの手続きを、本や教材などで知識・スキルとして学ぶというよりも、ロールモデルになる先輩研究者の様子を見て、「まねび」、それを応用し、新たに自分の表現をつくり、さらには舞台を与えられ、少しずつ熟達していった気がします。ロールモデルの先生方には、大変御世話になりました。感謝しています。

 ですので、あくまで僕の経験から、学生さんにアドバイスをするのならば、プレゼンやファシリテーションの技能形成のためには、ロールモデルになるような人を見つけ、そこからまねび、それを応用する機会を持とう、ということになるのかもしれません。

 あなたには、誰かロールモデルになるような先達がいますか?
 そもそもロールモデルを探そうとしていますか?
 ロールモデルの一挙一動に目をひからせていますか?
 そこから技術を抽出しようとしていますか?

 もちろん、僕のプレゼン、僕のファシリテーションの能力は、今もなお、発展途上でありますし、おそらくはこれからどんどんと変化していくのではないかと思っています。
 でも、学生さんを勇気づけることをひとつ述べるのだとすれば、みんなは、僕が学生の頃よりも、全然プレゼンうまいよ。情報教育の影響なのか、何なのかは知りませんが、スライドの構成にしても、しゃべり方にしても、ここ数年、当時の僕何かよりはるかにプレゼンのうまい学生さんが、本当に増えている気がします。負けてはられんね。

 こんなんで、先ほどの学生さんの問いに対する「答え」になっているでしょうか?ところで、皆さんの場合は、いかがでしょうか。

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●経営学と教育学の交差するところに何が生まれるのか?

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投稿者 jun : 2009年11月 5日 13:43