ワークプレイスラーニング2009を振り返る!
そろそろ、今年の「ワークプレイスラーニング2009」について語ろうと思います。
本当はもっと早くに語ろうと思っていたのですが、終わった直後というのは、僕は、極度の疲労と緊張のせいでトランス状態になっており、正気を逸脱していることが多いのです。ですので、少しおいてからリフレクションしようと思いました。
しかし、、、そのあとは「地獄のようなスケジュール」でした。それが終わって「フー、やれやれ、そろそろやるべし」と思ったら、その矢先、ねー、奥さん、聞いてよ、「こんどは新型インフルエンザで一家全滅」です。
嗚呼。
僕自身40度の高熱にうなされるわ、TAKUZOはタミフルを飲んでもなかなか熱がさがらず苦しむわで、久しぶりに、中原、肉体的にも精神的にも「追い込まれ」ました。我が家は「北斗の拳の世紀末状態」です。つーか、「阿鼻叫喚地獄絵図」。
あべし。
というわけで、、、すんません、遅れちゃったんですね。
以上、言い訳でした(笑)。
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まず、ワークプレイスラーニング2009の「事実」から。
今年のワークプレイスラーニング2009は、下記のような日程で、東京大学本郷キャンパス・安田講堂で10月30日開催されました。
●日時 2009年10月30日(金)
●場所 東京大学安田講堂
●主催 東京大学 大学総合教育研究センター
●共催 非営利特定活動法人 Educe Technologies
●企画協力団体
エム・アイ・アソシエイツ株式会社
株式会社 グロービス
株式会社 ダイヤモンド社
株式会社 日本能率協会マネジメントセンター
株式会社 富士ゼロックス総合教育研究所
株式会社 リクルートマネジメントソリューションズ
株式会社 レビックグローバル
学校法人 産業能率大学
学校法人 産業医科大学
NPO法人 日本アクションラーニング協会
日本CHO協会
らーのろじー株式会社
まずは企画にご協力いただいた協力団体の皆様に心より感謝いたします。今回も受付、会場など、総勢50名近くの方々が各社からご協力いただきました。
皆様のご協力、ご尽力に心より感謝いたします。
本当にありがとうございました。
ワークプレイスラーニング2009
http://www.educetech.org/wpl2009/
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今年のカンファレンスのテーマは、「成長をいざなう個と組織の関係」についてです。このテーマのもと、1450名の方々から参加応募をいただきました。当日は1000名の参加者の方が、東京大学安田講堂に集まってくださいました。
ちなみに、今年のテーマの「個と組織」は、いわば経営学や組織論では「王道」の問いに近いかもしれません。
古くは、ホワイト(1956)という研究者が「Organization man(組織人)」という概念を提唱しています。
「組織人」とは「組織のために働き、組織に帰属している人のことをいう。つまり、「組織の生活に忠誠を誓って、精神的にも肉体的にも家庭を離れている」人のことをいいますね。
ホワイトがこの概念を提唱した1956年当時、アメリカで中産階級がちょうど勃興してくる時期です。そういう時代に、はじめて「組織人」という人々が生まれてきました。そういう人、ずっと昔からいたように思うけどね。でも、違ったんだね。組織に忠誠を誓い、組織の倫理に生きる人って、実は、近代、いいえ、現代の産物なのですね。
これも30年前くらいの研究になりますが、「組織と個人」ということになりますとエドガー・シャインの「心理的契約」という概念も非常に有名ですね。経営学の教科書ではでてくるのではないでしょうか。
このコンセプトも、組織と個のあいだの「相互作用」を概念化したものです。組織は、やりがいのある仕事、報酬などを個人に与える。そのかわり、個人は組織のために努力・貢献をする。そうした個人と組織のあいだの「やりとり」が心理的契約ということになります。そして、そのあいだについた「折り合い」が、いわゆる「キャリア」というわけですね。
そして最大の研究分野の研究分野ということになりますと、「組織コミットメント」になるのではないでしょうか。これは1980年代あたりから研究が深まっています。日本でも、たくさんの組織論の研究者によって実証研究が積み重ねられました。
アカデミックにいいますと、組織コミットメントは、「組織と従業員の関係を特徴づけるものであり、組織におけるメンバーシップ継続や中止に関する心理的状態を表現したもの」ということになります。
このように確かに「組織と個人」は非常に王道のテーマなのですが、ここで私たちがこのカンファレンスで皆さんで考えたいと思ったのは、ちょっと違うのですね。
それは一言でいうと、「学びや成長のイニシアチブ」という問題です。
より具体的にいいますと、
個人の成長・学習のイニシアチブ(主導権)を誰がもつべきなのか?個人が主体的に自らの学びをデザインするのか? それとも組織が組織目的に合致したかたちで、従業員の学びをデザインするのか?
という問題です。今年のカンファレンスのてーまに関しては、長岡先生(産業能率大学)から、カンファレンス冒頭でご説明がありました。
この問いを考えるために、例のごとく、実務の世界から3名の素晴らしいプレゼンターをお迎えしました。
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)株式会社 代表取締役COO 柴田励司氏さんと、アサヒビール株式会社 執行役員人事部長 丸山高見さん、株式会社バンダイナムコホールディングスデピュティゼネラルマネージャー 紀伊豊さんです。
アカデミアからは経営学の立場から妹尾大先生(東京工業大学)、組織心理学の立場から松尾睦先生(神戸大学)、組織社会学の立場から長岡健先生、そして教育学の立場から中原がコメントを行いました。
さて、下記では当日の様子をかいつまんでご紹介します。文章ですので、もちろん、そのすべてをご紹介することはできません。最も僕が印象に残った点のみご紹介します。
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●「社員が自ら変わる環境づくり」(30分)
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)株式会社
代表取締役COO 柴田 励司 氏
柴田さんがお話しになったのは、
1)自分で自分のキャリアを考える機会をもつことの重要性
2)自分で自分のキャリアを考える人が、おのずと生まれる環境や制度を会社はつくっていく
ということです。
具体的には、R2(リセット・リエントリー)という、今年からCCCが導入した人事制度を紹介しておられました。
この制度は、1)各社員がいったん今やっている仕事をリセットとし、1)働きたい仕事を自分で決め、そこにリエントリー、つまり手をあげる、という制度です。
この制度を使って、主体的に自分のキャリアや仕事をデザインしてください、というのが、柴田さんの、おっしゃりたいことであったように思います。「自分で自分の経験をデザインする環境は整えます」ということでしょうか。
柴田さんからのご講演のあと、それに対するアカデミアからのコメントを行います。
その後、会場では、1000名の参加者の方々全員で対話がなされました。どの方も熱心に、他者のお話に耳を傾けておられました。
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「熱く、温かく、人から人へ、そして未来へ」(30分)
アサヒビール株式会社
執行役員 人事部長 丸山 高見 氏
丸山さんからは、アサヒビールが実施している、いくつかの人事施策について、ご講演いただきました。
アサヒビールでは、社員の成長のため、上司・先輩・同僚・社員OBが「よってたかって」、個人の成長を引き出す取組を行っています。忙しい上司にかわって、OBがキャリアアドバイスをしたり、ブラザーシスター制度を整備したりしています。
ブラザーシスター制度については、ダイヤモンド社の間杉さんが、詳細な記事を書かれていますので、そちらを参考にしていただければ幸いです。
記事に寄りますと、アサヒビールさんは、4年前にブラザー・シスター制度を「公募型」に切り換えたそうですね。今年も定員63名に対して92名が「公募」に名乗りをあげたようです。
ブラザー・シスター制度を公募型に切り換えたアサヒビールの「かまい力」
http://diamond.jp/series/masugi/10022/
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最後のご発表は、バンダイナムコHDの紀伊さんです。
『人が成長する』って・・?(30分)
株式会社バンダイナムコホールディングス
グループ管理本部人事部
デピュティゼネラルマネージャー
紀伊 豊 氏
紀伊さんのご発表では、「成長≒できなかった事ができるようになる事は嬉しいことで楽しいはずである」という基本メッセージのもと、会社が育てるのではなく、社員自ら成長するための仕組みとして、頻繁な人事異動制度についてご紹介がありました。
バンダイナムコHDでは、平均で2年から3年間で積極的に異動を行い、常に社員が挑戦し、成長する環境を整備しているそうです。
こちらもアカデミアからのコメントのあと、会場で20分にわたって熱心な議論が行われました。
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以上がワークプレイスラーニング2009の内容です。
その様子は、下記のような写真から類推いただけると思います。非常に熱心に対話がなされていました。どの皆さんも、真面目に気楽に(Serious fan)に話をなさっているようにお見受けいたします。非常にありがたいことですね。
最後に、今年の目玉企画として、ワークプレイスラーニング2009の様子をリアルタイムドキュメンテーションして、会場の参加者全員で見る、というリフレクティブシアターを行いました。こちらは神戸芸術工科大学の曽和具之先生・柴田あすかさん・籾井雄太さんらにリアルタイムドキュメンテーションをしていただきました。
リアルタイムドキュメンテーションとは、「今、この場でおこっている出来事を、リアルタイムで記録(ドキュメンテーション)し、振り返りに役立てる手法」です。
今回はこのリアルタイムドキュメンテーションを、ワークプレイスラーニング2009でも実践していただきました。カンファレンスの間中、5000枚程度のスチル、動画を記録し、それをリアルタイムでエディティングし、4分のビデオにまとめていただきました。
「リアルタイムでエディティング」とサラリと書きましたが、その作業はまさに戦場です。今回のビデオも、公開1分前に完成した、とのことでした。
下記が全員で見たリフレクティブシアターの映像です。どうぞご覧下さい。当日の雰囲気がよみがえってくる、ライブ感あふれる映像になっております。
毎年のことではありますが、最後に、中原が本日の内容をラップアップして、ワークプレイスラーニング2009は無事終了です。
ご登壇いただいた皆様、企画委員会の皆様、そして、当日ご参加いただいたすべての皆様に心より感謝いたします。本当にありがとうございました。
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はぁ、やれやれ、という感じですが、、、実は、ワークプレイスラーニング2009は、密かに「裏プログラム」というものがありました。「正式なプログラム」は、5時で終わりでしたが、実は、本当は、これで終わっていなかったのです。
実は、、、企画委員会の皆様を中心に、この後、ワークショップ兼パーティが開催されていたのですね。ここだけ聞くと、「なんだ、打ち上げか」と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、私たちは、「フツーの打ち上げ」はしません。そこには綿密なデザインとおもてなしがあります。
企画を担当した者として、当日1日にあったことを、しっかりと、リフレクションし、さらにはネットワークキングを深める「場」を自らつくり、デザインすることにしました。
今年の「場」は、中原の研究室のM1の学生さんの我妻優美(わがつま・ゆみ)さんと、同僚の山内先生の研究室の伏木田稚子(ふしきだ・わかこ)さんがディレクターとして指揮しました。
二人は、こうした場のデザインははじめてだったので、ワークショップ部の3人が、いわばメンターとして助けてくれました。また、何名かの学部生と大学院生が着物をきて手伝ってくれました。
ワークショップ部
http://utworkshop.jimdo.com/
テーマはズバリ「茶道」です。二人のディレクターは、空間デザイナーの笹本さんと一緒に、そのための「和」の空間を、無味乾燥な普通の部屋の照明などを工夫することで、つくったそうです。
今日一日8時30分から準備を進めて疲れた身体・精神をゆっくり休めて、しかし、それでいて「和」の中でリフレクションする、という場を、茶道の様々なコンセプトを使って、つくっていただきました。
上記はその様子です。
これだけ見ても、ちょっとわからないかもしれません。でも、身内の僕が言うのは何ですが、本当に素晴らしい「場」であったと思います。
今回、僕は、いつものように「無茶ぶり」をしているだけでした。僕がどんな風に「無茶ぶり」をするかは、下記のマガジンに詳しいので、もしよろしければどうぞご覧ください。
ワークショップ部 Ba design magazineダウンロードページ
http://bit.ly/3Zx22N
今回の場は、学生さんたちが、全部、自分たちの頭で考え、様々な人々の助けを借りつつ、つくりました。
参加者の方々からも、非常に多くのお褒めの言葉をいただきました。本当に、よくやったと思います。ありがとうございました。
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ふぅ、、、これで本当に終わりです。今年のワークプレイスラーニング2009は、こんな「出来事」でした。
今日ご紹介したワークプレイスラーニング2009の様々な写真、そして動画。それは、そこでおこった出来事を、すべからく表現できるわけではできません。
しかし、敢えて教えてください。
皆さんの目には、この光景は、どのようにうつったでしょうか。
皆さんの頭には、この場で聞いたどんなキーワードが印象に残ったでしょうか。
そして
皆さんの心には、近い将来、どんなアクションを実行する自分の姿がイメージされましたか?
またいつの日かお逢いしましょう。
See you soon...
この日、この一瞬にかかわったすべての人々に感謝を込めて。
素敵な時間をありがとうございました。
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●働く大人の学び論・成長論
仕事の経験を積み重ね、内省する
リフレクションをアクションにつなげる
経営学と教育学の交差するところに何が生まれるのか?
中原淳×金井壽宏 「リフレクティブマネジャー」光文社新書!
投稿者 jun : 2009年11月14日 22:38