シンポジウムの企画を、ワークショップでつくる!?
シンポジウムには「ひとつの新しいメッセージ」が必要です。
シンポジウムには、講演、質疑応答、パネルなどすべてを通じて、主催者側が訴えかけたい「新しいメッセージがひとつ」存在しなければならないと、僕は思っています。
職業研究者になって、数多くシンポジウムを企画・出演してきました。よいシンポジウムも、改善点のあるシンポジウムもありまhした。たくさんのシンポジウム経験を通して、このような「持論」を、僕はもつようになりました。
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たとえば、「学習」を例にして考えてみましょう。「シンポジウムには、新しいメッセージが必要だ」ということをご理解いただく上で、わかりやすい例かと思います(これは、先日、長岡先生と話し合っていた内容です)。
まず、
「学習について」(Level 1)
というのは、メッセージではありません。それはシンポジウムが焦点化する領域です。
さらに話を具体的にしましょう。
今、仮に下記のメッセージをもったシンポジウムがあるとします。
「学習とは知識獲得である」(Level 2)
確かに、「学習とは知識獲得である」というのは、メッセージです。しかし、それは「新しくありません」。誰もがそういうステレオタイプを持っております。
必要なのは、「新しいメッセージ」です。
本当にたとえばの話ですが、
「学習とは、創造的破壊である」(Level 3)
ということが、仮に、多くの人々にとって「ビビビ」とくる新鮮なメッセージだとします。そして、シンポジウムに求められるのは、かくのごとき「新しさ」であると僕は思います。
繰り返しになりますが「○○とは~である」の「~」の部分に、主催者側の「エッジのとがった主張」が含まれていなければなりません。この「~」を関係者間で話し合って決めること、合意することが、シンポジウムの企画プロセスで最も大切なことであると僕は思います。
決して、誤解してはいけないと思うのです。「~」の部分は、質問紙調査やアンケートをしても、それだけからなかなか見つかるものではありません。なぜなら、それは、多くの人々がまだ見聞きしていない「新しいこと」であるから。
まずは、企画側が「何をやりたいのか」「何を変えたいのか」からものを考える必要があります。
ここまでくると、研究とシンポジウム企画が、それほど変わらない活動であることに気づかされます。
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先週土曜日、ワークプレイスラーニング2009 企画委員会のメンバーが集まって、今年のシンポジウムのコンセプトをディスカッションするワークショップが開催されました。
今年のワークプレイスラーニング2009は、2009年10月30日(金曜日)午前10時 - 午後5時の日程で、東京大学・本郷キャンパス・安田講堂で開催されます。運営は下記の産学協力体制です。
■主催
東京大学 大学総合教育研究センター
■共催
非営利特定活動法人 Educe Technologies
■ワークプレイスラーニング2009企画委員会
NPO法人 日本アクションラーニング協会
NRIラーニングネットワーク株式会社
エム・アイ・アソシエイツ株式会社
株式会社 グロービス
株式会社 ダイヤモンド社
株式会社 日本能率協会マネジメントセンター
株式会社 富士ゼロックス総合教育研究所
株式会社 リクルートマネジメントソリューションズ
株式会社 レビックグローバル
学校法人 産業能率大学
グローバルナレッジネットワーク株式会社
日本CHO協会
らーのろじー株式会社
ワークプレイスラーニング2009は、3年目にして、15団体、20名以上の人々で運営されるシンポジウムに成長しました。人数も多くなってきたので、やはり、企画をたてる際には、全員参加型のワークショップが必須であろうという判断から、今回週末にワークショップを実施しました。
これらのワークショップでは、
1)今年のワークプレイスラーニング2009で、私たちは、どのようなメッセージを発信していくべきなのか?
2)ワークプレイスラーニング2009を運営するにあたり、新しい「仕掛け」「演出」は何か?
を、様々な手法を使ってディスカッションしました。
下記はそのプロセスです。
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ワークショップは、らーのろじー株式会社の本間正人さんのご厚意で、らーのろじーさんの本郷の事務所で実施されました。
参加者は、ワークプレイスラーニング2009の企画委員会メンバーです。当日は、ディスカッションの内容を、敢えて「拡散」させるため、東京大学の大学院生にもご参加いただきました。
ワークショップの冒頭、まず僕の方から、今日の趣旨を説明しました。この趣旨は、本間さん、中原、長岡先生であらかじめ決めていたものでした。下記に、その資料を公開します。
中原の趣旨説明
http://www.nakahara-lab.net/blog/workplace_learning2009ws.pdf
ご一読いただいた方はすぐにおわかりかと思いますが、ワークプレイスラーニング2009で、我々は、「シンポジウム企画のプロセスそのものをオープン化」します。つまり、「メイキング・オブ・ワークプレイスラーニング」を、このブログで公開するのです。
なぜか?
それは、何よりも「新しく、面白く、役に立つメッセージ」を私たち自身がつくっていきたいからです。また、このシンポジウムにかける関係者の「想い」のようなものを、参加者の皆さんと共有したいと考えるからです。
ぜひ、わたしたちの活動、企画趣旨に関して、ご意見・感想等がおありでしたら、ご連絡をいただければと思います。
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趣旨説明のあとは、本間さんのファシリテーションで下記のようなアクティビティに取り組みました。
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1.ブラインドウォーク
まず本郷界隈をブラインドウォークしました。二人ペアになって、一人が目をつぶります。もう一人は目をつぶった方を誘導していきます。
自転車や自動車の行き交う本郷界隈は、かなり危険な場所です。ウォームアップのアクティビティとして、非常に面白かったです。
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2.わたしにとってのワークプレイスラーニング
次に、二人ペアになってインタビューをしあいます。お題は「私にとって、ワークプレイスラーニングだと思える瞬間」です。
具体的に、細かく、かつ映像的に「これが、ワークプレイスラーニングだ!」だと思える瞬間をインタビューしあいました。
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3.素晴らしいWPLは○○だ! - ブレインストーミング
次に、「素晴らしいワークプレイスラーニングとは~だ」というセンテンスの「~」にあたるものをグループでだしあいます。
どうなるかわからない意外性
空気をあまり読みすぎない
もっとわからなくなる
善意をもって相手を認める
時間を忘れる
夢中になる
自分のアクションに対してレスポンスがある
業績にむすびつく
自分に対する発見がある
尊敬とか信頼に基づいている
こんな風になりたい、という人がいる
押しつけられていない(自発性がいる)
シンプルさがある
感情が豊かに流れる
誰かに話したくなる
セクシーだ(刺激的だ)
組織力に結びつける
やる気のないベテラン社員が活性化する
自律的に職場で担える
「学び」とは思わず従事してしまう
常識をこえる
ステレオタイプを壊す
といったようなワードが、生まれてきました。
学習とは、通常、「獲得:acquisition」というメタファで語られる、コンサバティブな活動だと思われています。しかし、企画委員会のもっている「学習観」は、ややこれとズレているという印象を持ちました。
「学び」とは思わず自律的に従事してしまう活動で、こんな風になれたらいいのにという人のもとで、何かを壊しつつ、常識を再構築する。そのことが、組織に刺激を与える。そうしたセクシーな!?活動が「ワークプレイスラーニング」なのではないか、という認識があるのかな、と思いました。
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4.ドリームインタビューイメージ化
次に「ワークプレイスラーニング2009が終わった直後、こういう場面が見られてよかった」というイメージを全員で語り合いました。
文化人類学、政治学者をコメンテータにいれる
参加者の属性をわかるように、色分けされたボール
を受付でわたす
事例を少なめにして、じっくり語り合っている場をつくる
といったアイデアも生まれました。
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5.Workplace learning 企画コンペ
最後は企画コンペです。これまでの議論を踏まえ、下記の5つを含んだ企画コンペを実施しました。グループで50分間話し合ってもらい、ポスターをつくります。最後は、ポスターを使って発表を行いました。
テーマ
進め方
しかけ
ゲスト
タイムスケジュール
グループでつくったポスターを使って、発表をしてもらいます。いくつかのキーワードがでてきました。
Learning responsibility
育つ責任 育てる責任
人は育つのか、育てるのか?
Learning is Unlearning
などといったアイデアも生まれました。本間さんからは、Learning as re-storyingというのも面白いのではないか、という提案がなされました。
仕掛け上の工夫も、いくつか提案されました。参加者自らが、意見をつくり、場所を別れてディスカッションする、といったような提案もなされました。実現すれば、刺激的な場になりそうですね。
ワークショップは、また形式を変えて、3月21日(金曜日)も実施されます。こちらでは、今日の結果を踏まえて、中原と長岡先生で話し合った企画をたたき台に、さらに企画をブラッシュアップを続けていきたいと思います。
3月が終われば、4月からはいよいよ事例企業の選定。そして気づけば、夏。募集開始です。
ワークプレイスラーニング2009、いよいよ、始動です。
皆さん、10月30日(金曜日)は、ぜひスケジュールをあけておいてくださいね。どうぞお楽しみに。
最後になりますが、ファシリテーションをつとめてくださった本間さん、事務局の坂本君、そして東京大学大学院の院生諸氏、ありがとうございました。
また、参加していただいた企画委員会の方々、金子さん@グロービス、坂本さん@富士ゼロックス総合教育研究所、吉松さん@産業能率大学、鈴木さん@NRIラーニング、永田さん@ダイヤモンド社、石田さん@ダイヤモンド社、石井さん@リクルートMS、斎藤さん@産業能率大学、須藤さん@日本CHO協会、古賀さん@産能大学、、、休日にかかわらず、本当にお疲れ様でした。
ありがとうございました。
感謝を込めて。
投稿者 jun : 2009年2月24日 10:48