パフォーマンスコンサルティング!?:ASTD2008リアルタイム報告
ダナ=ロビンソンさんの「パフォーマンスコンサルティング」のセッションに出ました。
「パフォーマンスコンサルティング」とは「あるビジネスゴールをめざして、職場のパフォーマンスを向上させるためのプロセス」のことだそうです。
具体的にいうと、クライアントに達成したいビジネスゴールをヒアリングして、それを達成するために、ビジネスゴールを分解する。それに影響を与える変数には、各事業部の仕事環境、そこで働く個人の能力などがある。そういう、ありとあらゆる要素をコントロールしようぜ。パフォーマンスコンサルティングとは、どうも、そういう考えかたのようです。
ちなみに、よく似た概念に、インストラクショナルデザイン(ID)があります。IDは、最適化の対象が「教授」ですね。通常は、あるトレーニングプログラムの中の学習要素を構造化し、いかに効率的に伝達できるかを追求します。
それに対して、パフォーマンスコンサルティングが最適化するのは「ビジネスパフォーマンス(業績)」です。つまり、最適化する対象がさらに広がっている。
より具体的にいうと、下記のような連立方程式でしょうか。
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会社の業績=職場(1)のパフォーマンス+職場(2)のパフォーマンス+・・・・・+職場(n)のパフォーマンス
職場(1)のパフォーマンス=職場(1)の仕事環境×職場(1)のメンバーの個人の能力
職場(2)のパフォーマンス=職場(2)の仕事環境×職場(2)のメンバーの個人の能力
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職場(n)のパフォーマンス=職場(n)の仕事環境×職場(n)のメンバーの個人の能力
※ここでは事業部≒職場と考えるとわかりすいかと思います。
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パフォーマンスコンサルティングは、このモデルの変数をそれぞれ極大化することで、会社の業績を増やそうというわけですね。
なるほど。そりゃ、そうだよね。教育や学習だけ最適化したって、業績につながんなかったら意味ないしね・・・そりゃそうだ。デカルトの格言「困難は分割せよ」ではないですけれど、「会社の業績」という大きな課題をブレークダウンして、いろいろな要素に還元する。で、それらに「介入」し、エンパワーすることは重要だ。なるほどね・・・ダナはん、あんた、いいこというじゃない・・・。
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でもさぁ・・・これ、さらっと書きましたけど、これがいかに難しいことか、おわかりでしょうか。こんな方程式、とけるのかよ。
この発表を聞いていて、僕が思ったのは、「方向性や気持ちとしては理解できるけど・・・いったいどうやってやればいいんだろう」という複雑な思いでした。正直いうと「今も腑に落ちていません」。パフォーマンスコンサルティングという手法がわからないのではなく、それが機能する場面がイメージできないのです。
いろいろ細かいことを言えばキリがないのですけれど、僕の抱いた大きな問題は3つです。
まず1つめ。これがうまくいくためには、それぞれの要素に関係する人々 - マルチステークホルダーをいかに説得させ、ネットワーク化するか、ということがポイントになります。
職場(n)の仕事環境や、職場(n)のメンバーの能力向上は、それぞれ違った場所で、違った人が、それに関係している。
パフォーマンスコンサルティングで想定しているものが機能するためには、それぞれの職場にいるステークホルダに対して介入を行い、時には連携させたり、説き伏せたり、調整することが必要になります。これが激しく困難をともなうことが予想されますね。「内部ネットワークをいかにつくるか」、これが課題です。
で、2つめ。今度は、「内部ネットワーク」だけではなく、外部ネットワークです。(1)を行うためには、1)どのような専門性・知見をもった人々を、2)どのようにネットワークし、2)パフォーマンスコンサルタントとしての自分はどのような立場で、3)どのくらいの期間、4)どのような介入や調整を行えばよいのでしょうか。これがわかりませんでした。
「仕事環境」の要素に掲げられているのは、職場の物理的なデザインを含みますし、組織風土や組織文化を含むものですので、それぞれに「専門家」が必要でしょう。まさか、パフォーマンスコンサルタントがひとりで、ひとつの専門性をもって取り組める課題ではない。
となると、結局は、パフォーマンスコンサルティングを提供する側も、異なる専門家から構成されるネットワークを組む必要があります。つまり、「外部ネットワーク」を築く必要がある。サラリといいますが、そういう全く異なる専門性をもつ人々を統御できる人=パフォーマンスコンサルタントって、どういう資質が必要なのでしょうか。
理論的には、パフォーマンスコンサルタントは、1)でいうところの内部ネットワークと、外部ネットワークを接続する人になるはずです。この難しい課題を解決できるのは、どんな人なんでしょうか。それがわかりませんでした。
3つめ。こちらはプラクティカルな問いです。おそらくはパフォーマンスコンサルティングを発注する側の組織の人間に、このモデルを理解させるのは、かなりの困難でしょう。それまで研修の発注をやってきた人に、この考え方は、かなり難しい。それをどのように行えばいいのでしょうか。
以上、僕が思ったのは3つです。まぁ、上記はあくまでダナさんの話を聞いて思ったことですけど。ちょろっと図を書きながら考えてみたけどわからんなぁ。いずれにしても、「ネットワーク」がキーワードのようですね。これは、少し時間をかけて考えてみたいですね。
そして人生は続く。
※ちなみに、ここまで広くなってしまうと、「パフォーマンスコンサルティング」ってわざわざ言わなくても、それって「コンサルティング」なんじゃないの?という疑問がフツフツとわいてきます。だって、「パフォーマンスを追求しないコンサルティング」なんてものは存在しないわけですので、それなら「コンサルティングとは、そもそもパフォーマンスコンサルティングである」ということになる。でも、まぁ、そういう屁理屈はまた別の機会に。
投稿者 jun : 2008年6月 2日 08:57