レゴブロックでどんな研修ができるのか?
昨日は、東京大学でLearning barが開かれました。
今回のテーマは「レゴブロックを活用した企業人材育成ワークショップ」です。ラーニングシステムの石原正雄さんに講師をつとめていただきました。
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「レゴブロックと活用した人材育成」でもっとも有名な事例としては、グローバル化を推し進めているトヨタがありますね。
トヨタは、海外の工場従業員に「カイゼン」の重要性を教えるために、レゴブロックをつかって、仮想自動車組み立てをさせているそうです。この様子は、2006年11月のNHKスペシャルで放映されていたので、ご記憶の方も多いのではないかと思います。
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今回、Learning barでやったLEGO SERIOUS PLAYというワークショップは、どちらかというとトヨタのような「技能伝承系」ではなく、「組織開発系に属するワークショップ」だと思います。
自分とは何?
自分は他人からどのようにみられているか?
業務と自分の関係は?
業務と組織の関係は?
何か問題が生じたときに組織や自分はどう変わるか?
というコンセプチャルな課題に対して、アタマを使って、いかに具体的に考えさせるか、ということが重視されています。
ワークショップの基本設計原理は、
1.自分の手で作品をつくりながら
2.他者に公開(expose)し
3.それをもとに意味を語り合い
4.少しずつ理解や合意をつくる
5.その中で個人が「気づく」
という幹事になっています。
最初は「わたし」というミクロレヴェルの問いからはじまり、次第に組織のレベル、組織をとりかこむエコシステムまでを視野にいれた話に発展していくのですね。
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この日のワークショップの準備は、中原、中原研究室・山内研究室の院生さん、坂本君、レゴ社の方、ラーニングシステムズの方で行いました(本当にお疲れ様でした)。
ワインを12本、ビールを3ダース注文。品川のDean & DelucaにDELIを買いに行ってきました。
僕はDELIを買いに行ったのですが、40人分のDELIというと、ちょっと想像がつかないものですね。店員さんのアドバイスを受けながら、何とかゲット。会場設営等は、本当に時間ぎりぎりでヒヤヒヤしましたが、何とか間に合いました。
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いよいよワークショップがはじまります。
今日のワークショップでは、LEGO SERIOUS PLAYの数日あるカリキュラムの中から、ほんの一部を体験していただくことになりました。
石原さんの方から課題が出されます。
第一課題は、
「できるだけ高い作品を、できるだけ早くつくってください」
この課題は本筋の課題とは異なり、「レゴブロックになれる」「ワークショップの雰囲気になれる」ための事前課題ですね。
課題の遂行最中には、他の人の様子を見てもよいです。情報交換などをして、自分のモデルをカイゼンしていきます。
テーブルには、6人で座っていただきましたが、作品をつくっているうちに、うち解けてきて、次第にコミュニケーションなども生まれてきました。
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続いて第二課題。
第二課題は、「自分の業務を表現する」です。
いよいよ少しずつ、それっぽい話になってきましたね。皆さん一心不乱で課題に取り組みます。自分の業務ねぇ・・・。中には、なかなか作品をつくることができずに、立ち往生している人もいます。
石原さんがこう言います。
「皆さんのつくった作品こそが言葉です、創ることがコミュニケーションです。自分の手を信じてください、とにかく手を動かしてください」
こう書くと、なんか不思議な台詞ですが、これはいわゆるシーモア=パパートの提唱した「Constructionism : コンストラクショニズム」を一言で言い当てる言葉ですね。メモしとこ。
そうこうしているうちに、皆さん、全然違うかたちをつくりあげました。自分の作品をつかって、グループに自分の業務を説明するセッションがはじまります。
聞いている人も、黙って聞いているわけではありません。「ここがこういうカタチになっているのはなぜ?」という風に、具体的な対話が生まれます。
組織の中での自分のポジション、自分のやりたいことと、やらなければならないこととの相克・・・なかなか深いところまで議論が進んでいきます。
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第三課題は、
「Who are you? : 自分とは何かを表現する」
です。
これは、第二課題に似ているところもありますが、一方は「業務」、他方は「自分」であるところが違いですね。2つのカタチが重なる人もいれば、重ならない人もいるでしょう。
第三課題は、作品制作後の「語りあい」のところで、少し工夫がなされます。
席をひとつずらして、自分の作品を、グループの他の人に解釈してもらうのです。その間、自分は、他人が解釈してくれる「自分」=それは他者からみた自分に耳を傾けます。
すごい盛り上がりです。「わかる、わかる」「なるほどねぇ」というような声が、ここかしこから聞こえるようになりました。
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ここでLEGOのワークショップはおしまいです。数日あるワークショップの一部を再現する時間しかありませんでしたので。
その後は、「レゴブロックは他にどんな教育場面で利用できそうか」というテーマで、グループディスカッションをしました。
20分間グループで話し合って、ポスターに考えをまとめ、全員の前で発表してもらいます。20分という時間の制約のなかで、いかに話をまとめるか。
ポスター発表では、
・研修のアイスブレーキングに使う
・お互いに仲が悪いと思って連携がとれない教員同士の研修に使う
・新入社員のキャリアディベロップメント研修に使う
・家族再生会議?
といったようなアイデアがだされました。皆さん、実務担当者の方が多かったので、その内容が非常にバリエーションにとんでいました。
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今回のワークショップを僕自身がリフレクションしてみますと、レゴを使う利点は下記のようにまとめられるのではないかと思います。
まず、ブロックは「The object to feel or think with」として機能するということです。
「突然話せって言われても・・・・」「突然考えろと言われても・・・・」というような課題に対して、ブロックがあるからこそ、「具体的に考えることができる」のでしょう。
また、カタチがあるからこそ、「具体的にコメントできる」のでしょう。
そのためのコミュニケーションや思考の媒介物として、レゴのシンプルな構造は、シンボルとしてうまく機能するのでしょうね。
「複雑すぎてもダメ、シンプル過ぎてもダメ」
なのです。
一般に「実体のないものは、なかなか、教えられない」ものです。たとえば、価値観、戦略、関係、倫理、アイデンティティ、リーダーシップといったものを教える、というのは、どこか変な気がする。
しかし、「教室で、誰かが一方向的に伝えることでは伝えられないものこそ、把握して欲しい」というような社会的ニーズは、高まるばかりです。
「伝えられないもの」は、やはり自分のアタマで考えて、つくって、はじめて腑に落ちるのでしょうね。さらにこれに経験が加わることで、ようやく「わかる」のではないかと思います。
そのための事前課題のひとつとして、Legoはとても有益だなぁ、と思いました。
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最後になりますが、今回のワークショップ開催を快諾してくださり、デンマークから人数分の非売品レゴブロックを取り寄せていただいた石原正雄社長に、この場を借りて感謝いたします。
本当にありがとうございました。
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追伸.
Learning barは、NPO法人 Educe Technologiesの社会貢献事業のひとつです。収益の一部を還元することで、教育に関連のある人々が集まり、最先端の話題に耳を傾け、ネットワーキングする機会を提供しています。
投稿者 jun : 2007年3月18日 08:00