うち知ってんねん!:尾上圭介著「大阪ことば学」

 突然で悪いのですけれども、僕の「関西弁」は「なんちゃって」なのですね。

 1)3年間大阪で暮らしたことと、2)カミサンの出身地が「鹿も市役所で働いている」という奈良県出身であり、おうちの公用語は関西弁にされてしまったこと。この2つの理由から、「なんちゃって関西弁」の使い手になりました。
 
「なんちゃって」なら敢えて使わなければいいのに、と訝る方もいるかもしれない。特にホンマモンコテコテの関西人は、僕の関西弁の「なんちゃってさ」に、密かに腹を立てているのかもしれない。

 だけどね、アンタ、本当に申し訳ないんだけど、そうはイカソーメンよ(意味不明)。

 僕の中で関西弁は、もう自動化されちゃっており、閾下で処理されているのです。僕のあずかり知らないところで、勝手に「発話」されちゃってるんです。

 自分が「どういう時に関西弁を使っているのか」、逆に言うと、「どういうときに関西弁を使っていないのか」、僕には全くわかりません。

 自慢じゃないんだけど、全く意識したことなんかないんだよね。気がついたら、関西弁だし、ハッと思ったら標準語、あれれ、知らないうちに北海道弁という風に、常に僕の語り方は変化します。

 何となく、その場の雰囲気 - おそらく、それは誰とどのようなコンテキストで話すか、ということだと思いますが - それによって、言葉を使い分けているようです。

 つーことで、オレは知らん。関西弁のクレームは、オレに言ってくれるな。「ブローカー野」に言ってくれ。

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 まぁ、そんなことはどうでもいいとして。こういう背景をもっているんで、普段から「関西弁」に関する本は好んで読んでいます。僕にとっては、一番身近な外国語のようなものなので、興味があるのですね。

 先日は、言語学者の尾上圭介氏が大阪弁を解説する本「大阪ことば学」を読みました。なかなか面白かった。

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 本書によりますと、関西弁で頻発する「ねん」というのは、もともと「のや」なのですね。そして、この「のや」が下記のように変化をとげた。

 「のや」→「ねや」→「ねん」

「のや」とは標準語でいうと「のだ」の意味に近い。ただ、標準語で「のだ」というのと、関西弁の「ねん」というのは、ちょっとニュアンスが違うといいます。

「のだ」は、どちらかというと「断定」なのですが、「ねん」は、話してだけが知っている事情を「実はね」「あのね」と教えてあげる感じに近いのですね。「のだ」に比べて、ちょっと「まろやか」で「やわらかな」表現と言ってもよいのではないでしょうか。

 その事例として、島田陽子さんの、とっても印象的な詩が引用されていた。これが、何度読んでも、可愛らしくてね。北海道弁でいうと、「めんこい詩」ということでしょうか。イカ、長くなりますが、引用してみましょう。

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 うち知ってんねん

        島田陽子

 あの子 かなわんねん
 かくれて おどかしやるし
 そうじは なまけやるし
 わるさばっかし しやんねん

 そやけど
 よわい子ォには やさしいねん
 うち知ってんねん

 あの子 かなわんねん
 うちのくつ かくしやるし
 ノートはのぞきやるし
 わるさばっかし しやんねん
 そやけど
 他の子ォには せぇへんねん
 うち 知ってんねん

 そやねん
 うちのこと かまいたいねん
 うち 知ってんねん

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 うーん、誠に可愛らしい。ラブリー。

 おませな女の子が、たぶん、母親にかな、秘め事を教えてくれてるんですね。そういう情景が脳裏に浮かんできませんか。そこで使われているのが「うち知ってんねん」の「ねん」です。「まろやか」な「ねん」ですね。

 この女の子、知ってるんだよね、「あの子が、実は、うちの事が好きやねん」と。それを、「実はね」「あのね」と、「ねん」を多用しながら、語りかけてくる。何とも微笑ましい詩ではないでしょうか。

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 やっぱりね、関西弁はいいですね。偏見バリバリかもしれませんが、さっきみたいな「可愛らしい女の子」が使う「関西弁」は特によし(笑)。何でも許す。

 ・・・最後は何を言いたいのかわからなくなったけど、まぁ、今度身近な関西人にあったら、彼らが使う「ねん」に気をつけて聞いてみてください。急に注意深く聞き始めたら、変に思われるかもしれないけれど。

  

投稿者 jun : 2007年1月 9日 05:00

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