バカな!、なるほど!・・・戦略の本質

 何の本だったかはすっかり忘れてしまったけれど(最近あまりの忙しさに、長期記憶は崩壊している)、先日読んだ本の中に、こんな話がのっていた。

 神戸大学で研究なさっていた、ある高名な経営学者の先生によると、「戦略」という言葉の本質は、「バカな!、なるほど!」で言い表されるのだという。

 つまり、戦略とは、「一見理に反しているように見え、誰もが容易には気づかないけれど(バカな!)、説明を聞けば思わず膝をうって感歎してしまうような考え(なるほど!)」のことをさすのだという。

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 昨今、「戦略」という言葉が世の中に氾濫している、と言われて久しい。

 どうして、うちの組織は<戦略>がないのかねー
 その問題の対処は、<戦略>的にですねー

 こんな会話を会議や飲み屋などで聞いたことがあるだろう。しかし、こうした話をよくよく聞いてみると、多くの人々が使う<戦略>は、「自分がよしと思っていること」くらいの意味しかないことが多い。

 つまり、本来の意味は、

 どうして、うちの組織は<わたしの思うように>ならないのかね
 その問題の対処は、<わたしの思うとおりに>ですねー

 くらいなものなのに、それを覆い隠すために、「戦略」という言葉を使っているだけのことが多い。そこには、膝をうって感歎してしまうほどのオリジナリティは微塵もない。

 そもそも「どうして、うちの組織は戦略がないのかねー」と言表できる人間は、本来、組織がもちえる戦略を既に知っていると考えられる。しかし、そうした人間が「いるはずなのに」、その人間の所属する組織の戦略なき暴走や迷走はやむことはない。
 
 「戦略」という言葉を多用する人ほど「戦略」を知らない、というのは、笑えない冗談でしかない、ように思う。

 戦略という言葉を使うには、覚悟がいる。

  

投稿者 jun : 2006年11月 7日 07:33