名探偵ホームズ

 去年、仕事でイギリスにはじめて行った。会議・打ち合わせの合間に、ピカデリーサーカスを歩き、ビックベンを見た。

 なるほど、ここがかつて"世界の中心"と言われた場所なのか。白いの壁が続くピカデリーサーカス沿いの建物を見ながら、そう思った。
 と同時に、突然、脳裏に浮かびあがったことが、2つあった。

 その2つが、いわゆる文化的に「コレクト」で高尚なことだったとしたら、格好がついたのかもしれないけれど、あいにくそうじゃない。

 「結婚をしばしば宝くじにたとえるが、それは誤り。宝くじなら当たることもあるだろう」と答えたバーナード=ショーの皮肉。「男というものはいつでもそうだ。我が家から離れている時が一番陽気なものなのだよ」といったシェークスピア。

 僕のアタマに浮かんだ2つは、全くそういう類のものではなかった。ウィットに富んだ会話や台詞をあみだしたバーナード=ショーでもなければ、シェークスピアのカケラも思い出さなかった。

 僕が、思い出したのは、子どもの頃に聞いた2つの曲である。

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 街に流れてる 時計台の鐘の音
 霧が晴れたなら 窓をあけてごらん
 石だたみに影がのびる
 愛という名の足跡

 隠せないさ 僕の瞳は
 ホンの小さなことまで
 隠せないさ やがてHappy end
 キミのポストに届くよ
 空からこぼれたStory

(空からこぼれたStory) 
 
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 目覚めた ときには
 あなたの ベッドは カラッポ
 ヴェランダごしに 見えたよ 噴水
 
 何を見つけたか 教えて 散歩の 途中で
 引き返してくる 広場の 広場の噴水

 24時間 頭の中で ナニカが
 ダンスしている人なのだから
 24時間 瞳の中で ナニカが
 ダンスしている人なのだから

 (テームズ河のdance)

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 これらの曲は「名探偵ホームズ」のアニメ版で使われていた2曲である。透明な歌声で、ダ・カーポが歌っている。

ダ・カーポ ベスト http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00008Z6X0/nakaharalabne-22

 「名探偵ホームズ」は、コナンドイル原作の「シャーロックホームズ」をイヌに置き換えて、日本とイタリアの合同製作として1981年にスタートした。放映されたのは1984年。今から、21年も前の話しになる。

名探偵ホームズ
http://www.tms-e.com/library/tokushu/holmes/

 このアニメーションは、スタッフ陣の優秀さでも際だっていた。全26話のうち、6話は、「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」をつくった宮崎駿が担当したという。音楽担当は、羽田健太郎であった。

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 このアニメを毎週楽しみに見ていた頃、僕は小学校の3年生~4年生くらいだったと思う。
 蒸気自動車が石畳の道路を疾走する・・・まだ見ぬイギリスの街が、どうにもステキに思ったことを覚えている。

 僕がまだ子どもの頃、早朝、自宅の前を「荷物をひいた馬」が走っていたことを覚えているが、そういう北海道の風景とは全く違った光景であった。

 それから21年・・・。
 先日、CDを入手して、ipodで繰り返し聞いている。
 20年と言われると、どうにも実感がない。
 しかし、実感はなくとも、メロディのほんのさわりを聞けば、あの頃を思い出す。なぜか歌詞も口ずさめる。

 21年は遠い昔のことではないのかもしれない。

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追伸.
 先日、「教室にやってきた未来」(1995年・NHK)を、青山学院の学部生に見せた。コメントカードに感想を書いてもらい、今日受け取った。

 感想の中には、「今から10年前というと、わたしも同じ年齢でした。小学校4年生くらいの頃、こんなコンピュータをつかった授業はありませんでした」というものが数多くあった。

 そうか、あの頃の小学生が今大学生になっているのか。そして、今、教職をめざしているのか・・・。

 なんか感慨深かった。

投稿者 jun : 2005年11月30日 21:00


「先生の叫び」「英語カリスマ教師」

 どなたか、下記の2本のビデオをエアチェックなさっていた方はいらっしゃいませんでしょうか。うちのビデオの調子が悪く、撮れなかったのです・・・。

 どなたか、ビデオをいらっしゃいましたら、jun アットマーク nakahara-lab.net までご一報いただけるとうれしいです。

第14回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『カリスマ教師が行く~英語大好き人間養成計画~』 (山陰中央テレビ制作) <11月3日(木)3時18分~4時13分【11月2日(水)27時18分~28時13分】放送> http://www.fujitv.co.jp/b_hp/fnsaward/14th/05-347.html

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第14回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『先生の叫び』 (テレビ静岡制作) <11月2日(水)2時33分~3時28分>【11月1日(火)26時33分~27時28分】放送> http://www.fujitv.co.jp/b_hp/fnsaward/14th/05-344.html

投稿者 jun : 2005年11月29日 23:45


おやこdeサイエンス終わる!

 昨日、「おやこdeサイエンス」が3週間の全日程を終えた。最終の参加者は60名中58名。この場を借りて、参加者の親子の皆さんに感謝します。ありがとうございました。

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 またプロジェクトスタッフの皆さんにも、心から感謝いたします。プロジェクト実施のためにやりとりされたメールは、2000件。ようやくゴールにたどりつきました。

 これまで、様々な研究チームを組んで、共同研究にあたってきましたが、今回のメンバーとのコラボレーションは、本当におもしろかった。

 異なるカルチャー、時間感覚、ミッション、エキスパティーズ、年齢背景の人たちが、協力してつくった「3週間」だと思います。懇親会の挨拶で言ったのですが、まさに「異種格闘技プロジェクト」ですね。ステキな経験をありがとうございました、皆さん。打ち上げもハプニングはあったけど、楽しかった。

oyakopic3.jpg

 今後のことはといいますと、これから研究者チームは、3月までに報告のプレゼン&論文執筆をめざします。

 「おやこdeサイエンス」の研究成果報告会は、2006年3月25日 東京大学にて開催されます。もしご興味がおありでしたら、ぜひ、ご参加いただけると幸いです。

 なお、昨日の様子は、26日午後5時30分 フジテレビ「スーパーニュース」でもとりあげられました。また、2月後半には、某番組某こー名にて、「おやこdeサイエンス」の教材・イベント全体が紹介される予定です。

またわかり次第、お知らせいたします。

 「おやこdeサイエンス」
 最後に子どもたちひとりひとりに修了証をわたしながら、少しホロリときたよ。
 このプロジェクト、僕は一生忘れないと思う。

下記メモ、僕の研究備忘録。
・ケータイレスアナみたいな使い方も結構子どもにはウケたし、盛り上がった。
・子どもの学習通知を受けた親が、レスポンスをできる活動をデザインするべきだった

投稿者 jun : 2005年11月28日 21:18


ビートルズ

 今週のAERAには、ジョン=レノンの特集が組まれている。いろいろなひとたちが、思い思いにジョンへの思い出を語る。それを読んでいると、なんだか、僕もビートルズを聞きたくなってきて、ついipodの電源を入れてしまう。

 僕が「ビートルズ」に出会ったのは、今から20年近くも前、小学校2年生か3年生の頃でなかったと思う。

 近くに住む、いとこの「ターチャン」が、ビートルズ狂で、「じゅん、ビートルズはいいべ」「この曲もいいべ」と、なかば、言い聞かせられるように(洗脳!?)に聞かせてもらったのが、最初ではなかったか。

 当時は、レコードとテープが全盛の時代である。
 超有名なナンバー「Let it be」とか「HELP」とか「Yesterday」とかを、TDKのテープに録音してもらい、家に帰って聞いていたことを思い出す。

 もちろん、歌詞なんか全くわからない。

 「Yesterdayってどういう意味?」と親に聞いてみたら、すかさず「きのう」と答えてくれたものの、「じゃあ、この曲、全部でなんて言っているの?」ときくと、「もう夜遅いから寝なさい(笑)」みたいな。

 あと「Let it be」が「なすがまま」って意味だってことはわかったけれど、「なすがまま」って何よ?と素朴な疑問がまた増えるみたいな感じ。

 右も左もわからんけど、とにかくビートルズはいいんだ!
 そういう風にして、僕もビートルズ好きになっていきました。

 ビートルズのナンバーで僕が好きなのは、特に「初期」に集中している。初期のビートルズは、本当に「エッジイ(edgy)なヤツラ」だったのですね。

 労働者階級の中心地、リバプールからなぐりこみをかけ、「僕らはいまやキリストより有名だ」とうそぶくまで、彼らは、一心不乱に成功の階段を駆け抜けた。

 下記は初期のナンバーから数曲。

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 「I saw her standing there」

 Well she was just seventeen
 You know what I mean
 And the way she looked
 Was way beyond compare
 So how could I dance with another,
 Oh, when I saw her standing there

 「どうして他のイ○ネーチャンと踊れるっていうんだよ?」っていうからにはさ、よほどきれいな娘だったんだろうね。

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 「please mister postman」

 Oh yes, wait just a minute mister postman
 Wait, wait mister postman
 (Mister postman look and see) oh yeah
 (If there's a letter in the bag for me)
 Please mister postman
 (I've been waiting a long long time)oh, yeah
 (Since I heard from that girl of mine)

 There must be some word today
 From my girlfriend so far away
 Please mister postman look and see
 If there's a letter, a letter for me

 あの娘からの手紙を待っているんですね。「お願いだ、郵便屋さん、オラに手紙をくれよ」と言っている。このころは、もちろん、郵政民営化は話題にのぼっていないだろうね。

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 「Please please me」

 Last night I said these words to my girl,
 I know you never even try, girl,
 C'mon...
 Please please me, whoa yeah, like I please you.

 「僕を喜ばせてくれ」っていう歌ですね。やはり、このころは「喜び組」があるわけじゃないけれど。

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 まぁ、どうでもいいんですが、こんな感じで、初期ビートルズっていうのは、とても青いのです。

 日本でいえば、舟木カズオの「高校三年生」や、青い三角定規が「太陽がくれた季節」を歌っちゃうみたいなノリ!? うーん、僕の中では違うんだけど、とにかく青くて、トゲトゲしていて、いいですね。

 ビートルズの英語は中学生でもわかりますから、英語の勉強にもなります。
 J-POPにあきたら、彼らのデビューアルバム「Please please me」とかを聞いてみてください。

 きっと、いつかの「懐かしい感じ」が目の前に広がるから。

投稿者 jun : 2005年11月27日 10:46


研究者を困らせる方法

 あなたは、「研究者を困らせる方法」を知っているか? そんな方法を知らなくとも全然生きてはいけるけど、雑学として知っていても、損はないと思う。

 「研究者を困らせる方法」...それは、その研究者の専攻分野の、もっとも中心的な概念を問うことである。これがもっともシンプルでいて、最も確実な方法である。

 たとえば、あなたが困らせたいのが文化人類学者ならば、こう問うてみるがいい。

 「文化って何ですか?」

 心ある文化人類学者が、その問いを聞けば、きっと、「文化の定義にもいろいろあってですねーゴニョゴニョ」という風に、困った顔をするだろう。

 それと同じように、経営学者であるならば、

 「結局、経営とは何ですか?」

 教育学者であるならば、

 「学習とは何ですか?」

 と聞くことである。心ある教育学者ならば、「学習ねぇ・・・学習ですか・・・うーん、まぁ3つくらい考え方があってですね、最近4つめが生まれてきていますね、でも、僕はそれはどうかと思っていてデスね・・・ゴニョゴニョ」というだろう。

 そこで、一刀両断、全くの迷いもせずに、定義をスラスラと教科書的に答えることのできる研究者がいたとしたら、その人は、本当に「スゴイ人」か、はたまた「勉強不足の、何も悩みがない研究者」であると僕は思う。

 前者であるならばいいのだけれども、たいていは後者だ。後者の場合は、あまり信用してはいけない。

 学問の最も中心的な概念は、いつの時代も論争の的である。いろいろな研究者が、それを見極めようと日々邁進している。そういう意味では、定義は日々変わっている。

 勉強不足の研究者は、そもそも、その論争を知らない。自分が博士号を取得した当時の定義を後生大事に抱えて、諳んじている場合がとっても多い。あるいは、自分の「お師匠さま」の定義を、そのまま信じて疑わない人もいる。

 そういうわけで、「研究者を困らせる方法」は「研究者を見極める方法」でもある。

 僕には使わないでください。

投稿者 jun : 2005年11月26日 21:22


新規提案

 近くのイタリアンレストランで、カミサンと食事した。10月から11月にかけて、お互いに本当に忙しく、ゆっくり食事をしながら二人で話したのは、本当に数ヶ月ぶりかもしれないなと思った。彼女は、自分の番組が明日オンエアされるというので、大変機嫌がよく、顔には、達成感が垣間見られる。

 しかし、ひとつの仕事の終わりは、はじまりでもある。

 晩秋は新規提案の季節だ。それは、テレビディレクターであれ、研究者であれ、変わらない。ディレクターであれば、A4一枚に番組の提案を書く(A4一枚で伝えられない番組は、コンセプトが甘い、絞り込めてないってことである)。研究者ならば、開発 - 実施 - 評価からなる、一そろいのリサーチプランをたてる。

 こういうとき、僕はひとりで考えない。

 否、正しく言うならば、「僕はひとりで考える」
 だけれども、「僕はひとりで決めない」

 僕の研究計画や、開発物に、実は、こうしたカミサンとの会話、そこから得た情報が反映されていることはまことに多い。少なくとも、僕の企画の「世間離れ」したところを指摘し、一般の人だったらこうする、というインスピレーションを与えてくれている。また、「こんなものが流行っていんねんでー」という感じで、関連するものを教えてくれたりする。

 逆もまた真なり、彼女の企画に僕のたわごとが役立っていると言いたいところだが、そのあたりは、かなり心許ないけれどね。

 もちろん、僕が話を聞くのは彼女だけではない。ある程度、話が固まったら、心を許している同僚研究者、関係する業界人などに、話をきいてもらう。そこで、よいアイデアをもらうことが本当に多い。気づかなかったことを指摘されたり、ステキなテクノロジーを紹介されたり。

 「重箱のスミをつつくような研究」は重要である。そうした研究の積み重ねの上に、誰かの肩の上に、次の時代がつくられる。しかし、どうせやるんだったら、オモシロイことがしたい。

 かくして僕の研究は、対話の中から生み出される。
 そういう意味では、「飲み屋」って重要かも。

投稿者 jun : 2005年11月24日 09:04


矢沢永吉

 「情熱大陸」を見た。

 今年、原点にかえる意味で、ライブハウスでの全国ツアーを行う矢沢永吉をとりあげていた。歯に衣をきせないストレートな物言い、全身からあふれる自信、そして余裕。とても56歳とは思えないエネルギーを感じた。

 いやぁ、この人はキャラがたってる。僕は別にYAZAWAの熱狂的なファンではないし、彼の歌は一曲もしらないけど、彼のパフォーマンスには、久しぶりにドキドキするものを感じた。

 番組の途中、印象的だったシーン。

 27年前、20代最後の年に持論を語っていた自分のインタビュー映像を見せられ、彼はこういう。

プロデューサーとしてみたときに、こいつは絶対サクセスすると思いますよ。だって、コイツ、少しもブレがないもん。

 そんな彼でも、売れない時期は不安で不安で仕方がなかっという。とにかく、「いつかビックになってやる」という思いを胸に、ライブハウスで歌う毎日が続いた。

 若い頃、曙光すら見えぬ自分の未来に、不安を感じない若者はいない。だけれども、そんなとき、ブレないでいられる人は、そう多いわけではない。

 そういう奴が勝つんだ、結局は。

投稿者 jun : 2005年11月23日 23:39


ふふふ

 酔っ払った学生に、先日、こんなことを聞かれた。泥酔していたため、その学生は、そういう問いを僕に投げかけたことすら、全く覚えていないだろう。だけど、その言葉、あまりに直截すぎて、僕の心には深く刻まれた。

「中原さんは、なぜ研究したいんですか?なぜ大学にのこって研究者をやろうと思ったんですか?僕にはそれがわからない」

 これは簡単なようで、なかなか深い問いである。
 「わたしはなぜ研究するのか」・・・食うためだよ、好きだからだよ、なんとなくだよ・・・いろんな答えが思い浮かぶ。

 しかし、僕はこう答えた。

 「僕がやらなかったら、誰がやりますか? 僕は、教育の世界で、そういうことをやりたいのです」

 将来は、誰もやらないことがやりたい。
 かなわぬ願望、自分の能力をかいかぶった不遜な夢かも知れぬが、僕は学部生の頃から、いやいや、物心ついた頃から、そう思い続けてきた。ひとつ間違えば、完全なる社会不適応だったかもしれない。しかし、自分がもしかすると代替不可能な人になりうること、否、そう信じつつ生きることに、僕はかけてみたかった。

 酔っ払って意識が朦朧としている学生に、真面目に語ったつもりではある。
 ふふふ・・・学生は笑っていたけれども。
 「青いな、こいつは」と思われたかな。

投稿者 jun : 2005年11月22日 23:13


いたずら

 誰だ! オレのWebカメラに「まゆげ」書いたヤツは(笑)。

IMG_4681.jpg

 お茶目ないたずらしやがって。
 でも、ウケたから許す(テレビ会議中に気づいた)。

投稿者 jun : 2005年11月21日 19:47


未来のデザイン

 ここ数年ほど、ホソボソとですが、「企業を対象にした教育学研究を本格化させましょうよ」という主張を、僕はしてきました。

ここからはじまるわたしの研究
http://www.nakahara-lab.net/researcheressay12.html

 まず手始めに、ということで、去年、「ここからはじまる人材育成」という本を、中央経済社から出版させていただきました。

ここからはじまる人材育成 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4502375403/nakaharalabne-22

 その続編ということではないのですが、今度は、「人材育成担当者が手にするテキスト」みたいなもの執筆しよう、ということが、どこからともなくわき上がり、実は、5名の著者でそれを書いています。

 労働経済、キャリア論、コミュニティと学習などに強い荒木さん@東京大学、企業人材育成の実務とIDに強い北村さん@熊本大学、IDとネットワーク技術関係に強い橋本君@青山学院大学、経営学や企業人材育成の現場に明るい長岡さん@産能大学、そして僕の5名です。

 通常、こういうテキストの執筆ということになりますと、「最初に原稿を割り振って、あとは持ち寄る」みたいな感じが多いですね。割り振ったあとは、他の人が何を書いているかはわかりません、みたいな感じが多いのです。

 ですが、わたしたちは今回違ったアプローチをとりました。「じっくり書く」ことを主眼においたのです。月に2度ほど、東大に集まって、お互いの書いたものを持ち寄り、批評し合いながら書くというかたちで執筆しています。

 はっきり言って、これはツライです。よっぽど、いっきに原稿を持ち寄った方が楽。まずは全員超忙しいので、時間をあわせるのも一苦労です。また、定期的に原稿執筆が回ってくるというのは、少しずつボディブローを食らわされてるようで、結構、キクんですね。

 いったん原稿ができたとしても、他のメンバーからコメントがはいったり、「じゃあ、ここふくらまして、もう1節増やしましょうか(笑)」という意志決定がなされたりします(ごめんなさい・・・皆さん)。

 ですが、このプロセスは、僕にとっては非常に勉強になりました。皆さん、専門性の違う人たちからもらうコメントも、ためになった。

 まぁ、それ以上に愉快だったのは、「これから新しい研究領域をつくるのだ」ということを、一緒に本気で語り、時にはその戦略なんかを話し合うことができたのは、オモシロかった。

 実は、わたしたちの本の1章に「201X年の人材育成は?」という章があるのですが、先日は、この章のことで大議論になりました。

 要するに、あと10年後、「企業における学び」はどうなっているのだろうか。それを、海外の事例(長岡先生はイギリスでPh.Dを取得なさっているので、イギリスの事情にお詳しいのです)や、国内の企業の雰囲気から、予想するといったものです。

 その成果は本で、北村さん@熊本大学が、執筆なさるので、お楽しみに。僕らの予想は、結構あたるのではないかな、と思っています。

 が、いずれにしても、そういう「企業と学習」のことを、未来志向的に語る場がもててよかったと思っています。

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 僕は、自分のめざす<教育学研究>は「未来志向」でありたいと思っています。

 他の人はどう思うか知りません。まぁ、細かい議論は、僕に飲み屋で議論をふっかけてください。ここでは、その弊害も限界も知った上で、そう思っていることだけ、述べておきます。

 まずは過去を知り、今を知るのです。
 ヴァイツゼッカー演説ではないのですが、「過去に目を閉ざすものは結局のところ現在にも盲目」なものです。そして、数ある先行知見の上に、時局をよんだ上で、新たな学習環境や、教育の可能性デザインする。

 「今まで教育の問題とは思われなかったものに、教育の視点を導入する」「今まで、誰もが着手しなかった領域に、教育や学習のエッセンスをつたえ、えっ、こんなのもありなん?」と思わせる。

 一見場当たり的に見えるかもしれない僕の研究スタイルですが、このポリシーを戦略的に実行し、研究をしているつもりです。

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 今回の本は、おそらく来春に、ダイアモンド社から公刊されます。手前味噌かもしれないけれど、「人材育成に関係のある理論」はほとんどが収録されていると思います。

 そして、それが終われば、次のチャレンジです。
 次は、どんな未来をデザインしようか。
 
 未来を思い描いてくれる人たちとの、まだ見ぬコラボレーション
 週末、原稿執筆をしながら、研究室の窓の外に、そんな愉快な光景を<見て>います。

投稿者 jun : 2005年11月20日 17:05


とげ抜きとジョブズ

 僕のネタ帳であり、荒木淳子さんも愛読する「AERA」!
 今週は、オモシロイ記事がありましたね。

「とげ抜きの愛と性-アンチエージングな恋愛風景を歩く」

「スティーブ・ジョブズになりたい-アップル成功の5原則」

 「とげぬき」は、要するに巣鴨界隈にたむろする、高齢者の恋愛模様のお話です。お盛んである、と。高齢者ときくと、性とか愛とか、なんだか無縁の世界のように思えるけど、違うんですね。まぁ、これをもって過剰な一般化をするのは危険だけれども。

 でも、より性に関してオープンになっている、僕らの世代、下の世代が高齢者になったらどうなるんだろうね。「とげ抜き」だけじゃ、足りないぞ。でも、その頃は、日本は「人口減少経済」まっただ中で、もう街も様変わりしているだろうから。渋谷とかが、「とげ抜き化」するのかも、と思いました。

 「スティーブ・ジョブズ」はね、彼はかっこいいですね。やはりあこがれるよねぇ、ジョブズには。

 いろいろ言う人いるのですが、とにかく、僕は彼のプレゼンテーションが好きです。

プレゼンテーション http://stream.apple.akadns.net/

 直接的で、わかりやすく、オモシロイ。
 これヒアリングしてみてください。日本人にとって、彼以上にわかりやすい英語はないと思うんです。まさに「Awesome!」だ。

 彼みたいにプレゼンできたら、どんなに人前で話すの、楽しいだろうねぇ。

投稿者 jun : 2005年11月19日 07:16


舌足らず

 どうも、最近「舌足らず」になっている気がしてならない。

 とにかく時間がないから、メールの処理でも、連絡事項でも、「自分が要点だと思っている箇所」しか言わなくなっている気がする。

 あと、さらに悪いことに「あーあーあー、あれさ、あの件、あれでいいからさ、よろしく」みたいな感じで意味不明な指示語が多くなっている。この指示語連発の最大の被害者は、うちのカミサンや、中原研究室の人々だと思うけれど。

 そういえば、ちょっと前、昔の日記とか、昔書いたメールとか読み返したんだけどね、僕、昔はよく「書いて」いたのですね。

 かなり気合いをいれて、ちょっと小粋なレトリックとかをひねりだしてた(かなり考えたと思うけど、しょーもないことを)。

 最近のメールになるとさ、

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 ナカハラデス。
 下記了解。

 ---

 みたいなのが多いんですよね。ほとんど脊髄反射に近い。もちろんちゃんと読んでいるんですよ。でも、小粋さがないよねぇ。でも、そのくらいで処理しないと、処理できないんだよねぇ。

 こう書いていくと、なんか、「つまんない人」になっている気がして、自己嫌悪だわ。

 でも、細かいことを今更ガタガタ言ってもねー。あと、自分も、長いメールとか読まないしねー。僕的には、要点だけ一番上に書いてあるのが助かる。

 とはいえ、まずは「ナカハラデス」はやめるか。
 「ノダメデス」から着想を得たんだけど。

投稿者 jun : 2005年11月18日 06:50


「おやこdeサイエンス」、海を越えるか!?

本日(15日)発売のデイリーヨミウリのサイエンス(p12)に、「おやこdeサイエンス」が掲載されました!

以下は、記事のWeb版です。

デイリーヨミウリ http://www.yomiuri.co.jp/dy/features/science/20051115TDY12003.htm

 「おやこdeサイエンス」は、すでに2週目のカリキュラムに突入しています。1週目のカリキュラム修了率は実験によっては100%。平均的には90%の修了率を誇っています。この修了率は、オンライン学習としては、驚異的な数字だと思います。

 本日は、東京でワークショップチームによる運営会議が開催されました。僕らも、最高のステージをつくるため、親子がステキな時間をすごせるよう、一生懸命にがんばっています。本当にメンバーの方々の尽力には、アタマが下がります。ここで述べるのも変かもしれないけど、ありがとうございます。

 3週間後、子どもたちが、どんな顔でワークショップにきてくれるか、今から楽しみです。

追伸.
 今日は「おやこdeサイエンス」の会議終了後、大房さん、中野さんと飲みました。「僕らが自身がやってみたいと思わせる教材をつくりたい!」という話しで、盛り上がりました。またもや飲み過ぎ。アタマ痛しです。
 明日は関西大学で講演で、6時起きです。明日は明日で、大阪大学大学院の頃の仲間と飲むことになっています。明日あう人は、この秋から、ある株式会社立のMBA系大学院に通っている。まさにeラーニングで学ぶ学生です。明日も楽しみだ。

投稿者 jun : 2005年11月17日 22:54


【研究会】Aクラス人材を育成せよ:企業eラーニング

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 NAKAHARA-LAB.NET M@il Magazine
 2005/11/14
 Jun Nakahara
 ※このメールは転載自由です。
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■ご案内

 12月のBEAT公開研究会は、コラボ企画です!

 企業内教育の分野で先進的な教材を企画・開発な
 さっている産業能率大学と、東京大学BEAT講座が
 手をむすび、
 
 「Aクラス人材を育成せよ:
      企業eラーニングの現在」

 という公開研究会を開催したいと思います。
 
 株式会社デンソー様、また某コンビニエンスストア
 の事例を紹介する一方で、それに関係する学習理論
 を研究者が解説します。

 参加申し込みをしていただければ、入場は無料です。
 是非、ご参加ください。

              中原 淳(東京大学)

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東京大学大学院 情報学環 BEAT講座 公開研究会
「Aクラス人材を育成せよ:
   企業eラーニングの現在」
12月3日 土曜日 午後2時より 東京大学にて
============================================

●日程:
 2005年12月3日(土)
 午後2時より午後5時30分まで

●場所:
 東京大学 本郷キャンパス 情報学環
暫定ANNEX 2F教室
 http://www.beatiii.jp/images/sem13-map.gif
 
 ※なお場所は変更になる場合がございます。
  いずれも本郷キャンパスです

●定員:
 50名限定

●内容:
 「教育学のヘレンケラー:企業eラーニング研究序説」
  中原淳(東京大学)

 「株式会社デンソー様における
  異文化コミュニケーション教材の開発(仮題)」
  上村 浩司氏(株式会社デンソー)(依頼中)
  研究者からのコメントと解説(未定)&質疑

 「ロールプレイング型eラーニング教材の開発」
  某コンビニのスーパーバイザー養成教材
川口 啓氏(産業能率大学)
研究者からのコメントと解説(未定)&質疑

 「企業eラーニングの現在・過去・未来」
  古賀暁彦氏(産業能率大学)

  休憩

  ディスカッション

  懇親会(公開研究会終了後)


●参加方法
 参加費は無料です。
 参加希望の方は、BEAT Webサイト
 http://www.beatiii.jp/seminar/
 にて、ご登録をお願いいたします。


●問い合わせ他
 この案内は、自由に転送していただいて結構です。
 本件に関するお問い合わせは、担当:佐藤
(sato@beatiii.jp)までお願いします。

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NAKAHARA-LAB.NET M@il Magazine 2005/11/14
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お問い合わせは、下記までお願いします
中原 淳(東京大学 大学総合教育研究センター)
mailmagazine@nakahara-lab.net
NAKAHARA-LAB.NET http://www.nakahara-lab.net/
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投稿者 jun : 2005年11月16日 14:40


「大学教育の情報化」マネジメント

 某社の大房さん、鈴木さんと工学部、情報基盤センターにお出かけをする。お二人は密かに、東京大学の「教育の情報化」の成功を握っているキーマンである。大房さんには、TREEプロジェクトの顧問に就任していただき、Web、ビデオ、音声・・・様々なMedia productionを業務委託している。

 けだし、「大学教育の情報化」は、大学内部だけのリソースだけで達成するプロジェクトではない。否、大学内部で十分な人的リソース、物的リソースを確保できない以上、そうせざるを得ないのだ。
 大学の外部にいる専門性をもった人たち、そして、先進的なモノゴトに興味をもつ企業、そういう外部との回路をつくりあげることが重要だ。

 ただし、誤解をさけるために言っておくが、「すべて外部から」というのも全くの間違いである。
 「大学の教育をより魅力的にすること」はまず内部から提唱され、組織体制と意志決定プロセスを確立必要がある。これが外部との「回路」を支えるバックボーンとなる。
 「大学内部」と「大学外部」が、お互いにメリットを感じるWin-win関係を築けたとき、そして、そこに情報のサーキットが生まれたとき、はじめて「大学教育の情報化」という巨大プロジェクトが、ようやく立ち現れる。

 一人でできることは限られている。
 だからといって、やみくもに人を集めればいいわけじゃない。
 そこには、戦略的なマネジメントが必要である。

投稿者 jun : 2005年11月15日 12:53


コンテンツの囲い込み

 新しいメディアがこの世に登場するたびに、繰り返されるのが「コンテンツの囲い込み」というやつです。

 要するに、これまで既存のメディアで利用されていたもの、たとえば、番組、音楽といったものが、新たなメディア上でも利用できるように、作り直されたり、権利処理されたりするのです。

 そういうプロセスをへて、なるべく多くの「コンテンツ」を独占したものが、新しいメディアでの覇権を握ると考えられているのです。コンテンツホルダーのもとに、将来の儲けを夢見る企業が殺到します。

 この世界は先行投資による利益独占がモノをいいます。いったん囲い込まれたら、あとから挽回することはとても難しいのです。ネットの世界では、ひとつのサービス領域に、1つの有名なサイトがあればよいのです。だから、どんなにカネをつんでも、有力なコンテンツを、今、囲い込もうとするのです。

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 でも、話しはそう簡単ではありません。

 「今までのものを作り直したり、権利処理するのは、新しいものをゼロからつくるよりも、費用や労力がかかったりする」ことが多いのです。

 特に権利処理の場合は、深刻です。

 よく「これからコンテンツの時代になる・・・だからコンテンツを持っているものが勝つのだ」といいますね。これは半分はあたっているけど、半分はウソです。

 たとえばテレビ局などは「コンテンツの著作権はもっているかもしれませんが、二次利用する際には、新たに権利処理を行う必要」があるからです。それが異常なほど煩雑なのです。

 つまり、「コンテンツは持っているけど、使えないものが多い」のです。その意味では、ほとんど「持っていない」ことと同義かもしれません。

 将来、二次展開やMM戦略をとるものは、最初からすべて権利を押さえないとダメなのです。最初ですべての勝負はついているのです。

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 このところ、コンテンツ業界が動いていることをヒシヒシと感じます。

 僕は大学の人間ですので、もちろん、それに直接関わっているわけではありません。ただ、仕事柄おつきあいする方の話しを聞いたり、うわさ話を耳にしたり、はたまた彼らの動きを見ていると、イヤがおうでも、そう感じてしまうのです。カミサンとも、そうした話しをよくします。

 先にも述べましたとおり、多くの場合、コンテンツは再利用が難しいものです。権利がクリアでない古いものを処理するくらいなら、新しいものをくった方が、話しが早いことが多いといいます。

 とはいえ、予算は無限にかけられるわけではありません。新たなコンテンツの開発費を回収可能な額にするためには、開発の初期投資を押さえる必要があります。

 ということは、低予算でクオリティの高いものがつくれるクリエータが注目されます。「低予算でクオリティの高いものがつくれる」ということは、どういう意味でしょうか。端的に言ってしまうと、「創作を行ううえで、あまり分業をせずに、自分ですべての工程をやってしまえる人」ということだそうです。

 しかし、当然、そういう人は決して数がいるわけじゃない。たとえば、アナログで絵もかけて、デジタルにも強くて、映像のこともわかる・・・みたいな人は、限られているのだそうです。

 そんなわけで、みんなが、そうした人のところに殺到するのだそうですね。

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 しかし、「コンテンツの囲い込み」の歴史は、ビジネスとしての失敗の歴史でもあります。

 最初は世間に注目され、消えていくメディアの数に思いをはせてみてください。その背後には、無数の、誰の目にもとまらなかった、囲い込まれたコンテンツがあるのです。
 そういう意味では、コンテンツビジネスとは、かなりバクチに近いものだとも言える気がします。

 コンテンツまわり - コンテンツの製作者たちは、自らがつくったものを「コンテンツ」といわれることには抵抗を示す人が少なからずいるでしょうね - が熱いと思います。本当に目が離せません。

 何が生き残り、何が消えゆくのでしょうか。
 それは誰にもわからないのですから。

投稿者 jun : 2005年11月14日 01:25


日本の教育を論じる!?

 先日放送された某テレビ局の「日本の教育」を「論じた」番組には、本当に失望されられた。映画人としては尊敬している人が司会の番組だったので、とても期待していたのだが、途中でムカッパラがたってきて、見るのをやめた。

 「脳」への能力還元主義
 「ゆとり」か「つめこみ」かに代表される二元主義
 欧米の教育を「善」とした啓蒙普及主義

 番組を構成する、ほとんど要素が、いわゆる「教育の論説空間」を構成するステレオタイプであり、それ以上でもそれ以下でもないと思った。さらには、そうしたステレオタイプに基づき、<良心的>に危機意識をあおりつつ教育を論じる態度、すぐに教育問題の「悪者さがし」をする態度が、どうにも気になった。

 こう言うからといって、僕は、別に商業放送に厳密な教育学的議論が必要だと思っているわけじゃない。
 それは演出される世界であり、魅せる世界である。別にそれは悪いことだとは思わないし、大いにそうすればいいと思う。

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 ただ、この構成表を書いた人間は、本当に教育のことを少しでも自分で勉強して、自分のアタマで考えて、番組をつくったのだろうか。そこが気になる。

 かの人は、世にあふれる教育のターム、文言をすべてひろって、人々の危機感をあおるよう再配置しただけなのではないだろうか。そう邪推せざるを得ない。かくも<教育問題>を<つくりあげること>は簡単なのかと思うと、腹がたってくる。

 それより何より、番組の冒頭で、僕がカチンとキレたやりとりがあった。

 ある教育評論家が、ある教育問題を論じるとき、どっちつかずのやりとりをする。

 「○○の問題は、教師が悪いわけではなく、親が悪いのではなく」

 といったかたちのやりとりである。
 そうすると、彼はひとりの出演者(コメディアン)からつっこまれる。

 「また、そうやって、どっちつかずの意見で・・・」

 次にもう一人の教育評論家が、やはり誠実に「どっちつかずの意見」を述べる。発話の冒頭で、彼は「すみません、やはりどっちつかずの意見で」と聴衆に謝る。

 ここで彼らが「どっちつかず」であることでつっこまれ、謝らなければならない理由は何か?合理的な理由は見あたらない。

 要するに、そのほかの出演者がやっている「誰か悪者を探して、バッシングすることに与しない」から、つっこまれ、謝らなければならないのである。誠実なコメントは、もはや求めようもない。

 かくして、また、ひとかけらの根拠のない「学校バッシング」「教師バッシング」がはじまるのである。

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 教育の問題は、すべて複合的な構造をもつ問題である。

 それは教育を構成する要素、教師、教材、親、子どもがからみあい、また、多分に政治的な問題でもあり、経済的な問題でもある。「どっちつかず」になるのは、そもそもアタリマエなのだ。

 もちろん、僕は、テレビで、そうした「複合的な問題群」をすべて扱ってほしいわけじゃない。そんなことをしたって伝わらない。そういう問題群の探求は、教育学者や専門家がやればいいと思う。

 だけれども、誠実な「どっちつかず」のスタンスがたたかれ、根拠の薄い「悪者探し」がはじまり、また教師、学校が疲弊していくのは、見ちゃいられない。

 彼らが疲弊し、自信を失う。そうすると、教育現場が沈滞し、時には荒廃する。教育が荒廃すれば、長期的には社会や秩序にダメージを与える。否、今の世の中、長期的にというのはウソである。教育の荒廃は、そう遠くない未来に、社会に悪影響を与える。そして、そうなったら、最終的に困るのは我々である。

 「うちにはカネあるから、優秀な私立校に子どもをやればいい」と思っている人もいるかもしれないが、社会はアナタの子どもだけで構成されているのではない。
 アナタの子どもは、アナタの子ども以外の人々に囲まれ、彼らとコミュニケーションをとりつつ、彼らと生きていく必要があるのである。アナタの子どもが生み出す富は、他の誰かに再配分される。そういう意味では、みんなつながっているのである。

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 たとえ民放であっても、もうちょっと誠実に教育を扱って欲しいと思う。 僕はテレビが好きだ。NHKも民放も、よく見る方だと思う。
 いつもは、馬鹿笑いしてテレビをみている僕であるが、久しぶりに、アタマにきた。

投稿者 jun : 2005年11月13日 09:55


Web2.0

 いつから始まったのかしらないけれど、Googleが「パーソナライズホーム」というサービス(自分だけのニュース一括表示機能!?)をはじめているのを知り、使ってみた。

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 ZD-NETやASAHI.COMなどのニュースヘッダを一覧して見ることができるのは、本当に便利である。早速、僕のIEのホームページは、これになった。

 それにしても、このところ、Web2.0系のサービスが本格化してきたことをひしひしと感じる。Gyaoやpodcasting系のコンテンツ系も、元気だ。これらが合わさって、新しいサービスが生まれている。

 こうした最新テクノロジーを、どのように活用して、オモシロイ教育環境を実現するか。ブツブツ言いながら、最近、そんなことを夢見心地で考えている。

 夢は夢である。
 しかし、夢なしでは現実は生まれない。

投稿者 jun : 2005年11月12日 00:46


ジェットコースター・ウィーク

 はぁ、この週にあったこと、いったい何から話せばよいのか・・・。

 と思うほど、出来事満載、まさに「シートベルトなしでジェットコースターに飛び乗った」ような週であった。

 「おやこdeサイエンス」は、本格的に「親子での家庭学習」がはじまっている。初回の課題は、ほぼ9割近くがもう課題をすましたようだ。怒濤のような週末のワークショップをおえ、運用にはいったら、いろいろとサポート体制に不具合がでてきた。そこまでアタマが回らなかった。猛省、中原淳、修行の身である。本当に申し訳なく思う。

 IT MEDIAに「おやこdeサイエンス」の記事が掲載された。どうぞごらんください。

IT MEDIA http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0511/11/news083.html

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 あとは、マイクロソフト先進教育環境寄附講座のプレスリリースが非常に大きかった。この案件、実は夏前から密かに準備は進めていたのだが、その調整、交渉が今週本格化している。

マイクロソフト プレスリリース http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=2480

 「教育の情報化といえば、東京大学」と言ってもらえるようなプロジェクトを生み出す土台、環境整備をするのが、今の僕の仕事である。裏方仕事であり、今、自分がやっていることを口にだせなくてストレスフルではあるが(僕は思ったことはすぐに口にだしてしまう性格なのです・・・)、プレイフルな研究環境になるよう、最善をつくしたい。

 そういえば、今週なぜか、TIMEをはじめとして、いくつか取材を受けた。掲載されるかどうかはわからないけど。

 そして週末も仕事は続く。
 今週は、2回監禁されたけど、来週は軟禁くらいにしてもらおう・・・。

追伸.
 会議終了後、山内さん、久松君、北村君と千石「まさひろ寿司」にいった。とてもおいしかった。特に、アナゴとウニは絶品であった。

投稿者 jun : 2005年11月11日 23:14


医師を育てる:最先端の医学教育事例

 11月のLearning bar@Todaiは、京都大学大学院
 博士課程・医師の三原華子さんをお招きして、
 
 「医師を育てる - 国内外の卒前・卒後医学教育
 :過去・現在・未来」

 というタイトルでディスカッションを深めたいと思います。

 医師を育てる研究領域は、医学教育ということになります。
 この領域は、教育学とはまた違った、しかし、ところによって
同じような発展をしているようにしているように思います。

 フォーカスをしぼった集中的なディスカッションの機会に
 したいと思います。

 参加は無料です。
 是非、ご参加ください。

 中原 淳

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Learning bar@Todai
「医師を育てる - 国内外の卒前・卒後医学教育
:過去・現在・未来」
2005/11/25 東京大学 中原研究室
================================

●日程:
 11月25日 金曜日 午後6時30分から

●場所:東京大学大学院 中原研究室
 http://www.nakahara-lab.net/map/nime_map.html
 ※入口は暗証番号のロックがかかっています。入り口に
 お着きになられましたら、03-5841-2015までお電話を
 お願い致します
 
 ※なお場所は変更になる場合がございます。いずれも
  本郷キャンパスです

●定員
 20名

●参加方法
 参加希望の方は、atusaka@educetech.orgまでご連絡
 ください。人数が多い場合、抽選となる場合がございます。
 11月15日には結果をご発表いたします。

●参加費
 無料

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投稿者 jun : 2005年11月 9日 13:46


マイクロソフト、東京大学に寄附研究部門設置

マイクロソフトと東大、ITを活用した次世代の大学教育環境創造で提携
ITを活用した次世代の大学教育環境の創造について
東京大学とマイクロソフトが提携
~マイクロソフトの寄附研究部門を東京大学内に設置~

 マイクロソフト株式会社(本社:東京都渋谷区)と東京大学(本部:東京都文京区)は、ITを活用した次世代の教育環境の研究を推進するため、提携しました。今回の提携を通じて両者は、マイクロソフト先進教育環境寄附研究部門(仮称)を東京大学内に設置し、タブレットPCをはじめとする先進的なITテクノロジーを活用して、従来の大学教育のあり方を変える新しい教育環境の研究開発を行います。

 本件は、2005年6月に両者が締結した提携関係を発展させた研究プロジェクトです。また、東京大学における新しい教育環境の構築を目指すTREE (Todai Redesigning Educational Environment)プロジェクト(注)の中核的なプロジェクトとして位置付けられています。

(注)TREEプロジェクトとは、各学部・研究科・教育部の協力とニーズに基づき、「情報通信技術を活用した教育環境整備」を推進する東京大学全学プロジェクトです。「ITと教育」に関する最新の研究成果、他大学の動向を把握する一方で、世界のリーディングユニバーシティとして、「未来の大学教育環境のあり方」を社会に広く提案することを目指しています。

TREEプロジェクト
http://tree.ep.u-tokyo.ac.jp/


【 提携の概要 】

□形 式:マイクロソフト先進教育環境寄附研究部門(仮称)の設置
□期 間:2006年4月より3年間
□予 算:3年間で1億2千万円以上
□研究内容:

(1)新しい大学教育環境のデザイン
 教育空間、教授法およびタブレットPCを中心とするITデバイスを統合した新しい大学教育環境を開発する。教育効果の評価と検証を行い、新しい教育環境のモデルをつくる。

(2)新しい教育ソフトウェアの開発
 タブレットPCを中心とするITデバイスを大学教育の中で効果的に利用するためのアプリケーションソフトウェアを開発する。学内公募により自然科学、社会科学等を問わず、幅広いニーズを発掘し、先端的なキラーアプリケーションを開発する。

(3)教育の情報化に関する基礎研究
 国内の他大学との連携を図るとともに、国際共同研究を推進する。また、全学情報基盤整備のための基礎研究を行なう。

日経プレスリリース
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=115013&lindID=1

マイクロソフト プレスリリース
http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=2480

*Microsoftは、米国 Microsoft Corporationの米国及びその他の国における登録商標または商標です。

投稿者 jun : 2005年11月 8日 21:03


「おやこ」、初日ワークショップ終わる!

 「おやこdeサイエンス」ワークショップは終わった。
 なんだか、興奮状態でというか・・・。僕は、今、大地に足がついてないような感覚のまま、この日記を書いている。

 ワークショップは終わった。
 だけれども、「おやこdeサイエンス」が終わったわけじゃない。
 今回のワークショップを皮切りに3週間の自宅での学習がはじまるそして、3週間後にはもう一度都内でワークショップを行う。
 サポートは気を抜けない。
 そう、「終わりははじまり」なのである。

 とにかくこのプロジェクトは大変だった。というか、大変である。
 カリキュラム開発、システム開発、コンテンツ開発、ワークショップ開発、テキスト開発、テスト/評価手法開発という6つのエレメントを「統合」しなければならなかった。関与したスタッフはゆうに50名近い。僕もいろいろ修羅場をくぐり抜けてきたけど、これほどまでに、多くの人々がかかわり、そして統合が大変だったのは、はじめてだった。結果、及ばずながら、うまく統合できなかったところもいくつかあったが、それは今後の僕の課題としたい。想像力が働かなかった。

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 11月3日、もちろん休日返上である。

 舞台関係のスタッフが東京大学に集まっている。リュックの準備等。みんなの労を労いつつ、暇を見つけて手伝う。ひっきりなしに、問い合わせ電話がかかる。MLに流れるメールだけでなく、個人宛にもメールはくる。すごい量だ。ネコの手も借りたいほど、忙しい。

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 夕方には、研究者チームでTV会議を行った。
 前日、寝る前、質問紙を前に分析のことを考えていて、不備を見つけた。ここまで後手後手にまわってしまったのは残念だったけど、本当に時間がなかった。ここはプロジェクト全体の位置づけにかかわるだけにやむなく質問紙を調整することにする。印刷所との交渉などを担当してくれた方には、本当に申し訳なく思う。

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 11月4日
 朝から、会議の連続である。
 自分の研究である「おやこdeサイエンス」があるからといって、僕の会議の数は減らない。スケジュールは、僕のものであって、僕のあずかり知らないうちに決まっていく。学内の他の業務は待ってくれない。メンバーには迷惑をかけているのはわかっているが、どうしようもない。

 8時、某会議を終え、神保町へ。リハ最中だった。いよいよ明日である。イヤでも興奮は高まる。

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 11月5日

 今日もやっぱり朝3時に目が覚める。このところ、なんだかアタマの中が張りつめていて、ほとんど眠れていないけど、なぜか覚醒してしまう。台本を最終チェック。プレゼン作成、これは僕が、今回の参加者に語りかける最後のチャンスである。何度も何度もつくりなおす。やがてカーテンが明るくなる。

 朝、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲2番」をipodでききながら、会場の神保町へ。2つの旋律が、絡み合っている。もう、何がなんだかわからない。もうどうにでもしてくれ、ラフマニノフ。

 9時集合、技打ち。
 みんなが、自分の役割に従って動いている。会場の12時になるに従って、鼓動が高まる。「何人きてくれるのだろうか・・・」ちょっと不安がよぎる。だんだん胃が痛くなる。でも、僕はハッタリをこく。実は不安で押しつぶされそうだ。

 最近、講演とかすることも結構多くなってきたけど、講演ではこういう緊張感はない。数百人いるところで話しても、何とも思わない。だけれど、僕はほとんど出番がないのに、何でだろう?胃に加えて、ポンポンも痛くなってくる。僕のカラダは正直だと思う。ていうか、我慢がない。憎めない。

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 12時会場。まだ、お客さんはこない。
 12時30分・・・ようやく1件目。この30分間、胃が痛くて痛くて、今にも吐きそうである。
 12時45分・・・突然堰をきったかのように、ものすごい人がくる・・・よかった・・・。
 受付の山本さんたちが、大忙しである(ありがとう)。
 結局、これなかったのは風を引いた1組の親子だけ。補欠の親子は全員きているから会場は満員になる。都内で無料のイベントは3割は欠席が常識である。その心配は取り越し苦労におあった。結果はほぼ満席だった。

 まりおさん、MC開始!
 質問紙調査、事前テストを終え、いよいよワークショップがはじまった。

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 もう僕にはどうにもできない。ひたすらバックヤードの情報のやりとりが円滑にいくよう、努力する・・・ウロウロしているだけっていう噂もある。いてもたってもいられない。

 ガリレオさんのワークショップが始まった。
 さすがはガリレオさん。子どもたちの注意を引きつけている。「光」は子どもの素朴概念がとっても多い単元である。その素朴概念をナントカ再構成するべく、様々な実験が繰り広げられる。とはいえ、今日の段階では、あと、今後3週間行う実験の「つかみ」となればよい。

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 いよいよワークショップも最後の段階。携帯電話の説明。

 ここでハプニング発生。大房さん、山内さんと対応を話し合う。ここは、素早く意志決定を行い、この場をおさめることが重要だということなる。3者の意見は信じられないほど、一致する。

 何かが起こる。思い通りにならないことが起こる。予想外の展開で、誰かが苦労してしまう事態にもなってしまうかもしれない。
 だけれども、起こったことをグダグダピーピー言っていても仕方がない。誰が悪い、彼が悪い・・・そういうことを言っていても、覆水盆に返らずである。重要なことは、そして、素早いリカバーを、前向きに前向きにいかに進めるか、である。そして、それより重要なことは、こんなときこそ、チームの結束を深めることである、と僕は思う。

 これまで、僕も、多くの人たちと一緒に、数多くのプロジェクトに参加してきた。とにもかくにも、プロジェクトに失敗はつきものである。僕自身も、大きな失敗もしたし、小さなウッカリもしてきた。他人が失敗するのもみてきた。
 だけれど、そんな失敗を前に、「あのとき、オマエがあーしたから、こんな問題が起こった」とか「そのときから、ずっとオレは○○した方がいいと思っていたのに・・・」なんていう「場の読めない子ちゃん」には、正直辟易としてきたし、願わくば、今後は一緒に仕事をしたくない、といつも思ってきた。

 苦渋の決断。

 幸い、その後のチェックによって、対応をはやく行うことができた。
 「おやこdeサイエンス」は、スケジュールどおり進行することになった。
 週末だというのに、汗を流してくれた人たち、メールや電話をくれた人たちに、この場を借りて感謝します。本当にありがとうございました。

 また、もし「おやこdeサイエンス」に参加いただいた方で、このblogを読んでくれている方がいらっしゃいましたら、本当に不手際申し訳ございませんでした。
 次回からは、皆さんにより快適に、楽しい時間を過ごしていただけるよう、全員努力いたします。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 ---

 それにしても、いやー、ワークショップは生ものですね・・・勉強になりました。僕自身、本当に反省するべきところが多い。

 しっかし、この研究、僕は本当に学ぶことが多いです。
 F2Fのイベントだけでもなければ、ネットワークだけでもない。アナログメディアもあれば、デジタルメディアもある。
 しかも、F2Fのイベントは、講義とか講演のOne way communicationじゃない。オープンエンドで結果が何かは、よめないワークショップ。さらには、ネットワークは、いまや安定しているPCじゃない。発展途上のケータイ電話。

 いやー、ここまで組み合わさってしまうと、本当に違った世界がある。学問的にも得るものは大きい。だけども、スタフィッング、予算、運営、組織、そういうものも、いわゆる「実験室」の研究とは全く違ったものを要求される。それは僕が全く知らなかったものかもしれません。
 その意味では、本当に僕自身が学習者です。
 胃痛な学習者だけど。

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 終わりははじまりですね。
 ワークショップは「終わった」。
 だけれども、長い3週間が「はじまった」ということです。

 この3週間、まだ浅い眠りが続きそうです。

投稿者 jun : 2005年11月 7日 21:37


ITと放送

 IT vs 放送

 今後の「放送とIT」の関係を考える上で、その問題状況を様々な観点から俯瞰している本だと思う。ところどころ、個人的に文体や語調が気になるところがあるが、1セグ放送、放送局のビジネスモデル、著作権のことなど、とてもわかりやすく解説していた。

西正(2005) IT vs 放送 次世代メディアビジネスの攻防. 日経BP社, 東京
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822208974/nakaharalabne-22

 ネコでもシャクシでも、この僕でも最近は口にする「放送と通信の融合」というものが、どんなに難しいモノなのか、そして、その実現には、どんなに多くのステークホルダーの思惑が絡んでいるか、よくわかった。

 うちのカミサンが、まだ駆け出しのディレクターであった頃、「放送と通信の融合」について、たまーに夜中に激論になることがあった。まだインターネットバブルさながらのことで、その頃、世間には本当に近い将来に放送というものが無くなってしまうのではないか、と思うくらいの論調が多かったように思う。

 翻って、それから何年もの年月が流れた。

 いまだ「放送と通信の融合」は実現しているとはいえない。
 しかし、ここ1年で、この業界にはいろいろなことがおこった。かつて揺らぐことすらないと思われたものに、亀裂が生じている。そして、世の中に、このままではマズイという危機感が生じてきている。

 日本にある放送局は、戦後、ひとつも潰れていないのだという。この事実だけで、この業界が護送船団方式であったかがわかる。かつてはその象徴と言われた金融の世界も、今や、メガ・コンペティションの世界にはいった。

 都合のよいときだけ、「マスコミは社会の公器」とかいう、いかにも良心派を気取る言い草は、もはや説得力はない。また、株式を公開していながら「事前に言ってくれればいいのに」といい直る、その経営感覚は、あまりに腰砕けに感じる。また、「カネにモノを言わせて」という、よく意味のわからない世間の語り口も、僕にはわからない。

 一つだけ間違いのないことは、こういう業界再編の動きは、いったん動き出すと、後戻りすることはできない、ということである。

 そう、後ろに道はない。

投稿者 jun : 2005年11月 6日 00:00


クラシック

 あなたが自明だと思っているものは、そのほとんどが歴史的な構成物である。アタリマエのコンコンチキ、アタリ前田のクラッカー、アタリキ、しゃりき、ケ○の穴だけど(3連発!)、僕らは、時に「自明なるもの」が「自明でないこと」に気づき、驚く。それが歴史研究を読む醍醐味なのでしょうか。

 たとえば「恋愛」という愛情の表現形式について。
 既にセクシャリティの社会学が明らかにしてきたように、これは、人間にもって生まれた自然の感情発露というわけではなく、近代に確立された社会的かつ歴史的な構築物、つまりは制度なわけです。

 いにしえの人たちが、みんな、今僕らがフツウに経験している「恋愛」をしていたわけじゃない。それは想像するよりも短い歴史しかないのですね。そう、僕らは、「こーんな長い人類の営み」の、ハナ○ソ程度の時間しか生きられないんだよ。

 ---

 そういう意味で、岡田暁生さんのかかれた下記の西洋音楽史はオモシロかったです。

岡田暁生(2005) 西洋音楽史―「クラシック」の黄昏. 中公新書, 東京
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4121018168/nakaharalabne-22

 「クラシック音楽」というとね、「あー、あれね」となんか確固たるイメージが僕らにはうかんじゃう。

 でも、それは決して、最初からあったわけではないんですね。ルネサンス、バロック、ロマンというその時代ごとの制度や経済状況の中で、次第に、その音楽形式が形成されていったのです。

 特にオモシロイなと思ったのは、クラシック音楽が、いわゆる特権階級だけが局所的に楽しむものから、大衆化し、一般人に繰り返し聞かれるようになっていくプロセスです。

 貴族たちの飲食のBGMから、だんだんと一般の人たちが、ホールにでかけて繰り返し聞くことのできる音楽にかわっていく。オーディエンスの誕生とでもいうのでしょうか。そのプロセスがあって、はじめてベートーベン、リスト、シューベルトの音楽があるのですね。

 そういうことを知って、クラシックを聴くのも、またオモシロいですね。

投稿者 jun : 2005年11月 5日 20:46


「おやこdeサイエンス」リハ開始!

 いよいよ11月5日!「おやこdeサイエンス」のキックオフになります。

 先日、会場のベネッセ・神保町オフィスで第一回目のリハが行われました。夜遅くまで、何人もの人たちが汗を流してくれました。

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 今回のプロジェクトは、開発・運営側だけで40名から50名近い人々がかかわっています。
 大きくわけると、システム開発、コンテンツ開発、ワークショップ開発、テキスト開発、研究チームという4つのディビジョンがあって、それぞれ、コラボレーションしながら、何とかかんとかここまでやってきました。

 先日、下記のようなプレスリリースがマスコミ各社に配布されました。

「おやこdeサイエンス」プレスリリース
http://www.nakahara-lab.net/press_release/20051102oyako2.pdf
 

 Almost there!
 親子でつくる「科学の学び」、いよいよ姿をあらわします!

投稿者 jun : 2005年11月 5日 09:12


ゴスロリ

 先日、仕事で原宿にいったとき、駅前でとんでもない光景に出くわし、びっくりした。ゴスロリが増殖しているのです。

 ゴスロリ=ゴシック&ロリータね。要するに、「悪魔趣味+少女趣味=ゴスロリ」みたいな感じでしょうか。

 もう明治神宮の前なんか、こんな人たちでいっぱい。 

こんな人たち
http://www.hi-ho.ne.jp/m-ihara/goth9911/goth9911.htm

 中には見るからに「顔色が悪い」というのか、悪魔ティックというのか、なんと言葉でいっていいのかわからない女の子もいるわけですね。こんな感じで
 

顔色悪い人たち
http://hccweb5.bai.ne.jp/~heh59501/yehk/g_takase.jpg

 で、そのゴスロリな人たちを、明治神宮に観光にきた外国人さんたちが、オモシロがって写真を撮りまくっている。中には、「一緒に写真をとろう」といっている人たちも多い。

 おまえら、間違えるなよ、ぜったい。絶対に国にかえって、これを日本文化として紹介してほしくないんだけどさ。でも、きっとそうなるんだろうね・・・「日本ではアクマファッションがはやっている」みたいな感じでさ。

 ---

 そう、原宿を歩いていたら、ちょっと腹立たしいことがありました。

 さっきのゴスロリな人たちが増殖しているせいもあって、原宿駅近くの道は、とっても混んでいるんですよ。ちょっとゴスロリ趣味の10代くらいの女の子たちでいっぱいです

 で、そこを歩いていれば、当然、そういう若い女の子たちと、手があたったりする。いや、こっちは全くそのつもりないんですよ。僕はダメだから、申し訳ないけど・・・全く守備できまへん。でも、歩いていて、手が触れちゃうくらい、そのくらい道が込んでいるのです。

 でもさ、そのたびごとにさ、ギロッと見られるんです。「このオヤヂめ」という目つきでさ。で、「イヤそうに、手を引っ込める」みたいな。オマエな、オレは「ばい菌」か、保菌者か!?

 いやー、これにはまいった。そういうことが2回~3回ありました。イヤなものですよ。

 「誰が、オメーみてーな、顔色悪い女の手を握るか、このタコ!」

 と恫喝したくなるんですが。弱いね、全く弱い。

 きっと、10代の彼女たちから見れば、僕なんか「オヤヂ」そのものなんだろうな。でもさ、腹立たしいんだよ、その過剰な自意識がさ!、オマエ、何様だよ(ゴスロリさまだよ)。

 ていうか、今度、原宿行くときは、絶対に「便所行って手洗わないで行ってやる」。チキショー。

---

追伸.
 このところ、モニタを見ていると「ショボショボ」して、涙がポロポロでてくる。きっと眼精疲労のせいだろう。別に、「フランダースの犬」とかを見ているわけじゃないし、フラレたせいでもないよ、男泣きしているのは。単に目が痛いんです。

投稿者 jun : 2005年11月 5日 07:09


洗脳するマネジメント

 この本を一読して、正直すごく驚いた。

樫村志保(訳)・ギデオン=クンダ(著)(2005) 洗脳するマネジメント 日経BP社, 東京

 自分自身、今年のドタバタが落ち着いたら、近いうちに時間をかけて必ず取り組もうと思っていた「組織エスノグラフィー」研究で、学習の問題(これを学習とよぶことに抵抗を感じる人もいるだろうけれど。訳者はこれに「洗脳」というショッキングなタイトルをつけている)を真正面からあつかったものが、今から20年も前に編まれていたなんて!

 このところ組織エスノグラフィーについて調べていたのにもかかわらず、勉強不足甚だしいのであるが、この本のことはまったく僕の文献リストにははいっていなかった。

 というか、あとで調べたところ、実は「全く知らなかった」わけではなく、佐藤郁也氏が2002年に執筆なさった「組織と経営について知るための実践フィールドワーク入門」で紹介されていたんだけれども、この文献を書き写すのを忘れていてしまっていたようである。

 汗顔のいたりである。

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 本書の舞台は、ボストン近郊のハイテクカンパニー「テック」である。テックには「技術中心主義的で会社に対する多大な貢献をよしとするテック文化」が存在する。

 本の著者ギデオン=クンダが問題にしているのは、この組織文化なるものを、トップマネジメント層がいかに操作し、つくりだしているか(Engineering Culture)、ということであった。

 「かたち」をもたないが故に、操作することは不可能だとされやすい「文化」。様々な儀礼、語り直し、作業環境。こうした操作によって、「テック文化」がトップマネジメント層によってつくられているプロセスと、その様子をエスノグラフィックに報告している。

 確かに、かつての組織文化論では、文化は常につくりかえらるダイナミックなテクストというよりは、既に所与のものとして存在するテクストとして認識されることがおおかった。この研究は従来の組織文化論に一石をとうじる研究であった。

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 せっかく、このような本が出版されたことでもあるし、現在「企業教育プロフェッショナル」という本を書いているメンバー(産能大学の長岡さん、熊本大の北村さん、東大の荒木さん、青山の橋本君)で、1月28日午前10時から、「ハードコアな組織エスノグラフィー研究会」を開催することにした。

 国内外の文献や、長岡さんのご研究についてディスカッションしたいと考えている。詳細は、またこのページでお伝えするが、もし参加希望の方がいらっしゃったら、1月28日の予定をあけておいてください。

投稿者 jun : 2005年11月 4日 02:56


【研究会ご案内】マンガ&医師を育てる

 先日、吉川厚さん@NTTデータをお招きして、Learning bar@Todaiが開かれた。マンガというメディアを使って、どのような教育プログラムを開発することが可能か、という話しでとてもオモシロかった。

yoshikawa.jpg

yoshikawa1.jpg

 このマンガ教材は、吉川さんのこだわりの作品である。物語、絵のディテールにはとことんこだった。人は物語の中に埋め込まれた様々な「小さな出来事」をつなぎあわせ、その出来事の連鎖の中で、はじめて「気づく」ことができる。

yoshikawa2.jpg

 参加者の感想もあとから聞いたけど、とても好評だった。
 吉川さん、ありがとうございました。

 次回11月のLearning barは「医師を育てる!」
 京都大学大学院博士課程・医師の三原華子さんをお招きして、
 
 「医師を育てる - 国内外の卒前・卒後医学教育
 :過去・現在・未来」

 というタイトルでディスカッションを深めたい。
 是非、ご参加ください。

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Learning bar@Todai
「医師を育てる - 国内外の卒前・卒後医学教育
:過去・現在・未来」
2005/11/25 東京大学 中原研究室
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●日程:
 11月25日 金曜日 午後6時30分から

●場所:東京大学大学院 中原研究室
 http://www.nakahara-lab.net/map/nime_map.html
 ※入口は暗証番号のロックがかかっています。入り口に
 お着きになられましたら、03-5841-2015までお電話を
 お願い致します
 
 ※なお場所は変更になる場合がございます。いずれも
  本郷キャンパスです

●定員
 20名

●参加方法
 参加希望の方は、atusaka@educetech.orgまでご連絡
 ください。人数が多い場合、抽選となる場合がございます。
 11月15日には結果をご発表いたします。

●参加費
 無料

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投稿者 jun : 2005年11月 3日 13:08


人間ドック

 今週はキツかったなぁ。

 会議、会議、会議。書類、書類、書類。チェック、チェック、チェック。ネゴ、ネゴ、ネゴの胃が痛い毎日でした。

 状況、まだ予断は許しません。来週も続くんでしょう。でも、最初の関門は抜けた感じがします。今取り組んでいることは、まだ言えませんが、かなりオモシロイことがおこる予感です。頑張ります。

 で、明日は人間ドックです。
 「中原さんは若いけれど毎年行ったほうが」と以前、ある女医さんに言われてしまい、なんと自腹で行くのです。その女医さんいわく、「30になったら、一度はいくべき」だそうです。不規則な仕事をしている人は、特にね。はい、7万円飛んだ。まぁ、しゃーないね。カラダは資本ですから。
 それにしても、7万あったら、最近欲しいと思っている「エールライントート」が買えちゃうぞ。あーあ。

 それにしても、怖いよ、僕は結果を見るのが。
 カミサマ助けて。

投稿者 jun : 2005年11月 2日 09:23


シンポジウムのお知らせ

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マイクロソフト産学連携研究機構 第1回シンポジウム
日本における計算機科学の将来像と
マイクロソフト産学連携研究機構”
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マイクロソフト産学連携研究機構(IJARC)は、「日本に
おける計算機科学の将来像とマイクロソフト産学連携
研究機構」をテーマに、シンポジウムを、来る11月
7日午後1時より、六本木 泉ガーデンギャラリーで
開催いたします。

■ 開催趣旨
大学が知の創造の中心に位置し、その創造された知を
いかに効果的に社会に還元するかが産学連携の大きな
課題となる今日、日本の計算機科学がこれからどう発
展していくのかを、マイクロソフトリサーチやマイク
ロソフト産学連携研究機構(IJARC)の共同研究に例を
とりながら、研究方法論や方向性を探ってまいります。

■日程:日時、時間
2005年11月7日 午後1時 - 午後6時

■場所
泉ガーデンギャラリー
http://www.sumitomo-rd.co.jp/izumig_gallery/

■プログラム
・開会挨拶
   ダレン・ヒューストン
    マイクロソフト株式会社 代表執行役社長
・基調講演 リック・ラシッド
    マイクロソフト上級副社長、研究担当
・ARC共同研究報告
    辻井潤一教授 東京大学大学院情報学環
  ・JARC共同研究報告
    五十嵐健夫助教授 東京大学大学院情報理工学研究科
  ・講演 ハリー・シュム
      マイクロソフトリサーチアジア所長
  ・講演 池内克史教授 東京大学大学院情報学環
  ・パネルディスカッション
   米澤明憲教授 東京大学大学院情報理工学研究科
   パネラー 村岡洋一教授 早稲田大学 副総長
   パネラー 湯浅太一教授 京都大学
   パネラー 徳田英幸教授 慶應大学
  ・討論
  
  ・閉会挨拶
    ハリー・シュム
    マイクロソフトリサーチアジア所長

■ご登録サイト
ご参加の登録はここからお願いいたします。
http://www.microsoft.com/japan/mscorp/ijarc/event.mspx

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投稿者 jun : 2005年11月 1日 22:47


テトラポッドと海苔

 カミサン帰宅。

 秋のコンサート収録を担当しているせいか、このところ本当に忙しそうである。帰宅時には、既に疲れ果てていて、前髪のあたりは「テトラポッドに打ちつけられた海苔」のような感じになっている。

 よほど、今日もスタジオ、ホールを動き回ったのだろう。可哀想だ。

 とりあえずはコンサートまで1週間、カラダには十分注意せよ。

投稿者 jun : 2005年11月 1日 07:43