The Long & Winding Road - 2002/02


Chablis Premier Cru -Vaillons


2002/02/01 花様年華

 ちょっと前に話題になった、たぶん、去年かな、渋谷で上映されていた「花様年華」をビデオでみた。ウォン=カーウェイ監督の作品。

 同じ日に同じアパートに引っ越して来たチャンとチャウ。ある日、お互いの夫、妻が不倫の関係にあることを知る。慰め合うのでもなく、責めるのでもなく、強烈に惹かれあうのでもなく、密会を重ねる二人。静かに二人の関係は深くなっていく。

 チャイナドレスと、マゼンダ。華の模様、怪しくそして静かに響く音楽。二人の世界は支配される。

 この種の作品は、感想を述べるのが非常に難しいんだよねー。ハリウッド系に慣れていると、ちょっとばかりツライかも。

 でも、映像はとってもカッコヨイ。音楽も印象的。僕的にはオススメ。ワインなどを飲みながら、ゆったりした気分で是非どうぞ。


2002/02/03 近況

 来年4月から定期的に開催予定の研究会の企画を2つ練りこむ。

 ひとつは、ネットワークを利用した学習・教育に関する研究会。もうひとつは社会人大学院に関する研究会。前者はこれまでの研究の延長上に位置して、だいたいイメージがついた。明日、もう一度細部をつめなおして、いよいよ組織作りにはいる。

 特に後者は出版をめざしたい。人的コネクションもこれからつくらねばならない、なかなか骨がおれるけど、人にまかしていては何ひとつ前になんか進まない。みんな手一杯なのだから、自分で動かなくてはならない。この領域はゼロからの開拓だ、フィールドワーカーになるしかない。

 2月末締め切りの原稿をガシガシと脱稿した。データの結果が僕にしては珍しくピタッとなっていて、あまり悩む必要がなかった。通るかどうかはわからないけれど。校正後、すぐに投稿したい。なにせ2月は出張が続き、やることが多いから、はやめにこれを済ませたい。

 ところで、ほぼ僕と同時期に原稿執筆のため「缶詰」にされている人もいるようだが、ステキな原稿を書いているとの報告がなされている。安否が気づかわれるが、生きて帰ってくること、祈っている。


2002/02/06 ワイン

 タバコをやめてからというもの続いているものが2つある。

 ひとつはプール&ジム。週末にしかいけないんだけどね。
 でも、おかげさまで一時期は指数関数的な増え方をしていて、<現代の悲劇>とも揶揄された体重が4キロ減った。だからといって無理はしていない。「どうしても痩せたいっていうなら痩せてもいいよー」くらいの感じでやっているだけ。

 でも、不思議ですね、そういうときの方が痩せるんです、めっちゃ痩せたいと願ってがんばっているときよりも。

 肉にも心があるのか?

 もうひとつはワイン。いいねー、ポリフェノール、バリバリだねー。昔、イトコからもらったリーデルのワイングラスに毎日のようにワインを注いでいます。


昨日飲んだスパークリングワイン

 でも、だからといって、浴びるように飲んでるわけじゃない。一本のワインを数日かけてあけるくらいです、おうちで飲むのが好きです。で、ワインラベルをコレクトするのにこっている。いやー、スノッビー、川島なおみ的だね。

 先日、カミサンにお願いしてシャトー・ラギオールのソムリエナイフ、買ってもらいました。いやー、スノッビー、田崎シンヤ的だね。ありがとう、これでコルク開けまくりだね。

 悪いの?
 どっちもタバコ吸うよりは健康にいいってーの。


2002/02/08 Rhapsody in blue

 ジョージ・ガーシュウィン。希代の作曲家である。

 彼がこの世に生を受けたのは、19世紀末のアメリカ、ブルックリン。ジャズがまだ市民権を得ていない時代、アメリカ独自の音楽がまだなかった時代。ジャズとクラシックと融合させた彼独自の音楽は人々を魅了する。

 Gershwin Plays Gershwin

 ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー

 ガーシュウィンの代表作、ラプソディ・イン・ブルー。街の喧噪の中に埋もれている人々の活き活きとしていて、多彩な活動、表情。そうしたものが表現されているように思う。

 ディズニーのファンタジア2000では、アニメつきのラプソディ・イン・ブルーを楽しむことができる。

 ファンタジア2000 DVD版

 ファンタジア2000 VHS版

 このことろ、なぜかアタマの中の主旋律はいつもラプソディ・イン・ブルーである。おかげで鼻歌もラプソディ・イン・ブルーだ。

 どうしてかはわからないけれど、気分がよい。


2002/02/10 CAMPに行って来た!

 先日、けいはんなにある研究所兼ワークショップ施設の大川センター「CAMP」を訪問した。そこでワークショップの運営をなさっている森さんとは、前にジョイポリスでお逢いしたことがあって、そんなこんなでセンターの見学が実現した。

CAMP
 

  

   
 ここが大川センターCAMP。とっても開放的な場所にある、開放的な空間です。それにしても、CAMPのロゴはカワイイ。当日は、このロゴをデザインなさったという方にお逢いした。
  

 センターはとっても広くって、開放的な雰囲気だった。その日は、Mindstormを使ったロゴスポーツというワークショップが開催されていて、数名の子どもたちが玉入れゲームに興じていた。

 ロボット制作の様子、まぁ、本当にいつみていても、子どもの想像力というのか、創造力っていうのは、びっくりすることが多くって、まるで「えっ、そっちからくるかぁ・・・」という方向からスリッパでスコーンとアタマをたたかれたような衝撃なんか日常茶飯事で、この日も、僕のアタマはスコーン、スコーンと言っていた。

 あと、森さんとは社会人大学院の話で盛り上がった。前にどっかで森さんがある大学の遠隔コースを受講している、っていうのを僕が知っていて、そんなこんなで話がはじまった。社会人大学院、というか、学びたい社会人が多いこと、ものすごく実感した。

 とにもかくにも楽しい訪問だった、森さん、そして所長の北川さん、お忙しいところありがとうございました。


2002/02/11 研究のマネジメント

 ようやくデスクトップがきれいになりました。このところ原稿の締め切りが多くって、そのたびに付箋紙をコンピュータのデスクトップにペタペタとはりつけていたんだけど、今日、投稿した論文で最後。デスクトップ、キレイキレイ。これでしばらく来年のプロジェクト=ビルディングに集中できます。

 ところで、唐突ですが、プロジェクト・ポートフォリオ・マネジメントというマネジメント手法をご存じでしょうか。

 通常の企業ってのは、事業がどうしても多角化しちゃうんだけど、それをどのようにマネージするかってことは実は大問題で、その問題を解決するためのマネジメント手法が、プロジェクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)です。

 この手法、多角化した事業のそれぞれの状態を把握し、それらを今後どのように展開すべきかってことを考えるために、大手コンサルのボストン=コンサルティングが開発したんですね。

 ボストンコンサルティングの人に殴られるのを承知で、簡単に説明すると、シェアと市場成長率という二つの軸を使って事業を分析して、それを2×2のマトリクスに表現する、すると、あら不思議、これから、どの事業をのばしていくか、そのための資金繰りをどの事業から捻出するかってことが、わかっちゃう、という手法です。

 で、何が言いたいかっていうと、これを僕が知った時、この手法は研究にも適用可能だな、と思いました。適用といっても、シェアとか成長率という軸は直接はあてはまらないんだけど、研究だってマネジメントをしなければならないってことは同じだと思ったんです。

 どんな分野やテクノロジーこれから伸びて、何にリソースをさいていくかを分析して意志決定する。そして、アカデミックな成果をだしつつ、その成果をことなったプロジェクトに投入する。まさに先ほどのプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントなわけです。

 うっかりハチベエ的にボーッとしていると、いろいろとプロジェクトをせおっていくんだけど、結局、下働きピーポーになってしまう。

 下働きはそれはそれで勉強になることも多いですので、いいこともあるんですが、あんまりそればっかりやっていてもしかたないですね。よく「アンタのためになるんだから」という人には気をつけた方がいいですよ、ほとんどの場合は何にもならないですから。

 でも、もっと怖いのは、他人から判断つかなくなるってことです。他人はそれほど研究を熱心に見てくれるわけではないですから、あんまりお畑違いの領域に研究が分散していると、「あの人って何が専門なの?」ってことになって、それはそれで不幸のはじまりなわけです。

 あっ、そっか。まだ他人が自分の研究をわかってくれないのは、マシかもしれません。

 最悪なのは、自分の中でつながりがグチャグチャになっちゃう。お畑違いの研究がわんさか増えてきて、自分がどんな専門性をもっているのかわかんなくなっちゃう。これが危機的状態です。
 
 まぁ、研究っていうと、いろんな研究があるんで、あらゆる研究にすべて適応できるかどうかは知りませんが、少なくとも僕の専門領域に関しては、キチンとマネージして研究をやっていかないと、こうなる可能性が高いように思います。

 ちなみに、僕は一年に一度は来年度の戦略をたてます、そしてそれがプロジェクトビルディングを行う今の時期です。来年の僕の研究戦略は・・・これは内緒ですが、今年とはまったく違った動き方をすると思います。

 まぁ、そうはいっても、この戦略、あてがまったくハズレルことも多々あるのですが、ルーシー=サッチマンがいうように、戦略とかプランみたいなものは、所詮リソースです。でも、プラン=悪じゃないです、誤解なきよう、サッチマンはそんなことはいません。リソースは豊富な方がいいと、僕自身は思います。

 そんなわけで、僕は、しばらく思慮とネゴシエーションの日々に入ります。


2002/02/15 近況

 2月末締め切りの論文を無事に投稿した。今回の論文は、ある大学でのCSCL利用実験の結果。ちょっとした一工夫で、あら不思議、小洒落た効果じゃないですか、という論文。でひ。結果は神のみぞ知る。

 東大-NIMEプロジェクト(Project eX)のプレスリリースの原稿執筆、修正、再修正。それにかかわる各種事務手続きに奔走。本当に奔走だよ、ラン・ローラ・ランじゃないんだから。まだ気は抜けないが、何とか無事にうまくいきますように。

 事務が終わってNIME側のサーバ構築。インストール後、パッチをあてまくった。その後、セキュリティの確保に一苦労する。ようやく終わったと思ったら、もう一台追加・・・涙。さらにプログラミング・・・鼻水まででてきた。

 毎日のようにミーティングがはいる。Project eXのこと、社会人大学院のこと、来年度の各種研究計画をまとめ、交渉。ヴィゴツキー本の修正案をたてる。

 社会人大学院の研究の件で、リクルートの方々にあう。めざすところは同じですね、というコトバに少し安心した。何らかのかたちでコラボレーションができればいいと思う。

 来週はこれに出張が入る。さらにワシントンD.C.への海外出張も。たぶん4月まではこんな感じの毎日なんだと思う。そうだと思う。2月11日の日記では、少し落ち着いて思索の日々を過ごすことができそうな予感だったんだけどなぁ。


2002/02/19 責任

 誰が悪いとか、誰に責任があるとかが問題じゃない。みんなでこの問題をどう乗り越えるかが問題なのだ。

 日本人が大好きなフレーズだ。

 この場合、「問題」を生み出したのが特定の「誰」であったとしても、彼の責任は問われない。その「問題」は「みんな」で「乗り越え」るものとされている。それに対処するのは「みんな」なのだ。

 たとえ、「みんな」が失敗したっていい。だって「みんな」なんだから。特定の「誰」でもない。

 責任は誰一人として問われない。「みんなで頑張ったのにダメだった」とされるから、「力をあわせたのにできなかった」とされるから責任は決して問われない。

 こういうの、僕は大嫌いだ。


2002/02/22 おから中毒

 ある食べ物をいったん好きになってしまうと、中毒のように毎日食べ続けてしまう。僕はどうも、そんな傾向があるらしい。ちょっと前の流行語でいえば、マイブームかな、僕の場合、マイブームが中毒化する。

 いつもとんでもないモノがブームになる。

 今から数年前になるけど、テリヤキバーガー中毒っていうのがあった。毎日テリヤキばっかり食っていた。このときは「死ぬまでに一回でいいからテリヤキバーガーをイヤというほど食ってみたい」という衝動を抑えることができなくなり、ある日、意を決してマクドにいった。2ケタにいく前にハラが痛くなってやめた。「ハラいてーよー」と涙した。

 ちょっと前は立ち食いそば中毒があった。毎日毎日立ち食いそばを食っていたら、立ち食いそばのにおいをかぐだけで、吐き気がするようになってしまった。

 今、僕のマイブームは「おから」だ。「おから」とは北海道弁かな、「卯の花」だよ、「卯の花」。ヘルシーだと思って食べ始めたんだけど、だんだん中毒化してきた。

 これはヤバイ。このままいけば、こんなにヘルシーな食べ物を一生食べたくなくなってしまう。テリヤキや立ち食いそばと同じ運命を辿る前に、何とかしなければ。

 アル中とかヤク中とかはよく聞くコトバだけれど、僕はそんなものには興味はない。

 アイアム、卯の花、おから中。


2002/02/27 ワシントンD.C.

 k-12 networking conference 2002という、どちらかというと、教育工学&教育政策よりの会議に出席するため、ワシントンD.C.にきています。坂元所長と山田教授にオトモしています。

 会議の内容自体は、アカデミックという感じではなく、「いかにテクノロジーを教育現場にインプリメントするか」が主要な焦点になっています。

 ヒューレットパッカードとかマイクロソフトとか、そういう関連する企業、あとは各国政府のお役人、議員さんたちがいらっしゃっているようです。昨日は、上院議員会館?にいってきました。バンケットがそんなところで行われているのです。たぶんもう2度と入ることはないと思ったので探検してきました、便所とか・・・満足。

 昨日はInternational Delegationのためのスケジュールだったようですが、今日からいよいよ会議がはじまります。明日は、フランス大使館でシンポジウムなどがあるようです。坂元所長がここで発表なさいます。シンポジウムには、Roy Peaさんとかもくるようです。ピーピー。

 時差ぼけが結構ひどいのですが、あと、アメリカにきてまでやらなければならない仕事が山のようにあるのですが、何とか頑張ります。それにしても、今はメールがあるので、ほとんど日本にいるのと同じように仕事ができちゃいますね・・・残念すぎるぞ。


 NAKAHARA,Jun
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