The Long & Winding Road - 2001/05


2001/05/01 学習者に「なってみる」

 先日のNIMEで行われたeLearning研究会では、国内のシステムベンダー、コンテンツベンダーの方々、大学の先生方がいらっしゃって、高等教育へのeLearningの普及についていろいろと議論が行われた。

 研究会の最中は、いろいろと考えさせられることが多かったけれど、特に一点だけ。それは、学習者がワクワクドキドキするような環境でなければ、eLearningって普及しないだろうなーって素朴なことである。水越先生@東大に言わせれば、遊戯性的側面をもったようなメディア空間でありつつも、Hard FUN !的要素をたぶんに含んだ学習の場でなければならない。

 いくらコストが安く、スゴイ管理ツールがあり、スケーラビリティや、インターオペーラビリティに優れているシステムやコンテンツがあったとしても、それは大学やこのクニのためにはなるかもしれないけれど、学習者はついてこない。これだけは断言できる、絶対についてこない。なぜわかるかっていうと、僕がわずか2ヶ月前まで、大学生だったから。そして、これまで様々な背景をもった学習者にコンピュータを媒介とした学習システムを使ってもらって、老若男女、どんな学習者でも、そうだったから。

 「大学やクニのためになること」と「学習者がワクワクドキドキする」というのは、全然違うレベルの問題なんだけれども、よく混同してしまいがちだから、注意が必要だ。

 でも、じゃあ、そういうワクワクドキドキシステムをつくろうと思って、学習者の側にたって開発する、というのは、言うが簡単だけれども、これまた難しい。でも、想像力を働かせることで、それを何とか体験することはできる。それは「学習者になってみればよい」のだ。自分の開発したシステムで、ほかならぬ自分が学びたいなー、やってみたいなー、と思うようなシステムでなければ、絶対に学習者は乗ってこない。

 以上の事柄は自戒をこめて言ってみた。僕も自分の研究に反省すべき点は多々あるし、こういう自分の認識を今後の研究に生かしていきたい。ていうか、これで一つネタ思いついた! ありがとう、eLearnig研究会! 中原、ただでは起きぬ。


2001/05/02 断章 学習とは

 学習とは、よいものでもなければ、悪いものでもない。

 学習というコトバの接頭語に、「協同」をつけようと、「共同」をつけようと、「発見」をつけようと、「Peer」をつけようと、「observational」をつけようと、学習を行う張本人にとって、学習は<学習>である。

 接頭語をつけることによる、<学習>と<接頭語付き学習>の区別は、研究者による政治的かつ経済的なカテゴリーの使用の問題にたどり着く。

 それはポジティヴな概念でもなければ、ネガティヴな概念でもない。

 学習とは、みんな仲良し的世界の中に生まれるとは限らない。

 そして、それ故に、学習はエロティックでもあり、破壊的でもある。

 学習とは、人間が人間である限り、不断に営まれる活動のひとつであり、学習を行う本人にとって、学習に種類も、区別もない。


2001/05/03 お仕事中

 28日から5月6日までロングバケーションの真っ最中です。1日、2日は箱根にいってきました。これ以上温泉には入れませんよ、というぐらい温泉に浸かったので、身も心もふやけています。

 ふやけて悪いの?

 しかし、あんまりふやけてもいられないので、今日からお仕事始動です。
 今日は、1日、2日にたまったメール70通をまず整理しました。6月の初旬に、スタンフォード、バンクーバに出張する関係で、今、先方とのアポをとっています。英語勉強せなー。
 あとは、これから3日間で論文を書きます。CSCLの機能とインタフェースに焦点をしぼったレビュー論文です。博士論文の1章になる予定なので、気合いがはいります。さっきから書いているのですが、今、煮詰まって、日記を書いています、あーあ。

 ところで、どーでもいいことなんですが、今、欲しいCDが2つあります。休日に論文を書いているかわいそうな男の話、もう少しだけ聞いてください。

 日曜日にやっているドラマで豊川悦治と中山ミホが主演しているヤツがあるのですが、そのドラマの中にでてきた「アルハンブラのオモイデ」というギターの曲が気に入ってしまいました。たまーに、お茶の水駅とか横浜駅とかで、ストリートギタリストのオジサンを見るのですが、彼がよくこの曲を弾いています。
 あと、オールディーズで「ダウンタウン」という曲があるのですが、それも欲しいです。なんという映画だったか忘れたけど、前に、難波のマイナー映画館で、メンタル系の映画があって、その中のBGMとして効果的に使われていました。
 明日にでも、HMVにでも行って来ようかと思います。一年に一度の長期休暇なのだから、このくらいは許されてしかるべきだと思いますが、いかがなものでしょうか。

 それでは、そろそろ論文に戻ります、あーあ。


2001/05/04 44歳の博士号

 先日、といっても、ちょっと前のハナシになるけれど、フジテレビで「若者たち」「小さな留学生」に続く、中国からの留学生のドキュメンタリーが放映された。

 今回のハナシは、44歳のおじさんが千葉大学大学院で経済学の博士号をとるまでのお話。いまどき見ることも少ない5インチのフロッピードライブのある旧式のパソコンに夜な夜な向かい、博士論文を仕上げる。数度の失敗。結局、年限いっぱいで彼は博士号を取得する。

 いくどかの受難を経験しながらも、家族も彼を支える。お母さんは、皿洗いのバイトにいそしみ、娘は欲しいモノもねだらず、文句ひとつ言わず、父をただただ見つめる。

 日本もアメリカに追従し、学歴インフレによる博士号乱発の時代に突入したと言われて久しい。博士号をとる意味、そして博士号自体の価値が揺らいでいるというハナシもよく聞く。文科系では今まで、学者としてある程度の年齢と経験を積んだときに取得するものが博士号だけれども、最近は、そういう今までの常識が崩れつつある。しかし、学者の世界に生きる以上、それはいつかは取得しなければならない。

 僕にとって、彼のストーリーは、なんだかしらないけれど、そうしたモロモロの意味や価値を考えさせるきっかけになった。僕には彼のまねはできないし、自分の納得のできる論文を書きたいなーと心から思う。僕自身が心から納得できるものを。


2001/05/05 イトコの子ども

 先日、品川にいるおじさん、おばさんのうちをたずねた。3年前に結婚したイトコも子どもとお嫁さんをつれて実家に帰っていた。子どもの名前はショウタくんという。時にはかんしゃくを起こしてモノを投げたりなんかして、まわりを戦争状態(あるいは荒野状態)に陥らせたりするけれど、可愛い。確かに可愛い。関係ないけど、肌なんかピチピチだ。

 先日、某製造メーカの方と飲んでいたときのこと、こんなことを言っていたことを思い出した。

 子どもは3歳までに一生分の親孝行をしてくれます。そのくらい可愛い。

 なるほど、言い得て妙だなと思う。


2001/05/06 連休、カムバック

 昨日まで3日間、シコシコと書いていた論文のアルファ版がようやく完成した。まとまった時間をとって、ここ1〜3年のCSCL研究を概観できたのは非常によい機会だった。論文は、この後、リバイズを何度もへて、投稿する予定だ。

 それにしても、近年のCSCL研究を見ていて思うことは、その研究スタイル、プロジェクトの運営方針がものすごく実践的、かつ実用的になっているってことだ。ほとんどのCSCL研究は、既にカリキュラム+ツールを学習者に提供することで、行われている。教授者に対するサポート、マニュアル、Webによる成果の公表。すぐに民間企業の教育サービスとして成立しそうな研究が少なくない。

 そういえば、先日、ある海外の大学の先生にお逢いしたが、そのときに、「僕らは1年間に9ヶ月しか給料がない、あとの3ヶ月は自分で獲得したグラントをもとに生活し、研究を行わなければならない」と言っていた。メリトクラシーがどこまでも貫徹されるアメリカらしいなーと感心していたが、きっと近年のCSCL研究が実践的で実用的な理由は、こういうところにもあるんだろう、と思う。

 僕はこのところ2年間ばかしシステムの開発研究を行っていた。いろいろな思惑や事情があって、そうしていたわけだが、今年度動いているプロジェクトが順に終わり次第、自分の研究スタイルを少し見直そうと思っている。フィールドにもでたい。いや、でるぞ。

 それにしても、連休、カムバック。明日からまた<終わりなき日常>だなんて、あまりに残酷すぎやしないだろうか。


2001/05/07 内山理名

 最近、刑事モノドラマ「ルーキー」を見ている。このドラマ、新人刑事が少しずつ学習しながら、一人前になっていくという内容で、「学習」を専門にしている僕としては、非常にオモシロイ。

 以上は建前だったが、このドラマを見るもうひとつの理由、すなわち本音は、内山理名にある。彼女は可愛い。実は、ちょっと前に、渋谷の交差点で彼女とすれ違ったのだが、僕はその当時、彼女を知らなかったので、「は? さっきのすれ違ったヒト? 内山ぁ? 誰、それ?」と、失礼なことを行っていた。すまん。

 このドラマで内山理名は、新米カメラマンで、やっぱり少しずつ「一人前」になっていく。彼女の学習に期待している。とまぁ、これもまた建前だったな・・・。


2001/05/08 論文ベータ版完成

 CSCLのレビュー論文のベータ版が完成した。あとは、何人かの研究者の方に試読してもらって、雑誌に投稿だ。

 それにしても、この論文の執筆は久しぶりに大変愉快だった。ここ数年の海外のCSCL研究の知見をざーっと読み込んだので、大変勉強になった。日本のCSCL研究は、やはり海外のそれと比べて、偏りがあることもわかった。自分の研究の方向性を、やはり一度総点検しなければならないようだ。


2001/05/09 スタンフォード&バンクーバ

 来月のアタマに、僕は永岡先生、加藤先生と一緒に、スタンフォード&バンクーバに海外出張がある。

 スタンフォードでは、スタンフォード大学ラーニングラボ、スタンフォードリサーチインスティテュート、カリフォルニア大学マルチメディアセンターを訪問する。どうやら、スタンフォードリサーチインスティテュートでは、TAPPED INに続く教師教育用のCSCLプロジェクトが、Roy Peaをディレクターとして進行しているようだ。非常に楽しみである。ちょっと聞いたところでは、ブロードバンド化に対応した映像配信もあるとか。

 バンクーバは、ヴァーチャルユニヴァーシティで有名なブリティッシュコロンビア大学、サイモンフレーザ大学を訪問する。実は、NIMEでは、VUソフトで有名なWebCTの日本語化のプロジェクトが別に走っていて、その関係での訪問でもある。

 今、海外のコンタクトパーソンとアポイントメントとりを行っているが、なかなか予定がFixせず、大変なことになっている。でも、永岡先生や加藤先生のアポイントメントの取り方を、横目で見ながら「なるほど、こうやればいいのか」なんて思ったりして、大変、勉強になる。

 予定がキューキューなので結構強行軍になりそうだが、今から楽しみだ。


2001/05/10 僕もクルックー、あなたもクルックー

 僕もクルックー、あなたもクルックー
 クルックー、クルックー、クルクルクー
 
 僕もウゴウゴ、あなたもウゴウゴ
 ウゴウゴ ウゴウゴ ウゴゴッゴ!

 てなわけでハトニュース。

 前回で終わりにしようと思っていたのに、みんなハト好きなんだもん、ハトが。ハトはどうした、その後はどうなった、というメールがあとをたたないので、再びハトニュース。

 実はあれから、ハトスプレーなるものを、広瀬先生@NIMEからいただきました。この場を借りて広瀬先生にお礼を申し上げます。で、その結果は・・・。散布したときは効いたかなーと思いましたが、再び、クルックー、おまけに卵もクルックー。

 そういえば、今日、恐ろしいハナシを効きましたよ。なにやら、ハトの糞というのは、とんでもないカビを含んでいるものらしく、これが微量でも脳にはいると、脳がやられちゃうんだって。赤ちゃんとかは死に至るらしい。

 わしのイエは糞が地層をなしてるっちゅうねん! ベランダの下が見えるなー、とっても。どこが微量やねん、コラ! 

 と、なぜか関西弁で憤る。

 ていうか、僕が今これを書いている間も、クルックー、ウゴウゴ大合唱だもんなぁ・・・。でも、もう、あなたと戦うことには疲れたわ。憎しみあうことにも疲れたの。過ちは繰り返しませぬから。

 僕もクルックー、あなたもクルックー
 クルックー、クルックー、クルクルクー
 
 僕もウゴウゴ、あなたもウゴウゴ
 ウゴウゴ ウゴウゴ ウゴゴッゴ!


2001/05/11 蜷川さん

 先日、パルコでやっていた蜷川さんの写真展にいってきた。蜷川さんと言えば、Hiromixと並ぶ若手写真家のひとりである(実はここではじめて知った)。

 蜷川さんの写真は、非常に豊かな色彩にあふれていて、それでいて、どこか郷愁というのか、なんか懐かしい感じのする写真である。特に、今回の写真展では、毒々しくも新鮮な「いちご」を被写体とした写真が、非常に気に入った。

 僕は、研究室のトビラに、最近行った展覧会や写真展とかのポストカードを飾ることにしている。最近は、アードマンスタジオの展覧会にいったときに買ってきたチキンランのカードが飾ってあったが、今日からは蜷川さんの写真になった。

 お暇なら、見に来て。遠いけど、幕張。


2001/05/14 国会中継、オモシロいぞ

 今日、生まれてはじめて国会中継を見た。生まれてはじめて、というのが僕の政治嫌いを物語っているが、オモシロかったのだ。

 僕の視聴した国会中継は、元慶応大学SFC教授にして、経済政策担当大臣の竹中平蔵先生と麻生太郎さんの経済に関する議論である。竹中先生は、マイケルポーターや竹内宏隆さん(現・一橋大学)らの最近の研究や経済学の基礎を随時引用し、キチンと政策の根拠と用語の定義を行った上で、いかにも学者らしくもあり、しかしそれでいて、一般人にもわかるコトバで政策を語っていた。

 彼は、決して、官僚が書いた下書きをそのまま読んでいるのではない。キチンと自分の考えを前面にだし、自分のコトバで語っておられた。政策科学というのはこういうものなのだなーをと思ってしまうと同時に、竹中先生の聡明さに尊敬の念を抱かずにはいられなかった。

 政治について僕があまりこの場で言うのは本意ではないが、ひとつだけ言えるのだとしたら、国民の政治離れとかいう問題は、政治家のプレゼンテーション下手のせいもたぶんにあると思う。

 事実、ニュースとかで政治家のハナシを聞いていても、「何を根拠にそう言える?」「結局、何がやりたいねん?」とか思ってしまうことが多かった。あらゆる事柄には制約がつきものだから、そういう玉虫色の答弁になってしまうこともさもありなん、てな感じもするけれど、どうにも魅了されないものが多かったように思える。

 竹中先生は、そういう政治家のコトバにオモシロミを全く感じることができなかった僕のような人間にも、政治に対する関心を喚起してくれた。この場を借りて、感謝したい。今後、竹中先生の奮闘を心から応援している。


2001/05/15 またムスメが

 本日、数ヶ月にわたって、僕のアタマを悩ませたムスメ(論文)が、僕の手を放れた。今回のムスメは、なかなか苦労した。なんせかんせ、はじめてのレビュー論文だったから、最後まであまり勝手がわからなかったし、対象がCSCL研究だから、「もうみんな言いたいこといっちゃって」という感じで、まとめるのが地獄そのものだった。

 ムスメのできは、8割満足という感じだけれども、100%をねらうこともないと思う。人間にはどこか短所があってもよいはずだ。

 ムスメよ 石狩川をのぼるシャケさながら
 帰れよ 父のもとに 
 カンバック、サーモン 僕は君を待つ


2001/05/16 DV over IP

 今日、永岡先生のNIME-Stanford科研で、ミーティングがあった。今度のスタンフォードの出張の際の詳細を決めるミーティングだった。

 この科研では、6月にスタンフォード大学とNIMEをギガビットの高速回線でむすび、国際間の協調学習の実験を行う予定である。本日の会議のあとには、その実験で使用するDVTSというブツをみせてもらった。DVTSは、IPベースでDVの映像を転送するフリーのシステムで、FreeBSDで稼働するらしい。

 僕はあんまり「極太線」には個人的な関心はないんだけど、このデモでみた映像の綺麗さには、正直いって驚いた。ホントウにアンタは綺麗すぎる。これみたら、絶対にネットミーティングなんてできません。

 DVTSは、原理的には、IEEE1394からの取り込みデータを転送できるとのことだったので、これを利用したオモシロ実験なんてできないかなーと少し考えた。


2001/05/17 フォント大王

 何を隠そう、僕はフォント大王である。フォントが好きで好きでたまらない。ネットワークにどこかで可愛いフォントが落ちているのを見ると、それをシステムにいれたくなって仕方がなくなって、いまやマイマシンにインストールされているフォントは、100くらいになっちゃった。おかげで起動に時間がかかるようになったけれど、僕はそれをいとわない。コンピュータにいろいろとよけいなものをいれるのは、僕は大嫌いなんだけど、フォントだけは別。

 皆さんにもフォントサイトを紹介するので、是非、ダウンロードしてみてください。

http://www.jade.dti.ne.jp/~minoru-w/index.html
http://www.orange.ne.jp/~den7/index.html
http://clops.vis.ne.jp/
http://www.4yeo.com/
http://mks.jp.org/
http://saru.fontavenue.com/
http://www.pizzadude.dk/

 こういうオシャレフォントでつくったレジュメやレポートって、かっこいいと思うよ。


2001/05/18 JAVAとP2P

 僕がJAVAを少しかじったのは、そうね、M1のころでした。教育学部を卒業して、チットはテクノロジーのことをわからなければと思い、M1の頃は、いろいろな言語を覚えました。

 当時のJAVAは、JDK1.1というヤツで、あまりに非力で、ちょっとこったGUIをつくろうとすると、あまりに面倒くさかった。ウィンドウをひとつだすだけで、鼻血ブー。

 結局、僕はVisual Studio系に逃げてしまって、JAVAのことはすっかり忘れていたら、最近、どうもはやっているみたいですね。それも、サーバサイドスクリプトとして。昨日、本屋にいったら、JSP(Java Server Pages)とかサーブレットの本が、ものすごく増えていました。

 JAVAが最初に出た頃は、もしかしたら、まだそうなのかもしれないんだけど、「Write Once, Run Everywhere」っていうのがキャッチフレーズでした。要するに、プラットフォームに依存しないで、プログラムが書けるってことがアタラシカッタのですよね。でも、クライアントのOSや、ブラウザに依存しないでRunするっていうのは、ものすごく難しく、だからこそ、サーバサイドのプログラミング言語として注目されるようになったのでしょう。

 それにしても、早いなー、ネットワークの世界の流行は。「アンタ、なんぼほど、浮気性やねん」てな感じで、流行がどんどんと変わっていきますよね。まさに、欲望の無限インフレーション。

 欲望のインフレーションといえば、最近、ピアツーピア通信(P2P)というのもはやっていますね。こういうのを使って、どういう風に学習に役立てたらよいのか、ってーのを考えるのが僕の役目なんだけど、まだ全然イメージできません。

 別にTech-Nerdじゃないんだから、別に、こういう流行についていかなくてもいいし、そんなに気にもとめていないんだけど、ちゃんと見極める目を持ちたいとは常日頃から思っています。

 それにしても早いなー。こいつはウカウカしちゃいられない。


2001/05/20 缶詰のそのあとは

 土・日曜はProject Scio Betaの泊まりがけ缶詰ミーティング。本プロジェクトでは、僕がシステム開発の統括を行うことになった。CSCL研究の知見をいかしつつ、それでいて、学習者が快感を覚えてしまうような場を、小回りのきくのネットワーク技術で実現できたらと思う。

 Project Scio Betaでは、専属のプロダクトデザイナー、システム開発会社が実際の開発にかかわってくれることになった。むこう7ヶ月間、会議につぐ会議という、超タイトなスケジュールになるが、頑張ろうと思う。僕にとっては、この開発は、過去5年間のCSCL研究の総決算になるだろうと思っている。

 それにしても、会議のあとというのは、どうしてもボーッとしている。缶詰会議が2日も続いたから、仕方ないのかもしれない。興奮が冷めやらないというのか、何というのか。フル回転になったアタマがそのままクールダウンせずに、まだ回転してるって感じ。原子力発電所的にいうなら、このままではメルトダウンだな。シムシティ的にいうなら、せっかくつくった街が崩壊しちゃうよ。

 それにしても、今、ザウルスをあらためて見たら、来週から地獄のようなスケジュールだな。こりゃ、完全にスケジューリングをミスった。ザウルスにエージェントがついてくれるといいんだけどなー。ユーザが無理なスケジュールをいれそうになったら、「アンタ、あきまへん!」って言ってくれるの。実現したら、売れると思いますが。


2001/05/22 徹夜をしないプログラマー

 先日、ある研究所で働いているヒトとメールをやりとりしていて、オモシロイはなしを聞いた。彼の職場には、スマートかつ大胆なプログラミングをする方がいて、彼の口癖が以下のようなものだという。

 徹夜を前提に開発を行うという現在の業界の思想は間違っている

 その方は、上記のコトバどおり「徹夜を絶対にしないプログラマー」を実践しているのだという。実際、午後7時前には会社をでてしまう、というからスゴイ。「徹夜をしないなんて、ちゃんと働いていないんじゃないの!」と言うなかれ。「徹夜をしない」ということは、スマートにプランをたて、エレガントに問題解決をするということであり、そのために、常に学習し続けているということである。仕事は時間じゃない、要は成果だ。

 なるほど、これは深い、深すぎる。

 僕も仕事上、SEとかプログラマーとよばれるヒトによく逢うが、彼らの多くとはなしていると、「徹夜をすること」をヒトの前で語ることを、楽しんでいるかのように思えてしまうことがある。それほどまでに、プログラマーにとって「徹夜すること」は日常茶飯事であり、アタリマエのことなのであろう。しかし、そうしたエイヤッの仕事は、クオリティが低い。「徹夜するくらいなら、最初からコツコツやってよー」と思わず言いたくなってしまうが、そういうものでもないらしい。

 ひるがえって、研究者はどうか。

 少なくとも僕に関する限り、かつてはよく徹夜をしていた。しかし、僕の原稿で、徹夜で仕上げたもののクオリティなんてものは、オテントさんが上った昼には読めないくらいヒドイことが多い。だから、こと僕にかんする限りは、最近は徹夜はいっさいしない。仕事を持ち帰ったとしても、遅くとも10時には絶対にやめる。

 まーそうはいっても、あまりに忙しいと仕方ないこともあるんだけどね。僕個人の希望としては、「徹夜を絶対にしないプログラマー」の思想に共感するし、僕自身も「徹夜を絶対にしない研究者」をめざしたい。


2001/05/23 男、中原、修行中

 プレゼンテーションするということは、自分の中で内なる他者の声をつくりあげ、それに答えると言うことである

 先日、茨城大学の鈴木先生が、都内民間会社での科研ミーティングのときに言っていたコトバである。鈴木先生いわく、こういう根本的なコトに目をむけず、プレゼンテーションの技術だけを伝える書籍がなんと多いことか。ビジネスの現場では、いまやプレゼンテーションは必須の技術であるから仕方がないものの、どうも書籍売り場にならぬプレゼンテーションの本というのはオモシロクない。

 このハナシに僕は大いに感銘を受け、非常に盛り上がってしまった。

 昨今、アカデミックな世界を生きるヒトにもビジネス感覚が必要だといわれているらしい。プロポーザルを書き、プレゼンテーションをして、競争的資金を手に入れ、成果を公表する。それは研究のオーディエンスをアタマの中に想定して、その声に答えていくということであろう。わかっちゃいるけど、なかなか難しい。

 男、中原、修行中!


2001/05/24 ビジネスホテルのこと

 最近、とみに出張が多い。出張といえば、宿泊はビジネスホテル。しかし、このビジネスホテルというのが、僕はあんまり得意じゃない。ていうか、眠れないのだ。臆病なのか、神経質なのかはわからないけど、ビジネスホテルで、僕は満足に眠れたタメシがない。

 まず、チェックインをすませ部屋にはいったら、僕にはやることが一つある。壁に目をやり、絵とか額がかかっていないかを見る。運悪く、壁に絵とかを発見したら、おそるおそるその裏側に目をやり、お札がないかを確かめる。つまり、この部屋で自殺したヒトがいないかを確かめるのだ。幸いにも、今まで一度もお札を発見したことはないが、もし発見したら卒倒しているだろう。

 とりあえず、ビジネスホテルのお部屋というのは、無味乾燥な空間で、よからぬことばかり考えてしまう。先日の出張でとまった新大阪の○○ホテルは、部屋にはいるなり異臭がしたし、妙に天井がたかく、天井付近にはヒモをかけれるくらいのパイプがとおっていて、そりゃー怖かった。結局、あんまりにも怖いので、テレビをつけたまま寝て、寝不足になった。

 たとえ明るかろうが、うるさかろうが、若干お札があろうがなかろうが、快眠することのできる神経の図太さというのか、剛胆さが欲しい。


2001/05/25 ハトは学ぶ

 いやー多い、多い。ハトのことを日記で書いたら、翌日、翌々日のメールと電話は、ハトのことばっかり。こんなに反響があるんだったら、ハト評論家、ハトジャーナリストとして、生きることができるのではないかしら。オマンマ食えるのではないかしら。

 てなわけで、今回も味をしめてハトの話題です。ていうか、うちのハトは学習をしてしまって、賢くなりすぎているというハナシね。

 最初の頃、僕はハトがベランダにくると、窓にケリ入れて、追っ払っていましたが、こないだ書いたとおり、「もう戦うことに疲れちゃって」、それ以来、ハトとの共生をめざしていました。

 共生

 そうはいうものの、こりゃ建前で、やっぱりたまには窓にケリ入れて、追っ払って居るんだけど、これがね、最近、窓にケリを入れても追っ払えなくなってしまったのです。つまり、逃げていかない。僕が窓にケリは入れても、絶対にベランダにでていかないことを知ってしまった、学習してしまったのです。

 ベランダはすでにハトの糞が地層になって、NHK教育の理科番組でロケやれそうなくらいになっているから、僕はベランダにはでれません。だから、窓へのケリは威嚇でしかないわけです。それをハトは知っているのです。今じゃ、窓にケリ入れても、涼しい顔して、ウゴウゴ、クルックーといっている。

 お父さん、なんか窓のあたりで音が聞こえるわ、クルックー
 母さん、あいつに何ができる、ほっとおけ、ウゴウゴ

 なんていう、ハト夫婦の会話を想像してしまいます。もう完敗、僕はハトに負けました。

 そんなアルジの失望をよそうに、今日もハトたちは、僕のベランダをホテルかなんかと間違って、産卵しているわけで、そのうち、商売でもはじめたろうかなーとも思っている次第です。

 ご休憩 3000円だぞ、このタコ!


2001/05/26 あっという間

 最近あっという間に時間がたちます。朝起きて、研究室にきて、ドタバタしている間にいつのまにかコンピュータのデスクトップに張ってある付箋紙がなくなって、夜になって、また静かな朝がきて。

 あるいは、電車にのって、地下鉄に乗り継いで、都内を歩き、歩き、歩き。会議にでて、夜になって、また静かな朝がきて。

 ホントウに一日があっという間なのです。子どもの頃、あんなに長く感じられた同じ一日が懐かしくなっちゃったりもしますが、感傷に浸っている時間さえありません。

 どこか地に足がつかない生活をしているな、という恐れがあります。でもその一方で、いまだ見ぬ新しいツールや教育や学習に心惹かれる自分がいたりします。そんな矛盾を抱えつつ、今日もまた一日が過ぎようとしています。


2001/05/28 ドメインとった!

 このサイトは、現在、「http://jun.on.arena.ne.jp」というドメイン名で運用されています。が、なんと、先日、いろいろ思うところあって、このサイトのために新しい以下のドメイン名をとりました。

 http://www.nakahara-lab.net

 まだ運用をはじめませんが、1〜2ヶ月たったら、このドメイン名でのサイト運営を開始します。また、メールアドレスもその際に、jun@nakahara-lab.netにかわるでしょう。変わる際には、アナウンスを行いますので、今後ともよろしくお願いします。


2001/05/30 体調崩した

 ちょっと前から、少しだけ体調を崩しています。「ポンポン痛い子ちゃん」になっているのです。僕はあまりカラダが強くないのですが、この症状は過度の疲労におそわれたときの典型的なものです。

 もう数日たったら、スタンフォード・ヴァンクーバ出張です。アメリカまで飛行機で約12時間かかるっていうのに、ピーピーはしゃれになりません。スッチーに笑われるぞ。

 ということで、少し休むことにしました。みなさん、ごきげんよう!



 NAKAHARA,Jun
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